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第七部 鬼夢花
第二十話 柘榴の見つけたハッピーエンドの方法
しおりを挟む不敵な笑い声一つで、オニの頭が一つ弾ける。
理不尽な数式の入り方、それがまさに世界最強の名を持つに相応しいことを示している。
白き妖魔を象った人間、蒼刻一だ。
蒼刻一は傷ついた柘榴を見ると、にこりと笑いかけてから、オニ達を鋭い眼光で射抜いた。
あの日から――彼が己を許すと言った日から、柘榴は字環並に特別な存在。
彼ほどの聖者は居ない、彼ほど優しい者は居ない、彼ほど己を惑わす人物は居ない。
大事な存在、とても大事で箱入り息子にしたいくらい、隠しておきたい存在だ。
字環は、オニを全員、一言で地にひれ伏させた。ただ、腕を頭上から下に払うように厳かに下ろすだけで、オニは全員力ずくで地に這い蹲らせられる。
蒼刻一は柘榴の目の前に、とん、と降りてくる、空中から。
柘榴は焦点の合わない目で、それを眺め、力量の差を感じ、ふっと笑った。
「なれないよ。弱いから」
「――なれる。テメェが望むのなら、僕が育てよう、ホーリーゴースト」
「……やだよ。いつまでもあんたに頼るのはプライドが許さない」
「……――頼れよ。どうして頼ってくれないんだ、テメェは。頼ったのは、陽炎がユグラルドに黒雪の手で連れて行かれたあの時だけじゃねぇか、馬鹿野郎」
「――だって、頼れば、あんたは手を赤く染める」
柘榴は、へら、と笑い、金髪についた鮮血にふれ、頭のぬるっとした部分に気付くと、嘆息をつく。
それから蒼刻一の無言の様子に、首を傾げると、ただでさえ怪我をして痛い頭部を殴られた。
「馬鹿が! 今更、人殺しなんざ厭うな!」
「――そうだね、おいら賞金首だったしね」
「僕もお前も人殺しなんだ。赤く染まってるのは一生取れない、だから気にすんじゃねぇよ、偽善者」
「……でも何でかな、もうあんたの手をこれ以上赤くしたくないんだ。これ以上、おいらの代わりで血の花をあげたくない」
「……――柘榴」
蒼刻一は黙り込み、じっと柘榴を見つめていたかと思えば、手をそっと差し伸べる。
「強い、テメェは。誰よりも強い。不老不死に、なりたいのなら、手伝う。……テメェはどんな苦痛が待っているか、誰よりも不老不死の怖さを知っている。だから、強さなんていらない。どうせ、僕が居るんだから――」
「ねぇ、でもさ――蒼刻一。仮に……こういうことが出来たら、どうなる?」
「あ?」
柘榴は、目を閉じ、鈍痛に呼吸を切らせて、全身に力が入らないのを知ると、意識を手放そうとする中、言葉を口に出来たかどうか、自分でも判らなかった。
ただ一つ見つけた、全てハッピーエンドに終える方法を。
(でも、その前に――君の願いを、叶えてあげたい。暗がりに潜む、野良猫さん?)
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