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第八部 大嫌い
第二十話 試練
しおりを挟む陽炎は、新しい剣技を覚えた。
妖術と思われる獅子座の咆吼ですら、跳ね返す剣技を。剣の斬り方により、大分種類があって、跳ね返すか、受け流すか等選べるようだ。
どんな使い方をするかは陽炎に任せると言った後、雹はにこりと微笑み、透明のガラス玉に入ったジャングル。その下にふわふわと浮いているキラキラとした物体。それはスノードーム。スノードームを取り出して、陽炎と獅子座を手招いた。
「この中に動物や、恐竜、他にも生き物がいます。妖術道具です、判りますね?」
「――うん、じゃなくて、……はい」
陽炎が口調を直して真面目にスノードームを見つめていると、雹は陽炎を撫でて、スノードームを逆さまにして、三回振って、置き直した。
「全ての生き物を、絶滅させることができたら、この箱庭から出させてあげましょう。箱ではないから、ガラス庭かな?」
「――絶滅……」
瞳で、陽炎は、その理由を問うた。雹は真正直な瞳とぶつかると、伏せ目を少し細くして、くす、と笑った。
鴉座は黙って見てることができなかった為に、床で猿ぐつわされ、エビフライの衣がついてるような縄の縛り方を全身にされて、足と肩から上だけが自由だ。
鴉座は、何か唸ってるが、陽炎は恋人だというのに無視した。
「貴殿は、無慈悲という言葉を覚えてきなさい。強くあるということは、慈悲などそこに存在してはいけません。昨日生かした相手が、翌日己を殺すということは、いつも隣にあるんです。……少なくとも、俺の弟子なら、冷酷さを覚えて貰わないと。優しい人は弟子に取らないと、周囲に言ってるんですから。今の貴殿のような状態で街を出歩かれても、俺が困るんです。あ、それと死んでも困るんで、事前にこの弟子二号からお金貰っておきますから。それじゃあ、いってらっしゃい。二人とも。その妖仔をつけたのは、俺なりの――餞別ですよ」
雹がにこりと微笑めば、いつの間にか世界はジャングルになっていて、そこには野生動物と、獅子座だけで、雹や鴉座はいなかった。
あの慣れ親しんだ道場も消えていた――。
陽炎は、事前に「別人が呪われてる」という両刃剣を持たされていたので、武器は困ってなかった。
困っては居ないが、全滅となると、武器の手入れも怠ると死に繋がるのだな、と緊張してきた。
獅子座が、はい、と鉄扇を渡してきた。
「これがなければ、困るんだべ?」
「うん、有難う。よっしゃ、頑張るぞ!」
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