232 / 358
第六部~梅花悲嘆~
第八話 甥馬鹿
しおりを挟む
「いいよ」
「かげ君ッ」
「だって、可愛い。蓮見は蓮見だよ、可愛い! ああ、もうお前、可愛い。これが成長した蓮見なんだーッ。柘榴、考えてみろ、数年後白雪の教育を受けてやさぐれる蓮見の性格見るより、今子供のままの蓮見の性格見てた方が楽しくない?」
「楽しい楽しくないより、命の保証でしょう、陽炎!」
苛々した鴉座につっこまれて、陽炎は、ぶすっとする。
鴉座は先ほどチョコクイズを一人だけ止めることが出来なかったので、苛々している。
しかも正解した――その相手は、獅子座だ。
獅子座は鴉座と蟹座にむかって、これ見よがしに笑って見せた。大声で快活に笑い、陽炎を抱えて「もーらい!」とチョコ貰う宣言をした。
蟹座と鴉座は密かに、後でぼころうと結託した。
「いや、だって楽しいこと考えないと白雪の拷問方法が気になって……」
「――まぁ、気持ちは分からなくはないですが」
鳥肌が立っている様子の陽炎に、鴉座まであの笑顔を思いだし、ぞっとした。
白雪と蠍座のどっちがいいかと言われれば当然蠍座を選ぶくらい、白雪の笑みは怖い。
「かげろちゃん、虐めないで、鴉さん。だってぼくは少し嬉しいよ。言葉が自由に使える。沢山動ける。自分の足で歩けるし、大犬さんより大きい」
「ほら健気だよ、可愛いよ。可愛いだろう、寧ろ」
「いい加減にしてください、この甥馬鹿ッ。――まぁでもこの期間で、ユグラルドにばれなければ、欺けていいかもしれませんね」
「ほら、良いことあった!」
陽炎が笑顔でそう指摘すると、苛々が頂点に達したのか、鴉座が黒い笑みを浮かべて一歩近づいてきた。
思わす陽炎は席を立ち上がり一歩下がる。また鴉座が一歩近づいたので、一歩下がる。それを繰り返そうとしたとき、壁について、しまったと思うと同時に捕まえられていて、壁に両手を押さえつけられるような形で、耳元で甘く低い声で言葉を吐かれる。
「どうして今日の貴方は意地悪なんでしょうねぇ?」
「……ッ! 耳ッ! みーみー!」
「チョコを私にくれないのに、獅子座にあげるつもりですか?」
「手作りっつって、銅貨チョコ一枚渡すつもりだよっ!」
大声で偽装予定を告白された獅子座はショックを受け、蟹座は爆笑した。爆笑した蟹座を獅子座は大剣を構えて追いかけ、蟹座はひらりと涼しげな顔で逃げていく。
鴉座は少し考えるような素振りを見せ、ふむ、と唸ってから、首を傾げる。
「でもどのみち、貴方の手からチョコ、ですよね? ――酷い方ですねぇ」
「わぁああ! 耳、がっ……ッ! エロ魔神、離れろッ!」
陽炎は顔を赤くして、耳を押さえようと手を動かしたがるが、鴉座はそれをさせない。
にやにやとしている鴉座に、涙目になりながらも睨み付けるしかない陽炎は、下唇を噛んで、耐える。
「あんまりそんなに幼い動作をしないでください、ショタコンになった気分になりますから」
「――まじで、やめろって。耳元で話すの、やめろ! いい加減にしろよ?」
「じゃあ、チョコ、くださいますよね?」
「――銅貨チョコ一枚な」
「……本命の方には手作りが王道ではなくて?」
「……――死んでも手作りはやんねぇ。あの、本当、ちょ、っやめて……やばい!」
「何がどうやばいか、貴方の口からお聞かせねがいませ……」
「聖霊ちゃん、あれ何してるの?」
無垢な蓮見の声を聞いて、陽炎と鴉座はどきりとした。
二人は慌てて離れるが、先に柘榴が「あれは仲良くしてるんだよ」とある意味あっていることを教える。
「お前が、あんなことするから……ッ」
「何のことでしょう」
「とぼける気かッ!?」
「かげろちゃん、怒ってるの? 仲良くしたのに怒ってるの?」
「いや、蓮見ッ、な、何でもないんだよっ?」
「……ふぅん?」
陽炎は慌てて笑みを浮かべたが、目の細め方が白雪そっくりで陽炎はちょっと怯えた。
「かげ君ッ」
「だって、可愛い。蓮見は蓮見だよ、可愛い! ああ、もうお前、可愛い。これが成長した蓮見なんだーッ。柘榴、考えてみろ、数年後白雪の教育を受けてやさぐれる蓮見の性格見るより、今子供のままの蓮見の性格見てた方が楽しくない?」
「楽しい楽しくないより、命の保証でしょう、陽炎!」
苛々した鴉座につっこまれて、陽炎は、ぶすっとする。
鴉座は先ほどチョコクイズを一人だけ止めることが出来なかったので、苛々している。
しかも正解した――その相手は、獅子座だ。
獅子座は鴉座と蟹座にむかって、これ見よがしに笑って見せた。大声で快活に笑い、陽炎を抱えて「もーらい!」とチョコ貰う宣言をした。
蟹座と鴉座は密かに、後でぼころうと結託した。
「いや、だって楽しいこと考えないと白雪の拷問方法が気になって……」
「――まぁ、気持ちは分からなくはないですが」
鳥肌が立っている様子の陽炎に、鴉座まであの笑顔を思いだし、ぞっとした。
白雪と蠍座のどっちがいいかと言われれば当然蠍座を選ぶくらい、白雪の笑みは怖い。
「かげろちゃん、虐めないで、鴉さん。だってぼくは少し嬉しいよ。言葉が自由に使える。沢山動ける。自分の足で歩けるし、大犬さんより大きい」
「ほら健気だよ、可愛いよ。可愛いだろう、寧ろ」
「いい加減にしてください、この甥馬鹿ッ。――まぁでもこの期間で、ユグラルドにばれなければ、欺けていいかもしれませんね」
「ほら、良いことあった!」
陽炎が笑顔でそう指摘すると、苛々が頂点に達したのか、鴉座が黒い笑みを浮かべて一歩近づいてきた。
思わす陽炎は席を立ち上がり一歩下がる。また鴉座が一歩近づいたので、一歩下がる。それを繰り返そうとしたとき、壁について、しまったと思うと同時に捕まえられていて、壁に両手を押さえつけられるような形で、耳元で甘く低い声で言葉を吐かれる。
「どうして今日の貴方は意地悪なんでしょうねぇ?」
「……ッ! 耳ッ! みーみー!」
「チョコを私にくれないのに、獅子座にあげるつもりですか?」
「手作りっつって、銅貨チョコ一枚渡すつもりだよっ!」
大声で偽装予定を告白された獅子座はショックを受け、蟹座は爆笑した。爆笑した蟹座を獅子座は大剣を構えて追いかけ、蟹座はひらりと涼しげな顔で逃げていく。
鴉座は少し考えるような素振りを見せ、ふむ、と唸ってから、首を傾げる。
「でもどのみち、貴方の手からチョコ、ですよね? ――酷い方ですねぇ」
「わぁああ! 耳、がっ……ッ! エロ魔神、離れろッ!」
陽炎は顔を赤くして、耳を押さえようと手を動かしたがるが、鴉座はそれをさせない。
にやにやとしている鴉座に、涙目になりながらも睨み付けるしかない陽炎は、下唇を噛んで、耐える。
「あんまりそんなに幼い動作をしないでください、ショタコンになった気分になりますから」
「――まじで、やめろって。耳元で話すの、やめろ! いい加減にしろよ?」
「じゃあ、チョコ、くださいますよね?」
「――銅貨チョコ一枚な」
「……本命の方には手作りが王道ではなくて?」
「……――死んでも手作りはやんねぇ。あの、本当、ちょ、っやめて……やばい!」
「何がどうやばいか、貴方の口からお聞かせねがいませ……」
「聖霊ちゃん、あれ何してるの?」
無垢な蓮見の声を聞いて、陽炎と鴉座はどきりとした。
二人は慌てて離れるが、先に柘榴が「あれは仲良くしてるんだよ」とある意味あっていることを教える。
「お前が、あんなことするから……ッ」
「何のことでしょう」
「とぼける気かッ!?」
「かげろちゃん、怒ってるの? 仲良くしたのに怒ってるの?」
「いや、蓮見ッ、な、何でもないんだよっ?」
「……ふぅん?」
陽炎は慌てて笑みを浮かべたが、目の細め方が白雪そっくりで陽炎はちょっと怯えた。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる