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第五部ー君の眠りは僕には辛すぎてー
第十一話 やっぱり愛しい貴方
しおりを挟む一切顔色を変えない陽炎が憎い。恐らく、読まれている。この銃に、弾など入っていないことなんて。
鴉座は、鳴らない銃をしまい込み、陽炎をそっと抱き寄せる。
「汗くさいのうつるぞ」
「……――大丈夫、私のキャラじゃありませんから、汗くさいのは。そういうのは、獅子座に任せましょう」
「っはは、確かに似合うな、あいつ」
陽炎が笑うと、鴉座はため息をついて、叱咤する。どこまでも、己に甘い彼に。柘榴曰く、元から己には甘かったらしいが、記憶をなくしてからもっと甘くなったらしい。
それはひとえに昔の自分が甘えさせていたかららしいのだが、記憶のない今の自分では責任が取れない。
「――陽炎、もう少し疑ってください。死んでたらどうするんですか」
「白雪と柘榴が仇を討つんじゃねぇ? 命に関しては、あんまりお前は疑えないな」
「……でも命絡みの何かを、私は企んでいるかもしれませんよ?」
「まぁそれで死んだら、それが俺の運命だった、ということで」
「そんなの認めません」
「じゃあ生かせ」
むちゃくちゃを言う陽炎に鴉座は、噛みつくように彼の額にキスをして、戯れた。
それを窓から見ていた鷲座は、胸を痛める。
(諦められない――君たちは相思相愛で、どうすることもできないと分かっている。でも、小生は、諦めない……諦めたくないんだ。諦められる、君たちの絆を見せてくれ……もし諦めろと命じるのならば)
*
「ね、陽炎さん、僕お邪魔していい?」
陽炎が一人読書をしていると、亜弓がやってきた。陽炎は本に栞を挟んで閉じ、朗らかな笑みを見せる。
警戒心の高かった陽炎だが、今では少しは緩和されている――からなのか、柘榴の知り合いだから、なのかは分からない。
ただそれでも亜弓には親近感が湧いて、少しでも頼られたら力になりたくて仕方がなかった。
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