【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
199 / 358
第五部ー君の眠りは僕には辛すぎてー

第十三話 正義になれない

しおりを挟む

「あー、何?」

 陽炎は亜弓と話していた時だったので、少し面倒くさそうに柘榴に振り返る。
 そんな姿を見て柘榴は「冷たくなったなー」と苦笑しながら、陽炎に話し掛ける。

「羊さんがさ、蓮見ちゃんが居なくなったから皆で探して欲しいんだってサ」
「……うっそ、マジで!? 大変じゃないか! ごめん、亜弓、また今度ッ」

 陽炎としては蓮見は大事な大事な可愛い甥。
 目に入れても痛くない! と断言できるほど可愛い甥で、陽炎は密かに白雪夫妻の第二子を期待している。可愛い子は増えて欲しいからだ。
 蓮見や、牡羊座や、兄という存在は、彼にとってはかけがえのない家族が出来たので、嬉しいのだ。
 幼い頃から陽炎は家族というのに憧れていた。だけどいつも疎外感を感じていて、唯一身近に感じることが出来たのが劉桜と、賊時代の仲間だった。
 奴隷になってからは家族は諦めていたのだが、星座が家族となって幸せだったのに、兄が居ると知り、更には兄に嫁が出来た。嬉しいに決まってる、経緯は兎も角。繰り返そう、兄が妻をどう嫁にしたか、経緯は兎も角! 人道から外れたその経緯は兎も角!
 鬼畜兄とそれに耐えられるマゾと思われる兄嫁は子供を、夫婦になる前に無理矢理に作ってしまった。今では愛されてるが、その経緯は今考えると本当酷い。
 生まれてきた子供は大変愛らしく、両方に似たのに、天使のような性格――今現在。将来、どんな風になるかは兎も角――。
 蓮見が笑えば、白雪も牡羊座も己も笑う。
 そんな大事な家族の中心、蓮見が居ないのは、この世の何よりも悲劇だ。
 
 陽炎はプラネタリウムに居るだろう蟹座を、外から呼ぶと、探しに行くぞ! と、声を張り上げる。
 今は鴉座は洗濯物を片付けているので、蟹座は仕方なしに面倒くさそうに現れ、ついていく。
 柘榴はそれを見送ると、己も行こうとする。
 
 だが、プラネタリウムから現れた鷲座に止められる。
 鷲座は目を少し柘榴から外して、腕を掴んだところで、すぐに手を離す。
 そして少々考え込むような素振りで、慎重に言葉を選んで、こわごわと口にする。
 
「――何か、嫌な予感がする」
「あれ、わっしー。白雪の手伝いしてたんじゃないの?」
「……断られた、急に。何か、嫌な予感がするんだ」
「――……おいらだけ行かないってわけにはいかないだろう?」

 柘榴は目を細めて、それから鷲座と亜弓にばいばい、と手をふって、魚座を呼び、外に出る。
 魚座は鷲座と亜弓を一瞬見て戸惑ってから、柘榴に続いた。
 その背中を見つめて、鷲座は沈黙を保つ。亜弓は既に興味対象を無くしてるのか、持っていたクロスワードパズルを眺めて、空欄を考え込み、唸る。
 だがクロスワードパズルからふと視線を外し、ちらりと鷲座を見やり、その真剣な顔つきにぎょっとし、そこまで何か問題があったのだろうか、蓮見に何かあるのだろうか、と不安になる。
 
「鷲座?」
 
 今朝の白雪との会話を思い出す――。
 
(鷲の妖仔……味方は嬉しいけれど、辛いね)
(何故辛いんですか?)
(さぁ、何でだろうね――オレには、やっぱり一人が似合うんだと思う。これは天が一人になれと告げてるんだ……オレは、妖仔になってから生まれ変わった気がしたのに、……結局は何一つ変わってないんだ、そう判った)
 
 その時浮かべた彼の寂しげな笑みが離れず、嫌な予感を思わせた。
 白雪は全て一人で背負い込む――嬉しいことも、辛いことも、怒りも。だから、いつ彼が怒るか、彼が何をするかなんて予測がつかないし、いつの間にか全てが片付いてから、知ることだってある。
 ――もし、何かが起こっていて、それが陽炎や柘榴にとって悪いことならば、終わる前に気付きたい物だが、それは憶測でしかないから、何も言えない。
 
「鷲座、こるぁああ! 僕を無視するなぁああ! 少しは大きくなったねーとか言えよぉ!」
「あ、亜弓どの。ん、少し縮みましたか?」
「……君……――君だけは背丈の低い者同士の悩みを分かってくれると思っていたのに! 嫌味かそれは! 風花最強の技を喰らいたいかい……?!」
「出来れば柘榴に与えてください、それは。それで吸収して覚えますので」
「鬼! 悪魔! 白髪! 鷲の名の癖に、イメージ鳩男!」
「鳩?!」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...