98 / 358
第二部――第六章 警鐘の鐘を鳴らせ
第四十一話 災厄の登場
しおりを挟む空は晴れていて、時刻は昼にさしかかっていた。
太陽は人々から見たら真上に上ろうと駆け上がっている所で、その道を補うように雲が時折浮かんでは上空の風の強さにより、流れている。
平凡な日々。
平凡でないとするならば、今、プラネタリウムを崇める者たちが集っている広場。
広場には所々血が流れていて、うめき声や、教祖に助けを求める声が響いていた。
謎の小さな切り傷による出血多量になりかけて、青ざめている者たちでその場は埋め尽くされ、彼らは昨日のようにプラネタリウムが奇跡を見せて、教祖が自分たちを救ってくれるものだと信じ切っている。
そしてそれに答えるように教祖は、現れるが……水瓶座の精一杯の水を使ってでも治らないものだった、その傷たちは。
それに狼狽えた教祖や人々は、戸惑い、集団パニックを起こす。
するとそこに、柘榴が現れて、集団パニックの中でも静まりかえりそうなほど、酷い流行病と見受けられる外見をしていて、教祖へと歩み寄っていた。
ぶつぶつと殴られたように腫れた体の節々に、点々と黒縁が出来ていて、熱で目が胡乱だった。
ぜぃぜぃと息を乱しながら、教祖へ一歩、一歩と歩み寄っていた。
教祖からしてみれば彼はもうとっくに死んでいていい筈の時期の人間だった。
此処に来たのは何か恨み言でも言いに来たのだろうか、と恐れて、慌てて獅子座を呼んだ。
獅子座は柘榴の姿を見るなり駆け寄りたくなるが、何処かからか漂ってきた主の匂いに気づき、これはもしかして何か起きる前触れかと、獅子座は興奮しかけた。
このままでは嬉しさを隠せないかも知れないと思ったときには、鷲座が呼ばれていて、鷲座は柘榴の姿を見ると、微笑んだ。それは、上等の笑みで。
「水をお求めか?」
恐らく彼が望むであろう言葉を心弾ませながら、押し隠し、厳しい声で問うてみる。
柘榴は表情すらも伺えないほど酷い外見でこくりと頷く。それを見るなり、鷲座は教祖へアドバイスをする。
「彼に水を。今、水の効力を疑われています。病は水で全て治る訳ではないのですが、少なくとも少しは抑えることにはなるかもしれない、彼の場合は」
そんなことはないというのは、教祖が一番知っている。
何せ柘榴の流行病は、胡蝶の呪いなのだから、胡蝶がどうにかしなければ治るはずはない。その胡蝶のタイミングと水のタイミングに合わせて今まで、呪いを治してきたのだ。
だが、鷲座の目は「この場の収集はそうする以外無い」と言っていて、頼りになるはずの胡蝶が行方不明で不安な教祖はこくりと頷き、彼に水を与えさせる。
柘榴は水を飲もうとした瞬間、柘榴は何者かに手を叩かれて手の中の水を零され、とうとう口には含めなかった。
それに怒ろうとする刹那、その者が声を荒げて柘榴に厳しく言葉を叩き付ける。
「万能のものなどあり得ない! 水に頼るな、水は痛み虫を消してしまう!」
「うるさいなぁ! 何を言うんだよ、だって痛み虫は治してはくれなかったじゃないか! この流行病で傷み虫を覚えた奴はいないんだよ!」
「今、皆回復してきてる、流行病の者たちは。どうしてだと思う?」
声の主は、深く被っていたフードを取り払い、顔を現す。
それは、その場にいた獅子座、鷲座が誰よりも誰よりも見たくて会いたくて思っていた人物。
思わず名を叫びたくなった。鷲座は特に。
(――嗚呼、嗚呼! 漸く、漸くこの狂騒から解放され、貴方とまた話せるのか……! あなた方と、大好きなあなた方と笑いあえるのか……!)
「悪魔……!」
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─
藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。
そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!?
あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが…
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊
喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者
ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』
ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
Rシーンは※をつけときます。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる