【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第五部ー君の眠りは僕には辛すぎてー

第六話 兄は企む生き物

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 ――夜、夕食時、初めて白雪は亜弓と顔を合わせる。
 亜弓は白雪への憎しみを隠さず、苛々していた様子だったが、白雪は気にしない。
 気まずそうにしている蘇らせた陽炎に気づくなり、二人は陽炎は悪くないと口にする。

「悪いのは、売り払ったそこの悪鬼なんだからさぁ!?」
「うん。全部悪いのはオレだからね、君は気にしないで――それより、どうして聖霊の同族が此処に?」
 
 白雪に事情を少し隠して話したのは、陽炎。
 陽炎は己と柘榴が、賞金首に狙われていることを話す。

「そう、向こうには闇の十二宮がいるのか……どんな、能力なのかな。解読出来た? 聖霊の仔」
「幽霊座は人を三日で呪い殺す能力――。だけど、鴉のにーさん曰く、もう一つ気配があって、わかんないんだって。力が」
「アクマを裏切って、と言っていたから、悪魔座だとは思うんですけれど……悪魔座の力は、よく分からないんですよね。教科書を見ても」
「……そう。孔雀、ねぇ……。氷の孔雀、とやらを眠りから引きずりだして、契約を書き換えることは出来ないのかな?」

 白雪が首傾げると、亜弓はため息をついて、駄目だったと既にやってみたことを言ってみる。
 うんともすんとも反応しなかった孔雀を見た海幸がハンマーを持っていたと、後に族長は教えてくれたので、海幸を成敗した。
 海幸は土下座して、「今年の税の蜂蜜はうちが出すから」と詫びてくれた。泣きながら。
 そんなことを思い出しながら、亜弓は両の手のひらを見せるような動作をする。

「海幸と試したんだ。だけど、出なかった」
「そう。じゃあ、まぁ呉とやらが現れるまで、食事にしようか。何も食べないと、後で堪えるよ?」
「……あんたに従うのはすっげー癪だけど、いいよ! 食べる!」

 今日の夕食、何ーと問いかけると、鳳凰座からシチューよ、と答えられる。
 女性陣から運ばれてきたシチューは美味しそうで、湯気がほわほわと天上に昇っていく。
 陽炎は大犬座から、蟹座は鳳凰座から、柘榴は魚座から、白雪は牡羊座から、鴉座は蠍座から、亜弓は冠座から受け取り、皆のが配り終えると、皆で頂きますと、食事を。
 
 食べ終える頃に、鴉座と鷲座と獅子座が食後の紅茶を淹れて、皆に配る。
 獅子座は紅茶を淹れるのが苦手なようで、彼のを受け取った者たちは苦そうな顔をしていた。
 
「陽炎どの、此方をお飲み下さい」
「――お、おう」
「鴉、いいのか。あれ?」

 蟹座が鴉座から紅茶を受け取りながら尋ねると、鴉座は余裕のある笑みを見せるだけで、何も言わなかった。
 何か色々思惑がありそうだ、そうでなければ鴉座は喚いて邪魔していただろう。
 それを考えた蟹座は納得して、そうかと呟いただけだ。

「それで、感想はどうだ? 十二宮として頼られている感想は?」
「……十二宮って、結構疲れるんですね。他の十二宮の気配で潰されそうです。蟹座、よく貴方は潰されないこと。他の方も……」
「他の奴らは兎も角な、俺が潰されるタマか?」
「豊満な霊鳥には潰されそうですよね」
「……――黙れ、昨日情報集めの帰りに逆ナンされたこと陽炎にばらすぞ」
「なっ! 何で知ってるんですか!? 黙っててください、嗚呼、お前はいつまでも忌々しいッ」
「それがオレだからな、ふん」
 
 内緒話が終えたところで、柘榴が話を切り出す。鴉座が逆ナンされていたことは後で陽炎に密告しようと思いながら。密かに聞いていたらしい。
 
「さて、これからおいらとかげ君はなるべく黄道十二宮に側に居て貰おうと思う。対応出来るようにね、呉が来ても。呉は闇の十二宮を二人従えてるという話だから、力のある黄道十二宮に守って貰うことにした。蟹座と水瓶座と牡羊座はかげ君の方に。獅子座と射手座……あれ、射手座は?」
「ああ、オレが頼み事をしたから――ちょっと、ね」

 何か意味ありげな白雪の返答に、柘榴は垂れ眼を半目にして、ふぅんと頷く。
 彼は彼で何かを調べてる感じがしたので、彼は放っておくことにした。
 敵であれば嫌な奴だが、白雪の下調べはかなり信頼でき、危機を予め知り、回避しやすいのだ。
 柘榴は己が名を連ねた星座を指さす。蠍座のときは、きらきらとした視線を合わさないように。

「じゃあ蠍座。獅子舞とさそりんと魚座の女王きてー」
「あたし達はどうしていればいいの? 柘榴ちゃん」

 大犬座は、身を乗り出して問いかける。
 柘榴はポケットをたんたんと叩いて、「何かあったら反応出来るように、この中に」と中にプラネタリウムが入ってることを暗示する。
 皆は頷くと、すぐにも入る。
 鷲座だけは残って。

「……わっしー?」
「……小生は表に出てはいけませんか?」
「……――そうか、あんたは妖術絡みだもんなぁ。じゃあ、白雪の手伝いをして」
「――分かりました」

 鷲座は頷くと、名残惜しそうに陽炎を見やってから、白雪の方に歩み寄る。
 白雪は冷めた紅茶を一口飲むと、ソーサーにカップを置いて、立ち上がる。
 
 そこへ、蓮見がパパ、と呼び、白雪の注目を浴びる。
 白雪は破顔し、蓮見を抱き上げて、抱き上げたまま、鷲座を連れて、自室へと戻った。
 
「――何か、まぁた何か企んでそうだよな、兄さん」
「良い方向だといいんだけどね、まぁかげ君に被害のいくようなもんはやんないでしょ、あいつんことだから」
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