4 / 5
私と小さなお客さん
しおりを挟む
「にゃ~」
コンビニの前を掃除していると、可愛らしい猫が私を見上げていた。
「こんにちは、ねこさん。」
猫を撫でようと私が手を出すと、猫は素っ気なく ぷいっ として駆け出してしまった。
少しくらい撫でさせてくれても良いのに……。
私はしょんぼりとしながらレジに戻り、手を洗う。
先程の様子を見ていたのか、先輩が声を掛けてきた。
「佐倉ちゃん!猫ちゃんに逃げられちゃったね!」
「そうなんですよ~。最近よく見掛けるので、撫でたかったんですが……逃げられてしまいました……。」
「どんまいっ!小さいお客さんには懐いてたんだけどな~。あ、ほらあそこ。」
先輩が指で示す先には小学生位の子供達があの猫を取り囲んで餌をあげていた。
「私も餌で……。」
「佐倉ちゃん~……。その前に仕事!」
「あ!は、はい!!」
笑いながらだけど、先輩に叱られてしまった。
もっと、しっかりしないと!
人が多くなる時間帯になり、店長がヘルプで入ってくれていた。
「佐倉さんも随分レジ打ちに慣れてきたみたいだね。」
「あ、ありがとうございます!」
自分なりに頑張っていた事を褒められ、つい嬉しくなってしまう。
ウィーーン
自動ドアが開き、お客さんかと思ったが誰もいなかった。
「にゃー」
「あれ?ねこさん?」
私はそのまま猫を視線で追い掛けると、猫は棚にあったキャットフードを口に咥える。
「え!?ねこさん!?お、お会計!!」
私の大きな声に驚いた猫は、キャットフードを咥えたまま、外に出てしまった。
「佐倉ちゃん、猫ちゃんはお金持って無いと思うよ?」
笑いながら言う先輩の言葉に私は自分の発言が恥ずかしくなり、顔に熱がこもる。
「んー、最近ここの駐車場で猫に餌をあげてる人がいるからかな?」
店長は悩ましげに思案する。
そんな様子に先輩は言葉を発した。
「なら、次に来た時はちゃんと注意しましょう!」
そうですね!
ちゃんと猫さんに注意しないといけませんね!
あの愛くるしい姿を前にちゃんと注意出来るか不安に思いながらも、私は先輩の言葉に頷いた。
────
後日。
再びやってきた可愛らしいお客さん。
私はそのお客さんの前に膝を折り、視線を低くする。
「ねこさーん。勝手に商品を持って帰っちゃ駄目なんですよー?」
「にゃー」
「勝手に持って帰ったら店長が困っちゃいます。もう、やらないで貰えますか?」
優しく私は語りかけるが、猫は私を一瞥した後、再びキャットフードを咥える。
「猫ちゃん!今度は私が相手だよ!!」
先輩は猫の前に立ちはだかり、猫を捕らえようとするが、ひらりひらりと躱され、そのまま外へと飛び出して行った。
「私が相手でも駄目かっ!!」
「先輩……どうしましょう?」
「店長に相談してみよう!今、バックヤードにいるから、聞いてみるよ!!」
そう言って先輩はバックヤードへ行き、私はレジに向かった。
しばらくすると、先輩がレジに来て、私に一枚の紙を渡してきた。
……??
なんだろう?
「佐倉ちゃんって絵は得意?」
「えっと……趣味程度です。」
「私が描いたら店長にダメ出しされちゃってさ!」
「──っ!?」
もう一枚出された紙に、おそらく先輩が描いたであろう絵があった。
その絵は、猫と言って良いのか……。
ゾンビにも見える、ホラーテイストの絵に私は驚きを隠せなかった。
そんな私の様子を先輩はにこにこと笑いながら見て、白紙の紙を私に渡す。
「だから、佐倉ちゃんが描いてくれないかな!」
「え、あ、はい。」
言われるがまま、私は紙を受け取り、猫の絵を描いた。
「おー!可愛らしい猫ちゃんだね!」
本物とは似ても似つかない、猫のイラストを見て先輩が言葉を放つと、その紙を持ってバックヤードに行ってしまった。
なんで急に猫さんの絵を……?
不思議に思いながらも、私は商品を持ってきたお客さんのレジ打ちをする。
お客さんがいなくなると、店長がバックヤードから出て、自動ドアのガラスに紙を張り付けていた。
「店長?何をしているんですか?」
私は気になり、店長の元へ寄ると店長は柔らかな笑顔で答えてくれる。
「猫君の事をね。そっちに回って見ても良いよ。」
そう言われたので、自動ドアをくぐり紙を見ると私が描いたイラストと店長が書いた文字がそこにあった。
──────
猫君に餌を与えない様にお願い致します。
猫君がキャットフードを万引きしています。
当店では、猫君に注意を致しましたが、聞き入れて貰えませんでした…。
皆様のご協力を、宜しくお願い致します。
──────
自分のイラストが沢山の人に見られると思うと恥ずかしくなるが、これで猫が来なくなってしまうかもしれないと、思うと少し寂しい気持ちにもなってしまった。
レジに戻ると先輩がにこにこと私を見ていた。
「佐倉ちゃんも猫ちゃんに餌をあげちゃ、駄目だよ?」
「わ、分かってますよっ!!」
少しだけなら、と顔に出てしまっていたのだろうか。
見抜かれていた事に私は少し恥ずかしくなってしまった。
コンビニの前を掃除していると、可愛らしい猫が私を見上げていた。
「こんにちは、ねこさん。」
猫を撫でようと私が手を出すと、猫は素っ気なく ぷいっ として駆け出してしまった。
少しくらい撫でさせてくれても良いのに……。
私はしょんぼりとしながらレジに戻り、手を洗う。
先程の様子を見ていたのか、先輩が声を掛けてきた。
「佐倉ちゃん!猫ちゃんに逃げられちゃったね!」
「そうなんですよ~。最近よく見掛けるので、撫でたかったんですが……逃げられてしまいました……。」
「どんまいっ!小さいお客さんには懐いてたんだけどな~。あ、ほらあそこ。」
先輩が指で示す先には小学生位の子供達があの猫を取り囲んで餌をあげていた。
「私も餌で……。」
「佐倉ちゃん~……。その前に仕事!」
「あ!は、はい!!」
笑いながらだけど、先輩に叱られてしまった。
もっと、しっかりしないと!
人が多くなる時間帯になり、店長がヘルプで入ってくれていた。
「佐倉さんも随分レジ打ちに慣れてきたみたいだね。」
「あ、ありがとうございます!」
自分なりに頑張っていた事を褒められ、つい嬉しくなってしまう。
ウィーーン
自動ドアが開き、お客さんかと思ったが誰もいなかった。
「にゃー」
「あれ?ねこさん?」
私はそのまま猫を視線で追い掛けると、猫は棚にあったキャットフードを口に咥える。
「え!?ねこさん!?お、お会計!!」
私の大きな声に驚いた猫は、キャットフードを咥えたまま、外に出てしまった。
「佐倉ちゃん、猫ちゃんはお金持って無いと思うよ?」
笑いながら言う先輩の言葉に私は自分の発言が恥ずかしくなり、顔に熱がこもる。
「んー、最近ここの駐車場で猫に餌をあげてる人がいるからかな?」
店長は悩ましげに思案する。
そんな様子に先輩は言葉を発した。
「なら、次に来た時はちゃんと注意しましょう!」
そうですね!
ちゃんと猫さんに注意しないといけませんね!
あの愛くるしい姿を前にちゃんと注意出来るか不安に思いながらも、私は先輩の言葉に頷いた。
────
後日。
再びやってきた可愛らしいお客さん。
私はそのお客さんの前に膝を折り、視線を低くする。
「ねこさーん。勝手に商品を持って帰っちゃ駄目なんですよー?」
「にゃー」
「勝手に持って帰ったら店長が困っちゃいます。もう、やらないで貰えますか?」
優しく私は語りかけるが、猫は私を一瞥した後、再びキャットフードを咥える。
「猫ちゃん!今度は私が相手だよ!!」
先輩は猫の前に立ちはだかり、猫を捕らえようとするが、ひらりひらりと躱され、そのまま外へと飛び出して行った。
「私が相手でも駄目かっ!!」
「先輩……どうしましょう?」
「店長に相談してみよう!今、バックヤードにいるから、聞いてみるよ!!」
そう言って先輩はバックヤードへ行き、私はレジに向かった。
しばらくすると、先輩がレジに来て、私に一枚の紙を渡してきた。
……??
なんだろう?
「佐倉ちゃんって絵は得意?」
「えっと……趣味程度です。」
「私が描いたら店長にダメ出しされちゃってさ!」
「──っ!?」
もう一枚出された紙に、おそらく先輩が描いたであろう絵があった。
その絵は、猫と言って良いのか……。
ゾンビにも見える、ホラーテイストの絵に私は驚きを隠せなかった。
そんな私の様子を先輩はにこにこと笑いながら見て、白紙の紙を私に渡す。
「だから、佐倉ちゃんが描いてくれないかな!」
「え、あ、はい。」
言われるがまま、私は紙を受け取り、猫の絵を描いた。
「おー!可愛らしい猫ちゃんだね!」
本物とは似ても似つかない、猫のイラストを見て先輩が言葉を放つと、その紙を持ってバックヤードに行ってしまった。
なんで急に猫さんの絵を……?
不思議に思いながらも、私は商品を持ってきたお客さんのレジ打ちをする。
お客さんがいなくなると、店長がバックヤードから出て、自動ドアのガラスに紙を張り付けていた。
「店長?何をしているんですか?」
私は気になり、店長の元へ寄ると店長は柔らかな笑顔で答えてくれる。
「猫君の事をね。そっちに回って見ても良いよ。」
そう言われたので、自動ドアをくぐり紙を見ると私が描いたイラストと店長が書いた文字がそこにあった。
──────
猫君に餌を与えない様にお願い致します。
猫君がキャットフードを万引きしています。
当店では、猫君に注意を致しましたが、聞き入れて貰えませんでした…。
皆様のご協力を、宜しくお願い致します。
──────
自分のイラストが沢山の人に見られると思うと恥ずかしくなるが、これで猫が来なくなってしまうかもしれないと、思うと少し寂しい気持ちにもなってしまった。
レジに戻ると先輩がにこにこと私を見ていた。
「佐倉ちゃんも猫ちゃんに餌をあげちゃ、駄目だよ?」
「わ、分かってますよっ!!」
少しだけなら、と顔に出てしまっていたのだろうか。
見抜かれていた事に私は少し恥ずかしくなってしまった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

おれは農家の跡取りだ! 〜一度は捨てた夢だけど、新しい仲間とつかんでみせる〜
藍条森也
青春
藤岡耕一はしがない稲作農家の息子。代々伝えられてきた田んぼを継ぐつもりの耕一だったが、日本農業全体の衰退を理由に親に反対される。農業を継ぐことを諦めた耕一は『勝ち組人生』を送るべく、県下きっての進学校、若竹学園に入学。しかし、そこで校内ナンバー1珍獣の異名をもつSEED部部長・森崎陽芽と出会ったことで人生は一変する。
森崎陽芽は『世界中の貧しい人々に冨と希望を与える』ため、SEEDシステム――食料・エネルギー・イベント同時作を考案していた。農地に太陽電池を設置することで食料とエネルギーを同時に生産し、収入を増加させる。太陽電池のコストの高さを解消するために定期的にイベントを開催、入場料で設置代を賄うことで安価に提供できるようにするというシステムだった。その実証試験のために稲作農家である耕一の協力を求めたのだ。
必要な設備を購入するだけの資金がないことを理由に最初は断った耕一だが、SEEDシステムの発案者である雪森弥生の説得を受け、親に相談。親の答えはまさかの『やってみろ』。
その言葉に実家の危機――このまま何もせずにいれば破産するしかない――を知った耕一は起死回生のゴールを決めるべく、SEEDシステムの実証に邁進することになる。目指すはSEEDシステムを活用した夏祭り。実際に稼いでみせることでSEEDシステムの有用性を実証するのだ!
真性オタク男の金子雄二をイベント担当として新部員に迎えたところ、『男は邪魔だ!』との理由で耕一はメイドさんとして接客係を担当する羽目に。実家の危機を救うべく決死の覚悟で挑む耕一だが、そうたやすく男の娘になれるはずもなく悪戦苦闘。劇団の娘鈴沢鈴果を講師役として迎えることでどうにか様になっていく。
人手不足から夏祭りの準備は難航し、開催も危ぶまれる。そのとき、耕一たちの必死の姿に心を動かされた地元の仲間や同級生たちが駆けつける。みんなの協力の下、夏祭りは無事、開催される。祭りは大盛況のうちに終り、耕一は晴れて田んぼの跡継ぎとして認められる。
――SEEDシステムがおれの人生を救ってくれた。
そのことを実感する耕一。だったら、
――おれと同じように希望を失っている世界中の人たちだって救えるはずだ!
その思いを胸に耕一は『世界を救う』夢を見るのだった。
※『ノベリズム』から移転(旧題·SEED部が世界を救う!(by 森崎陽芽) 馬鹿なことをと思っていたけどやれる気になってきた(by 藤岡耕一))。
毎日更新。7月中に完結。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
シン・おてんばプロレスの女神たち ~衝撃のO1クライマックス開幕~
ちひろ
青春
おてんばプロレスにゆかりのOGらが大集結。謎の覆面レスラーも加わって、宇宙で一番強い女を決めるべく、天下分け目の一戦が始まった。青春派プロレスノベル『おてんばプロレスの女神たち』の決定版。

【完結】君への祈りが届くとき
remo
青春
私は秘密を抱えている。
深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。
彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。
ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。
あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。
彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。


愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる