167 / 358
第四部 四章――斯くして彼は大変傷付いた
番外編 幽霊座と悪魔座
しおりを挟む
記憶の中の、神官はいつだって強くて優しくて気高くて。
たまに記憶の中だけじゃ頼りないから、ご主人様に頼んで、彼の夢の中で遊ばせて貰う。
彼の夢の中には、あのプラネタリウムの住人、だけど確実に違うモデルの人が居て、いつも騒がしい街で、ぼかぁ楽しかった。
その中で、あの人を捜すのが楽しかった。
見つければ、思わず言ってはいけない言葉を叫びそうで、おっと、とその度に言葉を飲み込む。
だって、ゴーストに知られれば厄介だからね。
「ね、ねぇ、あの、ひと、何処かなぁあ……?」
「今日は牡羊座がモデルの人んとこ、行ってるんだね、きっと。そうなると、今日は神絡みだ、行かない方がいいね」
「う、うん……ねぇ、アクマ。アクマは、お父さんと、お母さんの顔、覚えてる?」
無言にもなる。
だって、狡いよね。自分だけ覚えてるって、狡いよね。
でもそれを言えば、ゴーストの興奮が止まらなくなりそうで、怖くて言えない臆病さ。
いや、それを言えば、ぼく自身の感情でさえも抑えきれなくなりそうで――。
「ゴースト、いいかい、忘れなさいね」
「……覚え、ていた、いよぉお……。アクマ、覚えてるの?」
「――忘れたよ。何年妖仔として生きてると、思うんだね?」
「……――覚え、ていない、のかぁあ…」
ゴーストは残念そうに言う。
言うことが出来たらいいのに。
でも出来ないから、僅かな情報しか与えられない。
「君とぼかぁ、アトューダ様に名付けられたね」
「え、あの人が?!! な、なん、て!?」
「ゴーストがカレン、ぼかぁクガレ」
「……カレン……お、女の子、みたい、だぁ、あ……」
落ち込むゴーストの頭を撫でてぼかぁ笑った。
可愛い、純粋すぎて可愛い。あの人は名付けセンスが無かったんだよ、と教えてやる。
可愛い子は、にこりと不器用に笑って、そうか、と納得する。
ゴースト。
いつになったら、言えるのかな。
父親の名を。ぼく自身のことを。
待たなきゃ。待たなきゃ。ぼかぁ、待たなきゃ。
「ゴースト、いいかね。あんまり似てるからって、カラス兄さんとこに行くんじゃないよ。絶対行ってはならないね、いいね」
「……どう、して?」
「――彼にとって迷惑でしかならない感情を、ぼかぁ持ってるからだ。ぼくちゃんもね」
本当いい迷惑だよ。
恩人だからって、それに重ねたりするなんて。
本物に近い偽物。偽物なんて言い方も失礼。だから、彼は別人。
別人なんだから、重ねるのはいい迷惑。
ゴーストが不満そうだ。
そんなこと、知った事じゃないね。
さぁ、ほら、仮ご主人のところに行こう?
彼もご主人同様、一人きりで寂しい思いをしているから。
ゴースト、ぼくちゃんが好きそうな性格をしているよ? 見た目は怖いけれど。
さぁ、出番だよ――。
たまに記憶の中だけじゃ頼りないから、ご主人様に頼んで、彼の夢の中で遊ばせて貰う。
彼の夢の中には、あのプラネタリウムの住人、だけど確実に違うモデルの人が居て、いつも騒がしい街で、ぼかぁ楽しかった。
その中で、あの人を捜すのが楽しかった。
見つければ、思わず言ってはいけない言葉を叫びそうで、おっと、とその度に言葉を飲み込む。
だって、ゴーストに知られれば厄介だからね。
「ね、ねぇ、あの、ひと、何処かなぁあ……?」
「今日は牡羊座がモデルの人んとこ、行ってるんだね、きっと。そうなると、今日は神絡みだ、行かない方がいいね」
「う、うん……ねぇ、アクマ。アクマは、お父さんと、お母さんの顔、覚えてる?」
無言にもなる。
だって、狡いよね。自分だけ覚えてるって、狡いよね。
でもそれを言えば、ゴーストの興奮が止まらなくなりそうで、怖くて言えない臆病さ。
いや、それを言えば、ぼく自身の感情でさえも抑えきれなくなりそうで――。
「ゴースト、いいかい、忘れなさいね」
「……覚え、ていた、いよぉお……。アクマ、覚えてるの?」
「――忘れたよ。何年妖仔として生きてると、思うんだね?」
「……――覚え、ていない、のかぁあ…」
ゴーストは残念そうに言う。
言うことが出来たらいいのに。
でも出来ないから、僅かな情報しか与えられない。
「君とぼかぁ、アトューダ様に名付けられたね」
「え、あの人が?!! な、なん、て!?」
「ゴーストがカレン、ぼかぁクガレ」
「……カレン……お、女の子、みたい、だぁ、あ……」
落ち込むゴーストの頭を撫でてぼかぁ笑った。
可愛い、純粋すぎて可愛い。あの人は名付けセンスが無かったんだよ、と教えてやる。
可愛い子は、にこりと不器用に笑って、そうか、と納得する。
ゴースト。
いつになったら、言えるのかな。
父親の名を。ぼく自身のことを。
待たなきゃ。待たなきゃ。ぼかぁ、待たなきゃ。
「ゴースト、いいかね。あんまり似てるからって、カラス兄さんとこに行くんじゃないよ。絶対行ってはならないね、いいね」
「……どう、して?」
「――彼にとって迷惑でしかならない感情を、ぼかぁ持ってるからだ。ぼくちゃんもね」
本当いい迷惑だよ。
恩人だからって、それに重ねたりするなんて。
本物に近い偽物。偽物なんて言い方も失礼。だから、彼は別人。
別人なんだから、重ねるのはいい迷惑。
ゴーストが不満そうだ。
そんなこと、知った事じゃないね。
さぁ、ほら、仮ご主人のところに行こう?
彼もご主人同様、一人きりで寂しい思いをしているから。
ゴースト、ぼくちゃんが好きそうな性格をしているよ? 見た目は怖いけれど。
さぁ、出番だよ――。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─
藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。
そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!?
あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが…
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊
喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者
ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』
ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
Rシーンは※をつけときます。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる