【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第四部 四章――斯くして彼は大変傷付いた

番外編 幽霊座と悪魔座

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 記憶の中の、神官はいつだって強くて優しくて気高くて。
 たまに記憶の中だけじゃ頼りないから、ご主人様に頼んで、彼の夢の中で遊ばせて貰う。
 彼の夢の中には、あのプラネタリウムの住人、だけど確実に違うモデルの人が居て、いつも騒がしい街で、ぼかぁ楽しかった。
 その中で、あの人を捜すのが楽しかった。
 見つければ、思わず言ってはいけない言葉を叫びそうで、おっと、とその度に言葉を飲み込む。
 だって、ゴーストに知られれば厄介だからね。
 
「ね、ねぇ、あの、ひと、何処かなぁあ……?」
「今日は牡羊座がモデルの人んとこ、行ってるんだね、きっと。そうなると、今日は神絡みだ、行かない方がいいね」
「う、うん……ねぇ、アクマ。アクマは、お父さんと、お母さんの顔、覚えてる?」

 
 無言にもなる。
 だって、狡いよね。自分だけ覚えてるって、狡いよね。
 でもそれを言えば、ゴーストの興奮が止まらなくなりそうで、怖くて言えない臆病さ。
 いや、それを言えば、ぼく自身の感情でさえも抑えきれなくなりそうで――。
 
「ゴースト、いいかい、忘れなさいね」
「……覚え、ていた、いよぉお……。アクマ、覚えてるの?」
「――忘れたよ。何年妖仔として生きてると、思うんだね?」
「……――覚え、ていない、のかぁあ…」
 
 ゴーストは残念そうに言う。
 言うことが出来たらいいのに。
 でも出来ないから、僅かな情報しか与えられない。
 
「君とぼかぁ、アトューダ様に名付けられたね」
「え、あの人が?!! な、なん、て!?」
「ゴーストがカレン、ぼかぁクガレ」
「……カレン……お、女の子、みたい、だぁ、あ……」

 落ち込むゴーストの頭を撫でてぼかぁ笑った。
 可愛い、純粋すぎて可愛い。あの人は名付けセンスが無かったんだよ、と教えてやる。
 可愛い子は、にこりと不器用に笑って、そうか、と納得する。
 
 
 ゴースト。
 いつになったら、言えるのかな。
 父親の名を。ぼく自身のことを。
 待たなきゃ。待たなきゃ。ぼかぁ、待たなきゃ。
 
「ゴースト、いいかね。あんまり似てるからって、カラス兄さんとこに行くんじゃないよ。絶対行ってはならないね、いいね」
「……どう、して?」
「――彼にとって迷惑でしかならない感情を、ぼかぁ持ってるからだ。ぼくちゃんもね」
 
 本当いい迷惑だよ。
 恩人だからって、それに重ねたりするなんて。
 本物に近い偽物。偽物なんて言い方も失礼。だから、彼は別人。
 別人なんだから、重ねるのはいい迷惑。
 
 ゴーストが不満そうだ。
 そんなこと、知った事じゃないね。
 
 さぁ、ほら、仮ご主人のところに行こう?
 彼もご主人同様、一人きりで寂しい思いをしているから。
 ゴースト、ぼくちゃんが好きそうな性格をしているよ? 見た目は怖いけれど。
 
 さぁ、出番だよ――。
 
 
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