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第三部 第三章――露呈
番外編2 魚座と柘榴
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だっていつまでもめそめそしてらんないじゃん。
かげ君はさ、順調に鴉のにーさんといちゃついてるっていうのに、肝心のおいらが落ち込んでいたら意味ないじゃん。
なんか、最近笑えば笑うほど虚しくなるんだ。
笑うことが悲しいことだと知ったのは、いつからだろう。
笑いの国で過ごせたら、きっと一日で狂う。
でもおいらはそれに見ないふりしていたんだ。
誰だって自分が傷つく可能性は回避したいジャン?
おいら、失恋の痛手背負ってるんだぜーなんて顔したくないじゃん?
かげ君にはおいらのこと悟って欲しくないジャン? 気にして欲しくないジャン?
おいら、かげ君の恋人になれなくていいから、側で馬鹿やれる良い奴になりたいんだ。
そしたらさ、ある日突然、魚座の女王に呼び出されてさ。
「柘榴君、慰めは欲しいか」
なんて穏やかに笑っちゃってくれちゃってさ。
その顔があんまりにも穏やかだったからさ、おいら不意をつかれてさ、ちぃと泣いちゃったんだわ、情けないことに。
「うっせ、いらねぇよ」
「ほほっ、まだまだ大丈夫のようじゃな。憎まれ口が叩けることはいいことじゃ」
「……うるせぇ、馬鹿。あんたなんて、最初から失恋だったくせに」
「ああ、そうじゃ。わらわは妖術嫌いの男を好きになったからのう」
「最初から印象最悪だったくせに」
「ああ、そうじゃ。わらわは第一印象が良かった覚えは特にない」
「最初から、最初のままだったら、嫌いだったのに。漬け物つけるようになったりとか、何でそんな努力するようになったんだよ」
言葉がね、溢れたんだよね。
――ほらさ、ちょっと言い訳させてもらうとさ、普段から良い奴やってると、疲れって溜まるんだね。不思議。
でもそれが苦にならなかったのが今までだったんだけど、つい最近からちょっと辛くなったんだ。
でも多分一時的な物。だって、おいら、生まれながらに説歌いの役割大好きな奴なんだぜ?
偽善者でもなんでもいいさ! でも、良い奴でいたかったんだ!
でもこの時ばかりは、この星座はおいらの醜い面を知ってると思うと、思ってもない言葉があふれ出てさ。
はい。傷つけようとしちゃったんです。
傷つけて遠のかせようとしたんだ。
――だってさぁ。
「少しでも好かれようと努力するのが、乙女じゃて」
こんな、ぬか臭い乙女に惚れるなんて、嫌ジャン?
失恋の痛手だから、とかだったりしたら、可哀想じゃん?
折角黒玉の仕組みを変えて思い続けてきたのに、そこで与えられるのが痛手で流れた思いって最悪じゃん?
「乙女っすか」
「乙女じゃ、これでも。わらわとて、偶には苛立つわ。何でよりによって柘榴君に惚れてしまったんじゃろうか、って苛立つ時があるわ」
「ははっ、じゃあ嫌いになれよ?」
「――なれんから、こうして今日も漬け物を漬けたんじゃろうて」
本当、ぬか臭い。
ああ、この匂い、こうじのなす漬けだな。
おいらのとっておきに好きな漬け物。
おいらさ、漬け物には五月蠅いんだけどさ、この女、段々美味しいのつけるようになってきてやんの。
本当、ぬか臭い。
「あんたの好きになった男って最悪だよ? 愛してるの一言も告げられないんだぜ?」
だって、死んじゃうから。
俺が愛してるって言ったら、死に神の力で死んじゃうから。
それを魚座は知ってるから、ただにこりと笑うだけで。
「代わりに“嫌い”は言って貰えるんじゃろう?」
そんでもって、おいら達の愛の言葉知ってて。
本当、何でこんな素敵な人、黒玉の妖仔なわけ?
「そろそろ負けを認めようかなぁ」
「……柘榴君?」
「ねぇ。もし、もしもだよ。もし、プラネタリウムから解放されたら、おいら、あんたに負けを認めるよ」
「それは……――」
「嫌い。大嫌いだ、あんたなんか。ぬか臭いし、すぐおいらの言葉は真に受けるし、でも女王だし。嫌いだよ、魚座――」
「……柘榴、君」
はは、可愛い。
顔、赤くして。何、あんたでも結構そんな初心なとこってあんのね。
ねぇ、有難う。
いつまでもおいらを見続けていてくれて。
いつまでもおいらから離れないで居てくれて。
おいらは、今日、ここに敗北を宣言いたします。もうね、負けた。負けました!
でも他の人には内緒でね。
――黒玉が支配してるうちは、まだ完全試合じゃないからさ。
「あんたのねばり強さには、負けたよ――ああ、今日、砂肝食いたい」
「……ほほっ、わらわはこう見えてしつこいんじゃよ。……分かった、塩コショウにつけておく」
「砂糖と間違えるなよー?」
「そんな子供みたいなミス、大犬ではあるまいし」
なんかさ、久しぶりに笑えた。
心から笑いって、こんなにも暖かい物なんだなって。
これからも、おいらは良い奴でいようなんてやっぱり決心。
だってさ、いつまでも皆には暖かい心であって欲しいジャン――?
その為には、どんなことだってするよ。
特に、魚座の女王。あんたのためには。下僕の一人になった、おいらを笑うといいさ!
もう好きにしちゃって、ハニー!
かげ君はさ、順調に鴉のにーさんといちゃついてるっていうのに、肝心のおいらが落ち込んでいたら意味ないじゃん。
なんか、最近笑えば笑うほど虚しくなるんだ。
笑うことが悲しいことだと知ったのは、いつからだろう。
笑いの国で過ごせたら、きっと一日で狂う。
でもおいらはそれに見ないふりしていたんだ。
誰だって自分が傷つく可能性は回避したいジャン?
おいら、失恋の痛手背負ってるんだぜーなんて顔したくないじゃん?
かげ君にはおいらのこと悟って欲しくないジャン? 気にして欲しくないジャン?
おいら、かげ君の恋人になれなくていいから、側で馬鹿やれる良い奴になりたいんだ。
そしたらさ、ある日突然、魚座の女王に呼び出されてさ。
「柘榴君、慰めは欲しいか」
なんて穏やかに笑っちゃってくれちゃってさ。
その顔があんまりにも穏やかだったからさ、おいら不意をつかれてさ、ちぃと泣いちゃったんだわ、情けないことに。
「うっせ、いらねぇよ」
「ほほっ、まだまだ大丈夫のようじゃな。憎まれ口が叩けることはいいことじゃ」
「……うるせぇ、馬鹿。あんたなんて、最初から失恋だったくせに」
「ああ、そうじゃ。わらわは妖術嫌いの男を好きになったからのう」
「最初から印象最悪だったくせに」
「ああ、そうじゃ。わらわは第一印象が良かった覚えは特にない」
「最初から、最初のままだったら、嫌いだったのに。漬け物つけるようになったりとか、何でそんな努力するようになったんだよ」
言葉がね、溢れたんだよね。
――ほらさ、ちょっと言い訳させてもらうとさ、普段から良い奴やってると、疲れって溜まるんだね。不思議。
でもそれが苦にならなかったのが今までだったんだけど、つい最近からちょっと辛くなったんだ。
でも多分一時的な物。だって、おいら、生まれながらに説歌いの役割大好きな奴なんだぜ?
偽善者でもなんでもいいさ! でも、良い奴でいたかったんだ!
でもこの時ばかりは、この星座はおいらの醜い面を知ってると思うと、思ってもない言葉があふれ出てさ。
はい。傷つけようとしちゃったんです。
傷つけて遠のかせようとしたんだ。
――だってさぁ。
「少しでも好かれようと努力するのが、乙女じゃて」
こんな、ぬか臭い乙女に惚れるなんて、嫌ジャン?
失恋の痛手だから、とかだったりしたら、可哀想じゃん?
折角黒玉の仕組みを変えて思い続けてきたのに、そこで与えられるのが痛手で流れた思いって最悪じゃん?
「乙女っすか」
「乙女じゃ、これでも。わらわとて、偶には苛立つわ。何でよりによって柘榴君に惚れてしまったんじゃろうか、って苛立つ時があるわ」
「ははっ、じゃあ嫌いになれよ?」
「――なれんから、こうして今日も漬け物を漬けたんじゃろうて」
本当、ぬか臭い。
ああ、この匂い、こうじのなす漬けだな。
おいらのとっておきに好きな漬け物。
おいらさ、漬け物には五月蠅いんだけどさ、この女、段々美味しいのつけるようになってきてやんの。
本当、ぬか臭い。
「あんたの好きになった男って最悪だよ? 愛してるの一言も告げられないんだぜ?」
だって、死んじゃうから。
俺が愛してるって言ったら、死に神の力で死んじゃうから。
それを魚座は知ってるから、ただにこりと笑うだけで。
「代わりに“嫌い”は言って貰えるんじゃろう?」
そんでもって、おいら達の愛の言葉知ってて。
本当、何でこんな素敵な人、黒玉の妖仔なわけ?
「そろそろ負けを認めようかなぁ」
「……柘榴君?」
「ねぇ。もし、もしもだよ。もし、プラネタリウムから解放されたら、おいら、あんたに負けを認めるよ」
「それは……――」
「嫌い。大嫌いだ、あんたなんか。ぬか臭いし、すぐおいらの言葉は真に受けるし、でも女王だし。嫌いだよ、魚座――」
「……柘榴、君」
はは、可愛い。
顔、赤くして。何、あんたでも結構そんな初心なとこってあんのね。
ねぇ、有難う。
いつまでもおいらを見続けていてくれて。
いつまでもおいらから離れないで居てくれて。
おいらは、今日、ここに敗北を宣言いたします。もうね、負けた。負けました!
でも他の人には内緒でね。
――黒玉が支配してるうちは、まだ完全試合じゃないからさ。
「あんたのねばり強さには、負けたよ――ああ、今日、砂肝食いたい」
「……ほほっ、わらわはこう見えてしつこいんじゃよ。……分かった、塩コショウにつけておく」
「砂糖と間違えるなよー?」
「そんな子供みたいなミス、大犬ではあるまいし」
なんかさ、久しぶりに笑えた。
心から笑いって、こんなにも暖かい物なんだなって。
これからも、おいらは良い奴でいようなんてやっぱり決心。
だってさ、いつまでも皆には暖かい心であって欲しいジャン――?
その為には、どんなことだってするよ。
特に、魚座の女王。あんたのためには。下僕の一人になった、おいらを笑うといいさ!
もう好きにしちゃって、ハニー!
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