【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第六部~梅花悲嘆~

第八話 甥馬鹿

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「いいよ」
「かげ君ッ」
「だって、可愛い。蓮見は蓮見だよ、可愛い! ああ、もうお前、可愛い。これが成長した蓮見なんだーッ。柘榴、考えてみろ、数年後白雪の教育を受けてやさぐれる蓮見の性格見るより、今子供のままの蓮見の性格見てた方が楽しくない?」
「楽しい楽しくないより、命の保証でしょう、陽炎!」

 苛々した鴉座につっこまれて、陽炎は、ぶすっとする。
 鴉座は先ほどチョコクイズを一人だけ止めることが出来なかったので、苛々している。
 しかも正解した――その相手は、獅子座だ。
 獅子座は鴉座と蟹座にむかって、これ見よがしに笑って見せた。大声で快活に笑い、陽炎を抱えて「もーらい!」とチョコ貰う宣言をした。
 蟹座と鴉座は密かに、後でぼころうと結託した。
 
「いや、だって楽しいこと考えないと白雪の拷問方法が気になって……」
「――まぁ、気持ちは分からなくはないですが」

 鳥肌が立っている様子の陽炎に、鴉座まであの笑顔を思いだし、ぞっとした。
 白雪と蠍座のどっちがいいかと言われれば当然蠍座を選ぶくらい、白雪の笑みは怖い。

「かげろちゃん、虐めないで、鴉さん。だってぼくは少し嬉しいよ。言葉が自由に使える。沢山動ける。自分の足で歩けるし、大犬さんより大きい」
「ほら健気だよ、可愛いよ。可愛いだろう、寧ろ」
「いい加減にしてください、この甥馬鹿ッ。――まぁでもこの期間で、ユグラルドにばれなければ、欺けていいかもしれませんね」
「ほら、良いことあった!」

 陽炎が笑顔でそう指摘すると、苛々が頂点に達したのか、鴉座が黒い笑みを浮かべて一歩近づいてきた。
 思わす陽炎は席を立ち上がり一歩下がる。また鴉座が一歩近づいたので、一歩下がる。それを繰り返そうとしたとき、壁について、しまったと思うと同時に捕まえられていて、壁に両手を押さえつけられるような形で、耳元で甘く低い声で言葉を吐かれる。

「どうして今日の貴方は意地悪なんでしょうねぇ?」
「……ッ! 耳ッ! みーみー!」
「チョコを私にくれないのに、獅子座にあげるつもりですか?」
「手作りっつって、銅貨チョコ一枚渡すつもりだよっ!」

 大声で偽装予定を告白された獅子座はショックを受け、蟹座は爆笑した。爆笑した蟹座を獅子座は大剣を構えて追いかけ、蟹座はひらりと涼しげな顔で逃げていく。
 鴉座は少し考えるような素振りを見せ、ふむ、と唸ってから、首を傾げる。

「でもどのみち、貴方の手からチョコ、ですよね? ――酷い方ですねぇ」
「わぁああ! 耳、がっ……ッ! エロ魔神、離れろッ!」

 陽炎は顔を赤くして、耳を押さえようと手を動かしたがるが、鴉座はそれをさせない。
 にやにやとしている鴉座に、涙目になりながらも睨み付けるしかない陽炎は、下唇を噛んで、耐える。

「あんまりそんなに幼い動作をしないでください、ショタコンになった気分になりますから」
「――まじで、やめろって。耳元で話すの、やめろ! いい加減にしろよ?」
「じゃあ、チョコ、くださいますよね?」
「――銅貨チョコ一枚な」
「……本命の方には手作りが王道ではなくて?」
「……――死んでも手作りはやんねぇ。あの、本当、ちょ、っやめて……やばい!」
「何がどうやばいか、貴方の口からお聞かせねがいませ……」
「聖霊ちゃん、あれ何してるの?」

 無垢な蓮見の声を聞いて、陽炎と鴉座はどきりとした。
 二人は慌てて離れるが、先に柘榴が「あれは仲良くしてるんだよ」とある意味あっていることを教える。

「お前が、あんなことするから……ッ」
「何のことでしょう」
「とぼける気かッ!?」
「かげろちゃん、怒ってるの? 仲良くしたのに怒ってるの?」
「いや、蓮見ッ、な、何でもないんだよっ?」
「……ふぅん?」
 
 陽炎は慌てて笑みを浮かべたが、目の細め方が白雪そっくりで陽炎はちょっと怯えた。
 
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