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第七部 鬼夢花
第三話 計られた女装
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納得した辺りで、時間になったので、一同で待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所に行けば、陽炎が女物の着物を着ていて、陽炎は女性陣の格好と男性陣の格好を見るなり、己が騙されたのだと気づき、白雪の胸ぐらを締め上げる。
「……このくそ兄貴……ッ!」
「苦しいよ、陽炎君――」
「苦しくなさそうなんだよ、あんたの場合、何してもっ!! くそ、何で俺だけ、くそっ!」
「ちょっとした悪戯心だよ――」
「あんたのはちょっと、じゃないんだよ!」
陽炎が力なく、へたれ込んだ時、獅子座と大犬座が陽炎の手を取った。
そして二人とも真剣な顔で、見蕩れていて、大まじめに言葉を紡ぐ。
「陽炎、結婚しようだ!」
「駄目よ、あたしと結婚するのよ! こうなったら、百合でいいわ百合で!」
「陽炎は男だ! びーえるだか、えるえるだかわからんが、それでええだ!」
「やだあああ、あたしチャンスないじゃない!! 革命起こしてやるーー!」
「……――えと、二人とも……。鴉座ぁ、助けてくれよ」
「はいはい、愛しの我が君、とてもお似合いですよ――」
お似合いだとか、可愛いだとか言ってるけれど、そういう励ましの類の言葉が欲しいんじゃなくて。
鷲座に助けて、の意で視線を送ったら、ぐっと親指を立てられるし。
蟹座に視線を向けたら、何処かの悪人みたいでちょっと噴き出しそうになって、思わず視線をそらしてしまった。己も人のことを笑える格好ではないというのに。
「俺、完璧変人じゃねーかよ……」
「大丈夫、カツラを用意したから」
「何でそこまで用意周到なのに、俺の男物だけねぇんだよー!」
陽炎が拗ねてるのは最早無視して、白雪は実に楽しそうにカツラを取り出した。
「どれがいい? ボブヘア、夜会巻き、長髪、殿様頭」
「冠座ー、どれがいいんだ?」
「殿様に決まってるわ」
「じゃあ」
「ボブヘア!!」
センスのない陽炎に任せると、何処までも突っ走る。それを忘れかけていた柘榴はすかさず、ボブヘアのカツラを取って、それを被せる。
意外と可愛いが、まぁそこらへんに居ても誤魔化されそうな容姿になったので、一同は安堵した。
「で、迎えの人は?」
「来るよ、もうすぐ――ほら」
「陽炎――!」
陽炎の体がびくっとする、そして視線が鴉座と合うと、鴉座はにこりと微笑み、陽炎を立たせる、きちんと。
そして向かい合わせるのだ――彼を、抱いた男と。
「す、菫――ッ」
「陽炎、良かった、また会えて、嬉しいわ! ははっ、何女装なんてしとるんや? 向こうついたら、服、持ってこさせるさかいに、安心しぃ」
陽炎は、目を見開き、着物の話題に手放しに喜ぶが、白雪からつまんないの、という視線を菫は受ける。
だが此処で鴉座から、駄目ですと返答が返ってきて、陽炎は鴉座を見やり、菫は鴉座を睨み付ける。
「駄目ですよ――義兄が折角似合うと思って選んだ服を取り替えるのですか?」
「う。……――し、白雪のことだから、俺で遊ぼうとッ」
「鴉の妖仔、オレは感激したよ――そうそう、オレは陽炎君を思って選んだんだよ? それを変えちゃうの?」
「でもそのままやと、主君が気に入って男妾にしてまうと思うで?」
「それはそれで好都合」
白雪は笑顔で答えた。陽炎と鴉座は予測通りの言葉に、つっこむ気力もない。
「おおい!! 何やの、それは! あかんやろ、あんた兄貴やったら、守ったりいや! 交渉手段に陽炎使うんは許さへんからな! ん、馬車はこっち――星座が来ると思ってな、馬車たっくさん用意したからな!」
にこにこと菫は笑う――何処か元気そうで、陽炎はほっとするも、鴉座と菫を同じ場で見てるので、何処か落ち着かない。
それはそうだ、浮気相手と恋人が側に今居て、火花を散らせているのだ。
菫がちらりと陽炎を見やれば、鴉座がにこりと微笑んで、陽炎をぐいっと引き寄せて、肩を組む。
今は陽炎が女装してるせいか、そこまで人目を引かない。だから、鴉座はやりたい放題だった。
「んー、まぁええわ、乗ったれ」
菫は不機嫌顔に戻り、陽炎達を馬車に乗せて、己は白雪と同じ馬車に乗る。
何処か東洋めいた建物が連なる中で、馬車があるのは何処かエキゾチックな感じがして、わくわくとした。
だが乗り物に弱いのか、陽炎は顔色をどんどん悪くして、鴉座にもたれ掛かる。
それを眺めていた蟹座はため息をつき、苦笑した。
待ち合わせ場所に行けば、陽炎が女物の着物を着ていて、陽炎は女性陣の格好と男性陣の格好を見るなり、己が騙されたのだと気づき、白雪の胸ぐらを締め上げる。
「……このくそ兄貴……ッ!」
「苦しいよ、陽炎君――」
「苦しくなさそうなんだよ、あんたの場合、何してもっ!! くそ、何で俺だけ、くそっ!」
「ちょっとした悪戯心だよ――」
「あんたのはちょっと、じゃないんだよ!」
陽炎が力なく、へたれ込んだ時、獅子座と大犬座が陽炎の手を取った。
そして二人とも真剣な顔で、見蕩れていて、大まじめに言葉を紡ぐ。
「陽炎、結婚しようだ!」
「駄目よ、あたしと結婚するのよ! こうなったら、百合でいいわ百合で!」
「陽炎は男だ! びーえるだか、えるえるだかわからんが、それでええだ!」
「やだあああ、あたしチャンスないじゃない!! 革命起こしてやるーー!」
「……――えと、二人とも……。鴉座ぁ、助けてくれよ」
「はいはい、愛しの我が君、とてもお似合いですよ――」
お似合いだとか、可愛いだとか言ってるけれど、そういう励ましの類の言葉が欲しいんじゃなくて。
鷲座に助けて、の意で視線を送ったら、ぐっと親指を立てられるし。
蟹座に視線を向けたら、何処かの悪人みたいでちょっと噴き出しそうになって、思わず視線をそらしてしまった。己も人のことを笑える格好ではないというのに。
「俺、完璧変人じゃねーかよ……」
「大丈夫、カツラを用意したから」
「何でそこまで用意周到なのに、俺の男物だけねぇんだよー!」
陽炎が拗ねてるのは最早無視して、白雪は実に楽しそうにカツラを取り出した。
「どれがいい? ボブヘア、夜会巻き、長髪、殿様頭」
「冠座ー、どれがいいんだ?」
「殿様に決まってるわ」
「じゃあ」
「ボブヘア!!」
センスのない陽炎に任せると、何処までも突っ走る。それを忘れかけていた柘榴はすかさず、ボブヘアのカツラを取って、それを被せる。
意外と可愛いが、まぁそこらへんに居ても誤魔化されそうな容姿になったので、一同は安堵した。
「で、迎えの人は?」
「来るよ、もうすぐ――ほら」
「陽炎――!」
陽炎の体がびくっとする、そして視線が鴉座と合うと、鴉座はにこりと微笑み、陽炎を立たせる、きちんと。
そして向かい合わせるのだ――彼を、抱いた男と。
「す、菫――ッ」
「陽炎、良かった、また会えて、嬉しいわ! ははっ、何女装なんてしとるんや? 向こうついたら、服、持ってこさせるさかいに、安心しぃ」
陽炎は、目を見開き、着物の話題に手放しに喜ぶが、白雪からつまんないの、という視線を菫は受ける。
だが此処で鴉座から、駄目ですと返答が返ってきて、陽炎は鴉座を見やり、菫は鴉座を睨み付ける。
「駄目ですよ――義兄が折角似合うと思って選んだ服を取り替えるのですか?」
「う。……――し、白雪のことだから、俺で遊ぼうとッ」
「鴉の妖仔、オレは感激したよ――そうそう、オレは陽炎君を思って選んだんだよ? それを変えちゃうの?」
「でもそのままやと、主君が気に入って男妾にしてまうと思うで?」
「それはそれで好都合」
白雪は笑顔で答えた。陽炎と鴉座は予測通りの言葉に、つっこむ気力もない。
「おおい!! 何やの、それは! あかんやろ、あんた兄貴やったら、守ったりいや! 交渉手段に陽炎使うんは許さへんからな! ん、馬車はこっち――星座が来ると思ってな、馬車たっくさん用意したからな!」
にこにこと菫は笑う――何処か元気そうで、陽炎はほっとするも、鴉座と菫を同じ場で見てるので、何処か落ち着かない。
それはそうだ、浮気相手と恋人が側に今居て、火花を散らせているのだ。
菫がちらりと陽炎を見やれば、鴉座がにこりと微笑んで、陽炎をぐいっと引き寄せて、肩を組む。
今は陽炎が女装してるせいか、そこまで人目を引かない。だから、鴉座はやりたい放題だった。
「んー、まぁええわ、乗ったれ」
菫は不機嫌顔に戻り、陽炎達を馬車に乗せて、己は白雪と同じ馬車に乗る。
何処か東洋めいた建物が連なる中で、馬車があるのは何処かエキゾチックな感じがして、わくわくとした。
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それを眺めていた蟹座はため息をつき、苦笑した。
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