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私とタイムスリップ!?
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コンビニのラッシュ時間を終えた私は疲れていた。
「先輩……お客さんって一気にこんなに来る事ってあるんですね……。」
先輩は慣れている様子で、ラッシュ時には時間短縮の為に受け取った小銭一ヶ所にまとめ、お客さんが引いた今の時間に小銭をレジに分けて入れていた。
「そうだねー!佐倉ちゃんは、まだ体験した事なかったの?」
「はい……。先輩みたいに早く出来ないです。」
私が一人の人を会計する時間に、先輩は二人から三人のお客さんを会計していた。
入り口近くのレジにいる先輩は、レジに並ばずに会計をしようとして来る新聞を持ったおじ様も同時に会計を済ませていた時は「すごい」の一言しか出なかった。
「でも!レジも早くなってきてるし、大丈夫だよ!」
そう言って私に笑顔を向けてくれる先輩に、私は「優しいな」と思うと同時に、もっと頑張らなきゃな、と思った。
お客さんが誰もいなくなり、レジの周りを掃除していると慌てた様子で中学生位の男の子が自動ドアをくぐる。
「ねえ!今は何年何月何日!?ここはどこだか分かる!?」
男の子は顔を真っ赤にしながら先輩に声を掛けた。
え!?
なになに!?
まさか!
私が読んでいる漫画のワンシーンみたいな事が目の前で起こっていた。
何が起こったのか分からずに、私は先輩を見ると、先輩は悲しそうな顔をした。
「あなたまで来てしまったのですね……。私の事が分かりませんか?」
「え?」
先輩の言葉に男の子はポカンと口を開けていた。
その様子を見ながらも先輩は言葉を続ける。
「記憶を無くされたのですか?あなたは私の弟なのですよ。」
あわわわ!!
あの漫画、先輩も読んでるんですか!?
私はつい、その場に入りたくなり口を挟む。
「先輩がまさか!私が探していた人だったなんてっ!!」
「私は気付いていましたよ。私の侍女なのですから。」
「あ、あの……?」
置いてきぼりを食らった男の子は訳が分からないと言った様子で声を掛けてきた。
その声に我に返った私は恥ずかしくなり、顔がすごく熱くなってくるのが分かった。
先輩は何とも思っていない様子で普段通りの口調に戻る。
「これはね!私が読んでる漫画のワンシーンなんだよ!ね!佐倉ちゃん!!」
「え!?あ、はい!そうです!!凄く面白いので良かったら読んで見てください!!」
先輩は白紙の紙に漫画のタイトルを書くと男の子に渡した。
「読んだらまた話そうね!!」
「……え、あ、はい…………?」
曖昧な返事をした男の子は首を傾げながら店を出ていった。
「あの漫画、佐倉ちゃんも読んでたんだねー!」
「はい!タイムスリップして逃げ出したお姫様を探すシーンですよね!」
「ま、場所はコンビニじゃ無いんだけどね!」
「そうですねっ!それに、単行本ではお姫様の影武者を執事が女装して乗り切る場面で終わっているので、続きがすごく気になります……。」
「ちょっとぉ!?私はまだそこまで読んでないよ!?」
「えぇ!?すいません!!」
あぁ……。
ネタバレをしてしまうなんてっ!!
私のバカっ!!
その後も、私と先輩はその漫画の話に花を咲かせた。
─────
数日後。
その男の子が飲み物を片手に先輩のレジの前までやってくる。
「あの漫画、友達が持ってたから読んだんだけど、すごく面白かった!」
「でしょー?佐倉ちゃんも読んでるんだって!ね?」
「はい!凄くコミカルな話で面白いですよね!」
私の言葉に男の子は頷くと口を開いた。
「最初は、どうなんだろー?って思ってたけど、読んで行くとハマっちゃった。」
可愛らしく笑う男の子に私もつい笑顔が溢れる。
意図せず漫画の布教が出来て少し嬉しい。
「読んでみて、どこが面白かった?」
先輩が飲み物をレジに通しながら男の子に聞く。
男の子は小銭を探しながら、先輩の問いに答えた。
「どこも面白いんだけど、お姫様を連れ戻しに来たのが本当は弟じゃなくて弟に化けた「何か」だって所で終わっちゃったから、続きが気になるかな。」
「……もしかして、雑誌の方を読んだんですか?」
私が聞くと男の子は頷いた。
私は単行本派なのに……。
ネタバレされる気分ってこうなのかな。
あの時、先輩……本当にごめんなさい。
「ネタバレですよ~……。」
私は精一杯にそう言い項垂れた。
「先輩……お客さんって一気にこんなに来る事ってあるんですね……。」
先輩は慣れている様子で、ラッシュ時には時間短縮の為に受け取った小銭一ヶ所にまとめ、お客さんが引いた今の時間に小銭をレジに分けて入れていた。
「そうだねー!佐倉ちゃんは、まだ体験した事なかったの?」
「はい……。先輩みたいに早く出来ないです。」
私が一人の人を会計する時間に、先輩は二人から三人のお客さんを会計していた。
入り口近くのレジにいる先輩は、レジに並ばずに会計をしようとして来る新聞を持ったおじ様も同時に会計を済ませていた時は「すごい」の一言しか出なかった。
「でも!レジも早くなってきてるし、大丈夫だよ!」
そう言って私に笑顔を向けてくれる先輩に、私は「優しいな」と思うと同時に、もっと頑張らなきゃな、と思った。
お客さんが誰もいなくなり、レジの周りを掃除していると慌てた様子で中学生位の男の子が自動ドアをくぐる。
「ねえ!今は何年何月何日!?ここはどこだか分かる!?」
男の子は顔を真っ赤にしながら先輩に声を掛けた。
え!?
なになに!?
まさか!
私が読んでいる漫画のワンシーンみたいな事が目の前で起こっていた。
何が起こったのか分からずに、私は先輩を見ると、先輩は悲しそうな顔をした。
「あなたまで来てしまったのですね……。私の事が分かりませんか?」
「え?」
先輩の言葉に男の子はポカンと口を開けていた。
その様子を見ながらも先輩は言葉を続ける。
「記憶を無くされたのですか?あなたは私の弟なのですよ。」
あわわわ!!
あの漫画、先輩も読んでるんですか!?
私はつい、その場に入りたくなり口を挟む。
「先輩がまさか!私が探していた人だったなんてっ!!」
「私は気付いていましたよ。私の侍女なのですから。」
「あ、あの……?」
置いてきぼりを食らった男の子は訳が分からないと言った様子で声を掛けてきた。
その声に我に返った私は恥ずかしくなり、顔がすごく熱くなってくるのが分かった。
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「これはね!私が読んでる漫画のワンシーンなんだよ!ね!佐倉ちゃん!!」
「え!?あ、はい!そうです!!凄く面白いので良かったら読んで見てください!!」
先輩は白紙の紙に漫画のタイトルを書くと男の子に渡した。
「読んだらまた話そうね!!」
「……え、あ、はい…………?」
曖昧な返事をした男の子は首を傾げながら店を出ていった。
「あの漫画、佐倉ちゃんも読んでたんだねー!」
「はい!タイムスリップして逃げ出したお姫様を探すシーンですよね!」
「ま、場所はコンビニじゃ無いんだけどね!」
「そうですねっ!それに、単行本ではお姫様の影武者を執事が女装して乗り切る場面で終わっているので、続きがすごく気になります……。」
「ちょっとぉ!?私はまだそこまで読んでないよ!?」
「えぇ!?すいません!!」
あぁ……。
ネタバレをしてしまうなんてっ!!
私のバカっ!!
その後も、私と先輩はその漫画の話に花を咲かせた。
─────
数日後。
その男の子が飲み物を片手に先輩のレジの前までやってくる。
「あの漫画、友達が持ってたから読んだんだけど、すごく面白かった!」
「でしょー?佐倉ちゃんも読んでるんだって!ね?」
「はい!凄くコミカルな話で面白いですよね!」
私の言葉に男の子は頷くと口を開いた。
「最初は、どうなんだろー?って思ってたけど、読んで行くとハマっちゃった。」
可愛らしく笑う男の子に私もつい笑顔が溢れる。
意図せず漫画の布教が出来て少し嬉しい。
「読んでみて、どこが面白かった?」
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「どこも面白いんだけど、お姫様を連れ戻しに来たのが本当は弟じゃなくて弟に化けた「何か」だって所で終わっちゃったから、続きが気になるかな。」
「……もしかして、雑誌の方を読んだんですか?」
私が聞くと男の子は頷いた。
私は単行本派なのに……。
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私は精一杯にそう言い項垂れた。
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