【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第二部――第六章 警鐘の鐘を鳴らせ

第四十一話 災厄の登場

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 空は晴れていて、時刻は昼にさしかかっていた。
 太陽は人々から見たら真上に上ろうと駆け上がっている所で、その道を補うように雲が時折浮かんでは上空の風の強さにより、流れている。

 平凡な日々。
 平凡でないとするならば、今、プラネタリウムを崇める者たちが集っている広場。

 広場には所々血が流れていて、うめき声や、教祖に助けを求める声が響いていた。
 謎の小さな切り傷による出血多量になりかけて、青ざめている者たちでその場は埋め尽くされ、彼らは昨日のようにプラネタリウムが奇跡を見せて、教祖が自分たちを救ってくれるものだと信じ切っている。
 そしてそれに答えるように教祖は、現れるが……水瓶座の精一杯の水を使ってでも治らないものだった、その傷たちは。
 それに狼狽えた教祖や人々は、戸惑い、集団パニックを起こす。

 するとそこに、柘榴が現れて、集団パニックの中でも静まりかえりそうなほど、酷い流行病と見受けられる外見をしていて、教祖へと歩み寄っていた。
 ぶつぶつと殴られたように腫れた体の節々に、点々と黒縁が出来ていて、熱で目が胡乱だった。
 ぜぃぜぃと息を乱しながら、教祖へ一歩、一歩と歩み寄っていた。
 
 教祖からしてみれば彼はもうとっくに死んでいていい筈の時期の人間だった。
 此処に来たのは何か恨み言でも言いに来たのだろうか、と恐れて、慌てて獅子座を呼んだ。
 獅子座は柘榴の姿を見るなり駆け寄りたくなるが、何処かからか漂ってきた主の匂いに気づき、これはもしかして何か起きる前触れかと、獅子座は興奮しかけた。
 このままでは嬉しさを隠せないかも知れないと思ったときには、鷲座が呼ばれていて、鷲座は柘榴の姿を見ると、微笑んだ。それは、上等の笑みで。

「水をお求めか?」

 恐らく彼が望むであろう言葉を心弾ませながら、押し隠し、厳しい声で問うてみる。
 柘榴は表情すらも伺えないほど酷い外見でこくりと頷く。それを見るなり、鷲座は教祖へアドバイスをする。

「彼に水を。今、水の効力を疑われています。病は水で全て治る訳ではないのですが、少なくとも少しは抑えることにはなるかもしれない、彼の場合は」

 そんなことはないというのは、教祖が一番知っている。
 何せ柘榴の流行病は、胡蝶の呪いなのだから、胡蝶がどうにかしなければ治るはずはない。その胡蝶のタイミングと水のタイミングに合わせて今まで、呪いを治してきたのだ。
 だが、鷲座の目は「この場の収集はそうする以外無い」と言っていて、頼りになるはずの胡蝶が行方不明で不安な教祖はこくりと頷き、彼に水を与えさせる。
 柘榴は水を飲もうとした瞬間、柘榴は何者かに手を叩かれて手の中の水を零され、とうとう口には含めなかった。
 それに怒ろうとする刹那、その者が声を荒げて柘榴に厳しく言葉を叩き付ける。
 
「万能のものなどあり得ない! 水に頼るな、水は痛み虫を消してしまう!」
「うるさいなぁ! 何を言うんだよ、だって痛み虫は治してはくれなかったじゃないか! この流行病で傷み虫を覚えた奴はいないんだよ!」
「今、皆回復してきてる、流行病の者たちは。どうしてだと思う?」
 
 声の主は、深く被っていたフードを取り払い、顔を現す。
 それは、その場にいた獅子座、鷲座が誰よりも誰よりも見たくて会いたくて思っていた人物。
 思わず名を叫びたくなった。鷲座は特に。


(――嗚呼、嗚呼! 漸く、漸くこの狂騒から解放され、貴方とまた話せるのか……! あなた方と、大好きなあなた方と笑いあえるのか……!)
 
「悪魔……!」
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