【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
339 / 358
第八部 大嫌い

第二十話 試練

しおりを挟む

 陽炎は、新しい剣技を覚えた。
 妖術と思われる獅子座の咆吼ですら、跳ね返す剣技を。剣の斬り方により、大分種類があって、跳ね返すか、受け流すか等選べるようだ。
 どんな使い方をするかは陽炎に任せると言った後、雹はにこりと微笑み、透明のガラス玉に入ったジャングル。その下にふわふわと浮いているキラキラとした物体。それはスノードーム。スノードームを取り出して、陽炎と獅子座を手招いた。

「この中に動物や、恐竜、他にも生き物がいます。妖術道具です、判りますね?」
「――うん、じゃなくて、……はい」

 陽炎が口調を直して真面目にスノードームを見つめていると、雹は陽炎を撫でて、スノードームを逆さまにして、三回振って、置き直した。

「全ての生き物を、絶滅させることができたら、この箱庭から出させてあげましょう。箱ではないから、ガラス庭かな?」
「――絶滅……」

 瞳で、陽炎は、その理由を問うた。雹は真正直な瞳とぶつかると、伏せ目を少し細くして、くす、と笑った。
 鴉座は黙って見てることができなかった為に、床で猿ぐつわされ、エビフライの衣がついてるような縄の縛り方を全身にされて、足と肩から上だけが自由だ。
 鴉座は、何か唸ってるが、陽炎は恋人だというのに無視した。

「貴殿は、無慈悲という言葉を覚えてきなさい。強くあるということは、慈悲などそこに存在してはいけません。昨日生かした相手が、翌日己を殺すということは、いつも隣にあるんです。……少なくとも、俺の弟子なら、冷酷さを覚えて貰わないと。優しい人は弟子に取らないと、周囲に言ってるんですから。今の貴殿のような状態で街を出歩かれても、俺が困るんです。あ、それと死んでも困るんで、事前にこの弟子二号からお金貰っておきますから。それじゃあ、いってらっしゃい。二人とも。その妖仔をつけたのは、俺なりの――餞別ですよ」
 
 雹がにこりと微笑めば、いつの間にか世界はジャングルになっていて、そこには野生動物と、獅子座だけで、雹や鴉座はいなかった。
 あの慣れ親しんだ道場も消えていた――。
 
 陽炎は、事前に「別人が呪われてる」という両刃剣を持たされていたので、武器は困ってなかった。
 困っては居ないが、全滅となると、武器の手入れも怠ると死に繋がるのだな、と緊張してきた。
 獅子座が、はい、と鉄扇を渡してきた。

「これがなければ、困るんだべ?」
「うん、有難う。よっしゃ、頑張るぞ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...