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最終章 いかないで
第六話 実はね
しおりを挟む「冠座、俺は昔、お前の主人だったんだ――柘榴の前の、プラネタリウムの主人」
「……そ、うなの?」
「お前は気付いてると思ったけど、違ったんだな。……――俺は、昔奴隷で、プラネタリウムを拾って、奴隷生活から抜け出せた。……お前を作ったのは、俺で、俺はお前によく相談していたんだ。だから、お前たちは俺を、本当の意味で知ってるんだと思う」
「……――そうか、だから道理で皆、陽炎のこと大好きだったんだ」
「うん。俺さ、鴉座が好きでさ。鴉座に属性がある状態で、思われるのは、卑怯な気がしたから、柘榴に預かって貰っていた――今思うと、あの頃から甘えていたんだよな。柘榴に嫌なこと全て押しつけていたんだな……なぁ、冠座。元相談役として聞いてくれないか、一番に」
「やだよ」
冠座は、微笑んで、陽炎に抱きついて、逞しい胸板に顔を埋めた。
涙を隠すように、許せないという思いを消すように。
「今も相談役として、なら聞いてあげる」
「うん、じゃあ聞いてくれないか――……俺は……柘榴を救えるかな」
「陽炎以外誰が救えるかな。いないと思うよ、陽炎にしかできないと思うよ」
「そうか。じゃあ、やっぱり俺は決めたよ。――柘榴と仲直りしてくるよ。その時に、星座は鴉座以外、皆柘榴に返そうと思う。俺は一人じゃないし、これから友達が必要になってくるのは柘榴のほうだから。柘榴が寂しがっていたら、お前たちが俺の代わりに柘榴のそばで励ましてくれないか?」
「……皆、解散?」
「うん、兄さんとも、俺とも、お前たちは離れなければ。一緒にいたいけど、それじゃ駄目なんだ。柘榴と俺は、もう一緒にいてはいけないから……一緒にいると、また今回のようなことが起きたとき、今度こそ仲直りできないから」
陽炎が冠座を抱き寄せると、冠座は、陽炎の言葉を頭で反芻させてから、顔をあげて、陽炎の頬にそっとキスした。
「ねぇ、陽炎が主人だったとき、あたし、愛属性だった?」
「忠実だったよ」
「――そっか。何だか寂しいな。あたし、陽炎のこと大好きだよ。……恋愛としても、多分好きだったと思う。だから、寂しいけど応援するよ。陽炎の言ったこと、あたし、守るよ」
「……流石にお前が、そういう感情持っていたとは知らなかったな」
「だって、敵わないの判るから、別の人に恋しようとしていたもの。今好きな人はね――」
冠座と話しながら、陽炎は二つの気配が消えたのを感じ取り、心の中で別れを告げる。
(さよなら、兄さん、蓮見――。そして、牡羊座も。またいつか、会えるといいな。兄さんたち家族には柘榴を止めて欲しいんだ、俺がいつかいなくなった時に。蒼刻一のようになったときに。だから、主人を変えて貰うね、……柘榴にしてもらって、寿命を延ばすね。貴方達の幸せを誰よりも祈ってます、さようなら――)
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