【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
187 / 358
第五部ー君の眠りは僕には辛すぎてー

第一話 追憶の涙を死に神が流した

しおりを挟む
 嫌なことを考えるのは、存外簡単で。
 いつも嫌なことの一つや二つ考えて、その人間にとって最悪な出来事を一人か二人、一日に一回は与える。
 まるで神の試練のような、戯れ。
 最悪な出来事を与えると言うことは、恨まれると言うこと。
 恨まれると言うことは、その存在を永遠に覚えて貰えること。
 だからこそ、蒼刻一は神のように人々にずっと君臨し続ける。
 
 稀に、よかれと思ったことが、一番の最悪な出来事だったりすることもあるが。
 
 例えば、聖霊だって彼らに最強の守護神を与えたつもりだった。
 ただ愛の言葉を独占したかっただけなのだ。
 聖霊を本当に、愛していたのだ。
 それを判ったのは、柘榴の先祖だけ。
 
 ――だから、字環に関してもそうとしかいえない。
 字環に死んで欲しくないからこそ、プラネタリウムに生き埋めにした。
 
 「もし、死んで全てが償えるなら、殺してくれよ」
 
 蒼刻一は白い。
 色素が白い――のではなく、枯れているから。
 全ての物に、期待せず、全ての物に、終わりを考えているから。
 長い月日が経ちすぎて、色は沈着して、色が抜けているから。
 
 唯一の色は、銀色と黒色のオッドアイと唇。
 でも白い色素だから銀色が目立たず、不気味な色をしている。
 だからか、片目だけが黒い、唯一の色。
 
 唯一の黒が、感情を訴える。
 
 「殺してくれよ、愛するテメェの手でさ」
 
 唯一の黒から、不死になってから初めての涙が溢れる。
 
 「その為に、テメェは外に出てきたんだろうが? ああ? なのに、何やってるんだよ――……さっさと、その妖術で僕を殺せ!」
 
 瞳と同じ色の髪色を持った青年が、揺らぐ。
 そして、蒼刻一に肩を貸して、城の中へ連れて行く。
 
「どうして殺さないんだ!」
「友達だからだ、馬鹿!」
「――!」
「それにな、お前の大事な妖仔が今、大変なことになってるんだよ――ッ。ちゃんと見届けてやれ、お前の大事な妖仔を」
「……――あざ、わ」
 
 その瞬間が、きっと蒼刻一と字環にとって過去のしがらみから解放された瞬間だっただろうと、後に鷲座は思ったが、これは字環と蒼刻一、三人の秘密にしておこうと思った――。
 鷲座も肩を貸して、城の中に入るが、時すでに遅く、誰かが倒れていた――。
 
 
 「どうして、待たなかったんだ、僕を」
 
 誰もがその静寂を破れなかった――陽炎でさえ。
 無垢な魂の眠りを、見届けられなかった者の呟きは、響く。
 
 「どうして、待たなかった――よりによってテメェがそうなる必要はねぇだろ……ッ? 僕を、一人にするのか……? なぁ…なぁ、答えろよッ、テメェ起きろよッ!」
「字環!」
「……起きろっていうんだ、この馬鹿が!」
 
 本日二度目の、死に神の悲しみの露が、地面を湿らす――。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...