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第六部~梅花悲嘆~
第四十一話 パパが大好き
しおりを挟む「そう、この指輪が――……」
「うん、そ、その指輪のお陰……さっきのテレパシーは」
陽炎は兄の制裁によって、怪我を負い、それを痛み虫にするために、他の皆は水瓶座の水を貰う中、陽炎だけは貰わなかった。
陽炎はだから、手当を鴉座にしてもらい、浮気の痕を一同に見られて、恥ずかしい思いをするが、鴉座からは「当然の結果です」と尤もなことを言われてしまう。
たとえ、あの日盛られたままの結果ならば、術にかかっていたとしても、己が悪くないわけではない――本当に拒否しようと思えば、出来たはずなのに、あの日何故かしなかった。
相手が菫だから?
それとも場に流されて?
その理由は分からないが、罪を犯したことには違いない、陽炎は鴉座に何度も謝った。
鴉座は許すとは言わない代わりに、許さないとは言わなかった。
「貴方の心が私の手元に戻ってくだされば、それで宜しい」
少し拗ねた表情で、そう言った。鴉座はそうすることで、ちゃんとけじめをつけさせたつもりなのだ。
優しい鴉座に、陽炎は益々己が情けなくなった――。
「この指輪、とても面白いね」
菫の狙い通り、指輪への興味により、陽炎への制裁は緩和された――というより、妖術が一切効かないのだから、体術でしか仕置きをされてないので、比較的軽い。
他の皆は、大犬座に思わず「血の池地獄――!! 誰かぁああ救急馬車ー!!」と絶叫されるほどの制裁を与えられたというのに。
「……――これが、超能力、か。不思議な作りだ、何も数字も文字も見えない。なのに、確かにそこには力がある。さっきの梅とは違う術だね」
「あれと違う――のか?」
「あれは何と言おうか……――まるっきり、違うものだね。あれは、花を媒体に使ってる、昔、翡翠から教わった術に似てる……――ミシェルのものなんだろうね、梅の術は。いや、あれはもしかしたら……まぁいい。問題は、蓮見のことだ」
「……治す水はまだ出来てませんよ。難しい構造になっているし、まだ蠍座から聞き出せてません」
水瓶座はそういって、ため息をつく。
ネガティブ思考が始まる前に、と白雪が、ふむ、と頷き――。
「ねぇ、聖霊の仔――このことはチャラにしてあげる」
「え、本当?!」
「うん、その代わり、大犬の仔を貸してくれないかな?」
「何に使うの?」
「――外交手段? ちょっとね、子供好きな人なんだ、翡翠って」
「子供好き? じゃあ、蓮見も連れて行くの?」
「君も連れて行くし、聖霊の仔も連れて行くよ――でないと、翡翠は無理だ」
白雪は皆に、ユグラルドを説得するには、翡翠との国交を条件とされた話をする。
それには皆、難しい顔をした――射手座は途中でショートした――。
だが、一言であの大犬座が顔を引きつらせた――あの大犬座が、だ。
「翡翠って、ロリコンでショタコンなんだよね」
「いやああああああああああああああ!!!!!!!!!」
『駄目にきまってるんだろおおおおおお!!!!!』
陽炎と柘榴が声を揃えて、白雪に向かって怒鳴った。
この男は……こともあろうか、目の前で餌をちらつかせて、それで友好的になろうとしている。
そして、陽炎は対菫のために、柘榴は対何かの術のために連れて行くつもりだ――!
「ぼく、パパとならどこへでもいく。とてもとても悪いことしちゃったから」
「蓮見……起きたの?」
「うん。ぼく、パパ大好きだよ? ぼく、大きくなったらパパをお婿さんにするからね!」
「……――参ったね、パパはママのお婿さんなんだ」
「じゃあ、ぼく、あいじんになるっ」
それに反応したのは、陽炎。
飲んでいた水をぶっと吹き出し、咽せている。薄暗い心当たりでもあるからか、その言葉が酷く突き刺さった。
白雪は蓮見に誰もがうっとりしそうな程の美貌で笑いかけて、蓮見を抱きしめる。
「ごめんね、パパはね、ママ一筋なんだ。蓮見、愛人とかは駄目だよ。言うのも駄目。いいね――?」
「――はぁい」
「だけど、翡翠っていう人には、ちょっと愛想笑みとかしまくってくれないかな」
「兄さん!!! 子供を交渉手段に使うなぁ!」
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