【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第六部~梅花悲嘆~

第七話 成長促進剤となった毒

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「は、は、は、蓮見!?」
「ママ! わぁ、ママが少し小さく見える!」
「あ、あああ……」
「尼僧ッ!」
 
 射手座が目眩がして倒れかけた牡羊座を支える。
 蓮見はおろおろとして、射手座に視線をやり、見上げる、大変可愛らしい目で。

「何? ママ病気? それとも誰かに呪われた?」
「ち、違うと思うで御座る……蓮見、本当に蓮見で御座るか?」
「うん、蓮見だよ」

 蓮見がにこりと微笑むと牡羊座の面影があるからか、射手座は牡羊座を抱えてのたうち回る。
 恐らく、かわいさに悶えているのだろう、と漸く冷静になった陽炎は、遠くからアフタヌーンティーを楽しみながら見守っている。
 それから向かいの席に座っている柘榴を睨み付けて、言葉を待つ。
 柘榴は、頬をかいて、全身汗だくになりながら、震える。陽炎の気迫に怯えているのだ。
 
「ええとね、それね、後で捨てようと思ったんだけど……」
「何で持ち歩いて捨てなかったの?」
「っつか、何でさそりんじゃなくて、おいらの方を怒るんだよ?!」
「だって、あっち怖いじゃないか?!」
 
 陽炎が指をさした方向では、水瓶座と蠍座が毒についてマニアックな話をしている。
 柘榴の指示で、毒について語って良い気分にさせたところで、蓮見を大人にした毒について聞くことになったので、必死に水瓶座があわせているうちに、水瓶座は己の治療の知識にも役立つことに気づいたのか、熱が入り出して、何だか怖いオーラになっている。
 それを見やってから、柘榴は納得して頷き、蓮見を見やる。
 
「――蓮見ちゃーん、捨てられてるものを食べちゃ駄目でしょー?」
「落ちた物は袋に包まれてれば平気だって、かげろちゃんが言ってたよ。ぼく、悪くないもん」
「かげくーん!!!」
「はいはーい、すいませんでしたー!!」

 陽炎が叫ぶようにそう謝ると、柘榴はため息をついて、蓮見を見やる。
 白雪に、このことがばれたら、殺される。
 白雪は育っていく過程を非常に楽しみにしていた――それなのに、一気に十三才だ。

 「七才くらいって一番楽しみだよね」と、微笑んでいたのを忘れられない。というより、今になって急に思い出してくる。
 だから、陽炎と柘榴は青ざめて、顔を見合わせる。お互い滝汗をかいている。
 
「ど、どうしよう、かげ君」
「と、とにかく、白雪が帰ってくるまでに、治療薬だか毒だか飲ませるんだ」
「……ぼく、このままで少し居ちゃ駄目? 聖霊ちゃん、かげろちゃん」
「うーわー、白雪譲りの呼び方、蓮見ちゃん、おいらショック……夢が崩れた」

 柘榴は青ざめたまま空笑い浮かべ、駄目ですときぱっと言い切った。
 すると蓮見は陽炎をちらっと見やり、ハムスターのようなつぶらな目で此方を見てくる。きらきら、うるうる、そんな効果音が飛び交いそうなつぶらで大きな瞳。
 甥馬鹿の陽炎が、この視線に耐えられるわけがなかった。
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