【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
280 / 358
第七部 鬼夢花

第七話 異文化

しおりを挟む

 とても、不思議な目をしている。
 色合い的にも、少し珍しい色だ。何処か頼りたくなる色をしている――それに、少し顔つきも幼いからか、無垢に見えてしまう。そんなことなど、決してないというのに。
 彼に頼ることで、この国に纏わる呪縛のような物が、解き放たれたらいいのに。ふと、翡翠はそう思い、気紛れを起こした。

「……陽炎もよしとしよう。菫が気に入ってる人間だ、どのような人間か興味ある――」
「――はぁ、有難う御座います」

 陽炎が追加されたことに、白雪は苦笑してしまった。
 己の弟は本当に、誰でも彼でも惹きつけるのだなぁ、と半ば感心し、少し妬いた。可愛い弟が好奇の視線に晒されるのは嫌だからだ。
 だがそんな思惑など無視して、翡翠が声をかけてくる。

「今日は飯はどうする――そちは、そちでとりたいか、黒雪」
「ああ、そうですねー。うちの家族だけ殿下とご一緒させて頂きます。家内と蓮見も連れて行きますので」
「――だそうだ、頼むぞ、飯の支度は。別々だ」
「っは、御意に、殿下」

 側の部下が頭をさげ、すすっと器用に頭を下げたまま、後ろへ下がり、立ち上がる。そして、出て行く。
 白雪はそれと、と名前の訂正をしておいて、蓮見と大犬座を手招き、頭を下げてから出て行く。
 もう翡翠が見えなくなった場所で、白雪は、ふぅん、と何か考えて頷いたので、陽炎は興味津々にどうしたの、と尋ねる。

「いや、なんかやっぱり外見老けてないから、年は噂通りなんだなって思って。陽炎君、気に入られてしまったね」
「……何でだろうな」
「君はやっぱりオレの弟だ。そういう星の下に生まれてきたんだよ――うん」
「そんなんじゃ納得出来ないって。ねぇ、かげ君?」

 くすくすと柘榴は笑い、陽炎の首根っこをとっつかまえて、引っ張っていく。

「んじゃ、後は任せたからー。おいらたち、部屋で休んでるわ」
「ああ――大犬の仔はまた後でね。涎垂らしてないから、あれはまだ陥落してないレベルだ。まだまだ君と蓮見は好みになってない。仕草で好みのレベルにさせるから」
「……雪ちゃん、手段を選ばないわね。……それにしても驚いたわ。翡翠ちゃんって、角が四本あったわ! 何処か牙っぽい感じのものもあったし」
「……――そこにも秘密がありそうだよね。こう、オタクとしては是非とも知りたいことだから、頑張ってね、大犬の仔、蓮見、陽炎君」
「何で俺が入ってる」

 陽炎がうんざりとした表情で嘆息をつき、白雪を見やる。
 それから、柘榴と共に歩き出し、部屋に戻っていく。鴉座と陽炎の部屋が別々なのは菫が部屋分けをしたと思われる。陽炎と柘榴が同じ部屋で、鴉座はよりによって蠍座と同じ部屋だ。しかも遠く離れている。

「……――何かこういう建物って天守建築の連立式っていうんだって」
「……見たことない建物だよなぁ。さっき、翡翠と会った場所にも驚いた!」
「ああ、うん、あれね。驚いたよね――あんなに大勢の人が、土下座みたいなことしてるんだもの。なんか嫁に行くとき、此処の人たちはああいう姿勢で、三つ指ついて、“ふつつかものですが、宜しくお願いします”って言うらしいよ」
「なんだそりゃ。わけわからんなー」

 途中の通路で、何者かが話し込んでいた、目を向けるとささっとゴキブリのように素早く散り、どこかへ行ってしまった。
 柘榴は小首傾げて、彼らによくないものを感じて、通り過ぎた通路を振り返り、睨み付けていた。そうしていると、何時の間にやら、着いていたようだ。

「……――あ、部屋についた、此処だよ、俺たちの部屋」
「へぇ、襖かぁ――どうやって鍵かけるんだろう、あ、この棒をつっかえにして……成る程ねー」

 二人は部屋に入ると、城の中に入るときに脱いだ靴を持って上がり込み、ふーっと息をついた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

闇に咲く花~王を愛した少年~

めぐみ
BL
―暗闇に咲き誇る花となり、その美しき毒で若き王を  虜にするのだ-   国を揺るがす恐ろしき陰謀の幕が今、あがろうとしている。 都漢陽の色町には大見世、小見世、様々な遊廓がひしめいている。 その中で中規模どころの見世翠月楼は客筋もよく美女揃いで知られて いるが、実は彼女たちは、どこまでも女にしか見えない男である。  しかし、翠月楼が男娼を置いているというのはあくまでも噂にすぎず、男色趣味のある貴族や豪商が衆道を隠すためには良い隠れ蓑であり恰好の遊び場所となっている。  翠月楼の女将秘蔵っ子翠玉もまた美少女にしか見えない美少年だ。  ある夜、翠月楼の二階の奥まった室で、翠玉は初めて客を迎えた。  翠月を水揚げするために訪れたとばかり思いきや、彼は翠玉に恐ろしい企みを持ちかける-。  はるかな朝鮮王朝時代の韓国を舞台にくりひげられる少年の純愛物語。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

処理中です...