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第四部 月と化した鷲 第一章――蠱惑
第七話 狐火の涙
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“尊者は、星座を二つ兼任していて、一つは前の尊者。もう一つは聖霊様が手に取った尊者――だから、今の尊者は、前の尊者じゃないのを、別に、引け目をとらなく、てもいいじゃな、い……?”
「記憶が無いのも?」
“それはプラネタリウムの元からの仕組み――だから、違うぅ。だから、記憶は戻らないよぅ。……尊者は、愛属性と忠実属性を変えるほかにもう一つ力があるんだぁ……”
「……――もう一つ、力、が?」
“それが目覚めれば、聖霊様に嬉しいことが起きる――……怖い事なんて、何一つ無くなる。蒼様にも対抗、でき、るんだぁ……! だから、ね。だから、ね。お願い、早く、闇の十二宮として自覚して――悪食の鴉座として”
鴉座は、その言葉を一句も残さず記憶しようとするが、興奮の方が先で覚えきれない。
だけど、要点は分かったのでよしとしよう。
要点は、闇の十二宮の力を得ろということだ。
さて、問題は残るは三つ。
これは蒼刻一の罠か、蒼刻一は聞いているのか、この声は何の星座だろうか。
そのうちの一つを聞いてみるくらいは許されるだろうと、鴉座は尋ねる。
「お前は何者――? 何故私を助ける?」
“――ぼくぅは闇の十二宮。またいつか、会える。尊者を助けるのは……亜弓様を助けるのに必要な能力、だから、それが……。ご、ごめんなさいぃい、不純な動機で”
怯えきって謝る声に鴉座は、今まで警戒していた心を安心させて、少し柔らかく笑いかける。何処へ笑いかけて良いか分からなかったが、とりあえず空中に笑まいを浮かべておいた。
「いえ、動機が不純である方が目的が明確で有難い。――亜弓は元気ですか?」
亜弓はガンジラニーニで、プラネタリウムから得た柘榴の情報によれば、義弟代わりでもあったほど柘榴と仲の良かった少年だ。
プラネタリウムから見られる情報によれば、ピンク髪の妖術嫌いの。
聞いたのは気紛れからと、柘榴へのおみやげ代わりだったのだが、予想外に火は亜弓の話しになると嬉しそうに揺れて、くすくすと笑う。
“お優しいですぅ。ぼ、ぼくぅ達には勿体ないくらい……仮ご主人様も、あゆ、み様に癒されてるん、だよぉ……”
「妖術嫌いの仔なのに?」
“――事情があるんですぅ……いつか、いつか正式に会いに行きますからぁ、それまでにどうか、自覚してくださぁいねぇえ? ……方法は分かりませんが、それでも……ぼくぅみたいに、いつかはその力と向き合わなければならない……”
「……――力があることは、嫌ですか?」
“とても、嫌だ”
声はそれまでか細かったのだが、突如はっきりとした声になる。そして。
「とても、怖いよ。助けて」
そうはっきりと人のような声を残すと、火の玉は消えた――。
絵本とは関係ない情報だったが、良い情報が手に入った――。罠かどうかは、柘榴の判断に任せようか。
「……さて、ね。闇の十二宮――ですか」
確か、それは占いの手法の一つ。
最悪な占い結果を言い残し絶望させるような占いだったはずだ。
鴉座は確かにある。悪食を象徴させた意味だったか――。
「――失礼な。グルメな方だと思うのに」
鴉座は冗句を呟き、飛び立ち、絵本の情報を集めるのに勤しみだした。
「記憶が無いのも?」
“それはプラネタリウムの元からの仕組み――だから、違うぅ。だから、記憶は戻らないよぅ。……尊者は、愛属性と忠実属性を変えるほかにもう一つ力があるんだぁ……”
「……――もう一つ、力、が?」
“それが目覚めれば、聖霊様に嬉しいことが起きる――……怖い事なんて、何一つ無くなる。蒼様にも対抗、でき、るんだぁ……! だから、ね。だから、ね。お願い、早く、闇の十二宮として自覚して――悪食の鴉座として”
鴉座は、その言葉を一句も残さず記憶しようとするが、興奮の方が先で覚えきれない。
だけど、要点は分かったのでよしとしよう。
要点は、闇の十二宮の力を得ろということだ。
さて、問題は残るは三つ。
これは蒼刻一の罠か、蒼刻一は聞いているのか、この声は何の星座だろうか。
そのうちの一つを聞いてみるくらいは許されるだろうと、鴉座は尋ねる。
「お前は何者――? 何故私を助ける?」
“――ぼくぅは闇の十二宮。またいつか、会える。尊者を助けるのは……亜弓様を助けるのに必要な能力、だから、それが……。ご、ごめんなさいぃい、不純な動機で”
怯えきって謝る声に鴉座は、今まで警戒していた心を安心させて、少し柔らかく笑いかける。何処へ笑いかけて良いか分からなかったが、とりあえず空中に笑まいを浮かべておいた。
「いえ、動機が不純である方が目的が明確で有難い。――亜弓は元気ですか?」
亜弓はガンジラニーニで、プラネタリウムから得た柘榴の情報によれば、義弟代わりでもあったほど柘榴と仲の良かった少年だ。
プラネタリウムから見られる情報によれば、ピンク髪の妖術嫌いの。
聞いたのは気紛れからと、柘榴へのおみやげ代わりだったのだが、予想外に火は亜弓の話しになると嬉しそうに揺れて、くすくすと笑う。
“お優しいですぅ。ぼ、ぼくぅ達には勿体ないくらい……仮ご主人様も、あゆ、み様に癒されてるん、だよぉ……”
「妖術嫌いの仔なのに?」
“――事情があるんですぅ……いつか、いつか正式に会いに行きますからぁ、それまでにどうか、自覚してくださぁいねぇえ? ……方法は分かりませんが、それでも……ぼくぅみたいに、いつかはその力と向き合わなければならない……”
「……――力があることは、嫌ですか?」
“とても、嫌だ”
声はそれまでか細かったのだが、突如はっきりとした声になる。そして。
「とても、怖いよ。助けて」
そうはっきりと人のような声を残すと、火の玉は消えた――。
絵本とは関係ない情報だったが、良い情報が手に入った――。罠かどうかは、柘榴の判断に任せようか。
「……さて、ね。闇の十二宮――ですか」
確か、それは占いの手法の一つ。
最悪な占い結果を言い残し絶望させるような占いだったはずだ。
鴉座は確かにある。悪食を象徴させた意味だったか――。
「――失礼な。グルメな方だと思うのに」
鴉座は冗句を呟き、飛び立ち、絵本の情報を集めるのに勤しみだした。
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