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第四部 月と化した鷲 第一章――蠱惑
序章 願いを叶えてほしい
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絵本を使えば、全てが思い出になるから。
絵本を使えば、全てが雪のように淡いものとなるから。
「蒼、いいな。明日黒玉が出来上がるから、それが出来たら去るんだ。もうすぐ破滅の時期なんだ」
「……――嫌だ、アザワ。せんせぇ。あんたも逃げるんだ」
「僕は出来ない。僕はまだ世界中を回らなければならない……蒼、苦しいな。歩かされるのは」
「……明日、攫うから。世界から攫いに、来るから」
「蒼! ……帰ったか」
さぁ、絵本を開いて。そこには綺麗な色を散りばめられた絵が描かれているよ。
そこに書かれている物語は何かな?
「あ、ああ……」
そこに書かれている物語は何かな?
「あああ……」
そこに書かれている物語は……占い師にも予測出来ない。
「蒼、蒼!」
「来たぞーせんせ。……! どうしたんだ、センセェ!」
「蒼、こっちに来ちゃいけないぞ――こっちは、来ちゃいけない!」
「先生ッ先生ッ!」
「来ないでくれ、頼む――……見てはいけない世界が、広がって居るんだ」
そこに描かれている物語は、生首の物語。
「……先生、殺しちゃったのか? その人」
「……――分からない。分からないから、怖いんだ。咄嗟に、突き飛ばしてしまった。蒼、僕は、僕はどうすればいい? 僕、嗚呼、自警団に自首してくる……」
「駄目だっ、先生、プラネタリウムがあと少しで完成出来るんだろ!? 自警団なんかにいったら、今の時代じゃ、死刑じゃねぇか! テロリストの思うつぼだ!」
「蒼、仕方がない――」
最後まで言わせなかった、青色の物語。
綺麗な色が散りばめられているよ。
綺麗な絵本の中に、人が閉じこめられているよ。
絵本の中で、裁判官が有罪と言い続けているよ。
それは純粋な占い師の願いに、答えるため。
プラネタリウム自体、その人を思って作られたものなのだから。
何一つ自由に出来ない、ならない彼を、唯一自由にさせるものとして。
自由に接することが出来るものとして。だが、それは叶わなかった。
運命か、宿命か、どちらかがそうさせた。
偶然でこんなに、占い師にとって最悪な出来事に進むわけがない。
彼の生まれながらの、人生への力弱さから出来た、結果。
彼は占い師――星を見て占い、水晶を頼りに先を見て、世の中に平和をもたらす、「渡り鳥」。
渡り鳥のように、定住をせず世界中を歩き回り、彼は政権を握る者たちに平和がどうすればくるのかを教える生活を、物心がついたころからしている。
生まれながらの聖者なのだ。
平和が欲しい国々は彼の取り合いをし、平和を憎む者たちは彼を殺す策を考え協定して。
彼は生まれたときから自由じゃなかった。巨大すぎる力をもってしまったという点では、蒼刻一と同じで、蒼刻一は彼が生まれたときから、彼に定期的に会いに行っていた。
そして彼から星座を教えて貰う。プラネタリウムは聖霊を迫害させた原因となったのであまり好まなかったが、彼の作ろうとしていた道具はとても魅力的だった――。
いつしか、彼と蒼刻一は仲良くなった。
仲良くなったのに、彼の落とした水晶が映し出すのは、青色一人――。
「先生……こうするしか、なかったんだ」
青色が――泣いているよ。
一人きりの青色を励まして。
一人きりの青色を誰か、助けてあげて――。
偽夜空の者たちよ、青色を慰めて――。
青色の願いを叶えてあげよう?
糸遊にばかり、かまけてないで。青色は本当の孤独しか知らないから、彼の願いを叶えて、孤独を癒して。
何、他愛のない願いだから。月を、作るだけだから。
さぁ現代で青色が本を開き、そこに描かれている裁判官に妖術を。
「僕の夢じゃなく、絵本の世界でカゲロウと会っておいで。たっぷり――傷つけておいで」
絵本を使えば、全てが雪のように淡いものとなるから。
「蒼、いいな。明日黒玉が出来上がるから、それが出来たら去るんだ。もうすぐ破滅の時期なんだ」
「……――嫌だ、アザワ。せんせぇ。あんたも逃げるんだ」
「僕は出来ない。僕はまだ世界中を回らなければならない……蒼、苦しいな。歩かされるのは」
「……明日、攫うから。世界から攫いに、来るから」
「蒼! ……帰ったか」
さぁ、絵本を開いて。そこには綺麗な色を散りばめられた絵が描かれているよ。
そこに書かれている物語は何かな?
「あ、ああ……」
そこに書かれている物語は何かな?
「あああ……」
そこに書かれている物語は……占い師にも予測出来ない。
「蒼、蒼!」
「来たぞーせんせ。……! どうしたんだ、センセェ!」
「蒼、こっちに来ちゃいけないぞ――こっちは、来ちゃいけない!」
「先生ッ先生ッ!」
「来ないでくれ、頼む――……見てはいけない世界が、広がって居るんだ」
そこに描かれている物語は、生首の物語。
「……先生、殺しちゃったのか? その人」
「……――分からない。分からないから、怖いんだ。咄嗟に、突き飛ばしてしまった。蒼、僕は、僕はどうすればいい? 僕、嗚呼、自警団に自首してくる……」
「駄目だっ、先生、プラネタリウムがあと少しで完成出来るんだろ!? 自警団なんかにいったら、今の時代じゃ、死刑じゃねぇか! テロリストの思うつぼだ!」
「蒼、仕方がない――」
最後まで言わせなかった、青色の物語。
綺麗な色が散りばめられているよ。
綺麗な絵本の中に、人が閉じこめられているよ。
絵本の中で、裁判官が有罪と言い続けているよ。
それは純粋な占い師の願いに、答えるため。
プラネタリウム自体、その人を思って作られたものなのだから。
何一つ自由に出来ない、ならない彼を、唯一自由にさせるものとして。
自由に接することが出来るものとして。だが、それは叶わなかった。
運命か、宿命か、どちらかがそうさせた。
偶然でこんなに、占い師にとって最悪な出来事に進むわけがない。
彼の生まれながらの、人生への力弱さから出来た、結果。
彼は占い師――星を見て占い、水晶を頼りに先を見て、世の中に平和をもたらす、「渡り鳥」。
渡り鳥のように、定住をせず世界中を歩き回り、彼は政権を握る者たちに平和がどうすればくるのかを教える生活を、物心がついたころからしている。
生まれながらの聖者なのだ。
平和が欲しい国々は彼の取り合いをし、平和を憎む者たちは彼を殺す策を考え協定して。
彼は生まれたときから自由じゃなかった。巨大すぎる力をもってしまったという点では、蒼刻一と同じで、蒼刻一は彼が生まれたときから、彼に定期的に会いに行っていた。
そして彼から星座を教えて貰う。プラネタリウムは聖霊を迫害させた原因となったのであまり好まなかったが、彼の作ろうとしていた道具はとても魅力的だった――。
いつしか、彼と蒼刻一は仲良くなった。
仲良くなったのに、彼の落とした水晶が映し出すのは、青色一人――。
「先生……こうするしか、なかったんだ」
青色が――泣いているよ。
一人きりの青色を励まして。
一人きりの青色を誰か、助けてあげて――。
偽夜空の者たちよ、青色を慰めて――。
青色の願いを叶えてあげよう?
糸遊にばかり、かまけてないで。青色は本当の孤独しか知らないから、彼の願いを叶えて、孤独を癒して。
何、他愛のない願いだから。月を、作るだけだから。
さぁ現代で青色が本を開き、そこに描かれている裁判官に妖術を。
「僕の夢じゃなく、絵本の世界でカゲロウと会っておいで。たっぷり――傷つけておいで」
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