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第六部~梅花悲嘆~
番外編6 悪魔座
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月に出るだけが、幽霊ではない。
闇に出るだけが、悪魔ではない。
朝に例えば、支度を調えて、出かける準備をすれば、ハイキングにだっていける。
いける、筈なのに。
「ちょっと、重い……つぶ、潰れる!!」
がらがらがらっと、音を立てて、支えの扉を失い、悪魔座は倒れた。
背中の幽霊座が重すぎて。というか、でかすぎて。
当然だ、自分は鷲座と大体変わらぬ背丈なのに、鴉座くらいある背丈の幽霊座を背負って移動しようとしたのだから。
それも小脇に他の物を抱えて。
早朝だったからか、まだ誰も起きてはおらず。幸いなのか、不幸なのか、音が響き渡るだけで、誰も来なかった。
悪魔座は、やっとの思いで、幽霊座の下から這い出て、溜息をついた。
「お兄ちゃんは、こんな大きい弟を持った覚えはないんだね!」
こんなときだけ、兄貴面。悪魔座は、幽霊座を睨み付けて、どうしよう、とうなだれる。
幽霊座は眠っているけれど、出かけたい。出かけて、何か衝撃を与えたい。起きてしまえるような衝撃を。
彼の好きそうな玩具があれば買いに行ったし、彼の好きそうな遊びがあったら、眠ってる彼に教えてあげた。
でも、幽霊座は一切反応しなかった。寝言の一言ですら、言わなかった。
もしも、起きてるときに、あげていたら、きっと彼は白目と黒目をおろおろ動かし、喜んでいただろう。己にとっては可愛らしい笑みを浮かべてくれていただろう。
悲しいかな、今は眠っている幽霊座。
すやすやと眠る姿は、冬眠ではなく、夏眠のようで。
悪魔座は溜息をついて、幽霊座を引っ張り、部屋に戻した。
小脇に持っていた荷物達は後から、拾って、部屋の中に置いた。
「――……きっと、アトューダ様が、きみに恋するなって言ってるんだね」
悪魔座は苦笑して、悪魔座をベッドに戻そうとする。
大きな体は中々持ち上がらなくて、元の位置に戻そうとするだけでも一苦労。
漸く元の位置に押しやることができたとき、幽霊座が笑ったような気がして、悪魔座は思わず、秘密の名前を呟いていた。
「カレン――?」
「お……にぃちゃん……」
寝言。
寝言だが、己を求められた。
大声を出すわけにはいかなかったのに、悪魔座は堪らず、幽霊座を揺さぶっていた。
「もうお兄ちゃんでいいよ! お兄ちゃんでいいから、起きて! 起きるんだね、カレン! 起きて、一緒に――……」
揺さぶってると、幽霊座は言葉を無くし、寝言をもう呟かなくなった。
ただ一つの行動で、彼の言葉を邪魔した。後悔の念は強く、悪魔座にのし掛かる。
(何が、お兄ちゃんでいいから、なんだか。――ぼかぁ、きみが起きることを願うが、起きたとき、どう接すればいいんだか、さーっぱりだね)
秘密の兄として接するべきなのか、片恋するものとして接するべきなのか。
ただ。今は――。
この唇が愛おしいから、内緒で、彼にキスをするだけ――。
「いつか、行こうね。ハイキングや、ピクニック」
闇に出るだけが、悪魔ではない。
朝に例えば、支度を調えて、出かける準備をすれば、ハイキングにだっていける。
いける、筈なのに。
「ちょっと、重い……つぶ、潰れる!!」
がらがらがらっと、音を立てて、支えの扉を失い、悪魔座は倒れた。
背中の幽霊座が重すぎて。というか、でかすぎて。
当然だ、自分は鷲座と大体変わらぬ背丈なのに、鴉座くらいある背丈の幽霊座を背負って移動しようとしたのだから。
それも小脇に他の物を抱えて。
早朝だったからか、まだ誰も起きてはおらず。幸いなのか、不幸なのか、音が響き渡るだけで、誰も来なかった。
悪魔座は、やっとの思いで、幽霊座の下から這い出て、溜息をついた。
「お兄ちゃんは、こんな大きい弟を持った覚えはないんだね!」
こんなときだけ、兄貴面。悪魔座は、幽霊座を睨み付けて、どうしよう、とうなだれる。
幽霊座は眠っているけれど、出かけたい。出かけて、何か衝撃を与えたい。起きてしまえるような衝撃を。
彼の好きそうな玩具があれば買いに行ったし、彼の好きそうな遊びがあったら、眠ってる彼に教えてあげた。
でも、幽霊座は一切反応しなかった。寝言の一言ですら、言わなかった。
もしも、起きてるときに、あげていたら、きっと彼は白目と黒目をおろおろ動かし、喜んでいただろう。己にとっては可愛らしい笑みを浮かべてくれていただろう。
悲しいかな、今は眠っている幽霊座。
すやすやと眠る姿は、冬眠ではなく、夏眠のようで。
悪魔座は溜息をついて、幽霊座を引っ張り、部屋に戻した。
小脇に持っていた荷物達は後から、拾って、部屋の中に置いた。
「――……きっと、アトューダ様が、きみに恋するなって言ってるんだね」
悪魔座は苦笑して、悪魔座をベッドに戻そうとする。
大きな体は中々持ち上がらなくて、元の位置に戻そうとするだけでも一苦労。
漸く元の位置に押しやることができたとき、幽霊座が笑ったような気がして、悪魔座は思わず、秘密の名前を呟いていた。
「カレン――?」
「お……にぃちゃん……」
寝言。
寝言だが、己を求められた。
大声を出すわけにはいかなかったのに、悪魔座は堪らず、幽霊座を揺さぶっていた。
「もうお兄ちゃんでいいよ! お兄ちゃんでいいから、起きて! 起きるんだね、カレン! 起きて、一緒に――……」
揺さぶってると、幽霊座は言葉を無くし、寝言をもう呟かなくなった。
ただ一つの行動で、彼の言葉を邪魔した。後悔の念は強く、悪魔座にのし掛かる。
(何が、お兄ちゃんでいいから、なんだか。――ぼかぁ、きみが起きることを願うが、起きたとき、どう接すればいいんだか、さーっぱりだね)
秘密の兄として接するべきなのか、片恋するものとして接するべきなのか。
ただ。今は――。
この唇が愛おしいから、内緒で、彼にキスをするだけ――。
「いつか、行こうね。ハイキングや、ピクニック」
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