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第二部――第四章 兄の賢さ、弟の弱さ
第三十話 兄の懺悔
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妖仔と呼んだ。プラネタリウムは妖術の道具だから、何々の妖仔と昔はそれが本来の星座達への呼び名だった。だがいつしか、人々は面倒になったのか星座の名称だけで呼ぶようになり、それが定着した。
妖術にも、妖術で出来た者にも敬意を持っている証拠の呼び名だ。そうでなくば、そんな呼び方はしない。正式名称で星座を呼ぶことは、――かなり高度で妖術オタク。簡略化した数式を陽炎に教えたであろう人物だとすぐに判った鴉座は、はいおります、と人間嫌いをそのまま声に現したまま、返事だけは礼儀正しく返した。
その様子に声の主は何も反応せず、優しい音で言葉を発する。彼が口にするだけでどんな問題も簡単に理解できてしまう、そんな印象の耳というより脳に入りやすい。
「毒を陽炎君は吸ったのか?」
「毒の痛み虫を手に入れるそうですよ。これは胡蝶の仕業でしょう?」
「そう、パピヨンが仕掛けた。ただ、――君が思っている理由と違うと思う。パピヨンは昔から短気でね、漸く欲しい物が近い相手に「接触」出来そうだったのに、中々姿を見せないから樹に蜜を塗ったんだよ」
その言葉ですぐに理解出来るのは、揶揄をいつも陽炎にしているから、言葉遊びが好きだからだろう。
言葉遊びが好きではないと、真意に気づけない。
真意に気づいたところで益々敵意を声に現す鴉座。
「つまり、胡蝶は陽炎様を欲しがったり、ああいうのに手を貸したのは、全て貴方を招くため? 星座も果物も撒き餌、呪いも撒き餌、加えて一番近いと彼が判断した陽炎様は上等の餌ですか? 青いカードは貴方でしょう」
「青いカード? それは違うけれど。……遠慮がないね、君は。でも、まぁそうなる。パピヨンとは因縁があってね――プラネタリウムの話を聞けば妖術オタクのオレが此処へ来ないわけがない、と思ったんだろう。事前にオレへのプレゼント、人々が流行病と思っている呪いを用意して」
「諸悪の根源、おめでとうございます、同類ですね。吐き気がします、もう貴方の手は借りたくない、消える前に答えろ。誰だ、お前は。陽炎様に近い? そんな人間、劉桜ぐらいだろう?」
鋭さの消えない、否、益々鋭くなっている鴉座の声に、妖術使いは笑った気配がした。
馬鹿にしてる訳じゃない、何だか自嘲気味に聞こえる笑いだった。
「本当に、陽炎君に関すると鴉の妖仔は変わるんだね? 妖仔が此処まで感情を押し隠しながら、必死に陽炎君を守ろうとするなんて――。妖術によって作り出された愛属性だけとは思えない。興味深いよ」
「どうでもいい、答えろ。誰だ?」
「……オレは、……プラネタリウムへの敬意を払った名がいいか? それとも本名? でも名前だけ言っても、オレが誰だか判る?」
「……――名前ではない、存在を問うている。それをお前も判っているはずだ、遊びたい訳じゃないんだ、こっちは」
すると、相手は参りました、と声にしてから、存在を口にする。
第一王妃の息子であり、陽炎の義兄で、彼の母国の次期国王だと。
――鴉座は、その言葉に、怪訝そうに眉をしかめて、扉越しにいる相手を睨み付ける。
「第一皇子? 第一皇子が何故妖術なんて? 胡蝶が何故、あんな大国の皇子の存在を知っている?」
「――妖術は趣味。妖術師には二種類居てね、職業のため学ぶ物、それからただのオタクっていうのがある。で、オレはオタクの方。学び過ぎちゃった。まぁプラネタリウムを作れるまではいかないでも、途中までの数式は分かった。君たちの存在出来る数式も半分、解けている」
「……脅しか? 私を消すという。それとも全員?」
鴉座はふふっと上品に笑う。それはそれはとても穏和な顔で。
消すとは、或る意味有難い。こんな状況逃れられるし、果物も陽炎もこの男が治すだろう。
全て、終えることが出来る。苦しんだということも、陽炎を思ったということも全て存在がなかったことになる。
その言葉と声の響きに、相手は驚いた様子で、少しの間があってから返事を返してきた。
声の調子は相手は変わらず穏やかだ。
「――消しはしないよ、別に君がしたことについて怒っているわけではない。オレは妖術オタクだからね、寧ろそこまで暴走させられた我が弟に敬愛を示し、そこまで弟を思うことが出来た、蟹の妖仔と、水瓶の妖仔に驚いて居るんだ。それに――君は、最後には手放したそうじゃないか」
「ええ、手放しました。耐えられなかったんです、私を映してはくれなかった瞳が、酷いことをした後に漸く映してくれて。汚い自分を誰だって見せたくはない。さて、昔話はどうでもいい。貴方が心からそう思っているのか、それとも気遣ってかは知りませんがね、貴方の話の続きをどうぞ、私は過去の者だ」
声の主は鴉座の言葉に、くすりと笑った。その笑い声は確かに聞こえた。
だが鴉座が文句を言う前に、彼の要求通り、言葉にする。
「で、学び過ぎちゃって偶に妖術師の集会に行ったり、頼られるようになって、城でも割と有名になっちゃっていて。その頃に、うちの城専用妖術師が新人で入ってきた。今思うと可哀想なことをしちゃったな。城でも世界でも一番簡略された数式を、その子は産み出した。だけど、親父――陛下――の前で、オレはそれよりももっと簡略化された数式にしちゃったんだ。嗚呼、ここはこうした方が早いし、判りやすいよって。別に有名になりたいわけでもないし、妖術師になりたいわけじゃなくて、ただ単に妖術の間違いを正したかっただけ。オレは、王位を継ぐ、陽炎君じゃ権利も経験もないからね。だから、ただのオタク心で口を出したら――……パピヨンってば、それ以来オレにまとわりつくようになっちゃって」
――鴉座は彼が語る内に薄々気づいていたが、その新人が胡蝶なのか、と改めて確認をすると、主人の義兄は肯定した。
主人の義兄はため息をつきながら、気怠そうに語るが、それでも声が優しい響きじゃなくなることはなかった。決して荒ぶる事はない、下流の河を見ているようだった。
「パピヨンはオレに近づこうとしたから、一度面倒だなーって相手してやったんだけどそしたら益々近づいて来ちゃって。バイだって教えなきゃ良かったなー。んで、彼に罠を仕掛けて彼に姿が変わる呪いをかけてやった。勿論、オレ以外には解けないような。そして丁度その頃、城での任期はもう終えていたわけだから、追い出されて、皇子であるオレとはもう会えなくなったわけ」
「本当に諸悪の根源はお前だな。最低なことをしているな、益々同類だ」
「ゴメンナサイ。だけどさ、自分の方が遙かに正確に誰もが判りやすくて簡略されてる数式を思いついたら、黙ったままでいられる? それもレベルが高くて、どんな偉人でも解けなかったような――オレ、皇子じゃなきゃ妖術師に絶対なってたと思う。それも伝説の蒼刻一(そうこくいつ)を上回るだろう妖術師に!」
「続きを」
「……中々冷たい妖仔だね、陽炎君以外には。まぁうん、それでね、パピヨンは追い出された後、あのインチキ商法と出会って――宗教なんて呼ばれるのも迷惑だろうね、宗教家達には。もっと純粋なものもあるのにね――、それで手を組んだわけ。プラネタリウムを持っているのは、気軽に会えるオレの弟。だから、陽炎君に何かあれば、オレが現れて助ける。あのねーちゃんの方は、プラネタリウムで美味しい商売をしたいだけ。利害は一致。だけど、パピヨンはオレが中々現れないし、その上オレが妖術を偽物プラネタリウムにかけた証拠がないから陽炎君にも言えない。んでまぁすこーし、あてつけに陽炎君に迫ろうとしたら、君があることないこと言うから。ちょっと意外。上品な言い回しで下品な話をするんだね、君たちは。同じ顔をしてるだけに、面白かった」
感想まで混じっているが、つまりは最初から最後まで見ていたかのような言いぐさに、鴉座は少し、仮にも陽炎の兄に会話を聞かれていたかと思うと、今すぐ土下座したくなったが、そんな意志は見せない。
だが彼は別に特別怒った様子もなく、嘘だと判ってるから、と付け足して、話を続ける。
つまりは嘘じゃなかったら、怒っていたのだろうか。
「それで、もうあれだよ、逆恨み。君が陽炎君を愛するように、オレから愛されたいのにオレは陽炎君を確定出来ないように巧みに手助けしちゃうから、毒でも喰らって死ね! 高等な妖術など誰がお前に使ってやるかーってことで、その毒をしかけた、のだと思う」
「……本名を聞いて良いか? それとも我が愛しの君の兄だから敬語を使われた方が宜しくて?」
「君が喋りやすい口調でいいよ。自然体の妖仔を見たり聞いたりするのが、オタクとしては嬉しいわけ。名前は黒雪(くろゆき)。あの陽炎君の友達は、聡いから教えてあげた。妖仔じゃないけど、聡さに敬意を示して――」
「……白雪姫と七人の小人でももじって居るんですか? この扉越しから感じられる妖術の具現化、六つの気配は。――昼間を足すと七つですね……ッ?」
そう鴉座が言うなり扉をあけると、そこには黒雪がいて、サングラスを夜中だというのにしている。
サングラス越しの目を見ようとは思えない。だが、静かなのに何処か強い気迫を感じて、世界で有名になるほどの腕前というのは、この場では疑いようもない程の迫力。
ただ相手は穏やかな表情をしているのに、それだけでも何か圧迫されるものを感じる。
相手は髪の毛の根本が金に近い茶で、妖術を使っている証に髪の毛が妖術に反応して毛先から紫色へと変化している。じきに根本も紫へと変わるだろう。
その妖術というのは彼の足下にいる、大きさは違えども昼間のような黒い小人が六人。やはり朧気な輪郭で彼を守るように足下でうろちょろとしていて、まるで赤子が歩いてるようだった。
扉をいきなり開けても動揺をしない男が気に入らなくて、鴉座はサングラスを奪い取る。
妖術にも、妖術で出来た者にも敬意を持っている証拠の呼び名だ。そうでなくば、そんな呼び方はしない。正式名称で星座を呼ぶことは、――かなり高度で妖術オタク。簡略化した数式を陽炎に教えたであろう人物だとすぐに判った鴉座は、はいおります、と人間嫌いをそのまま声に現したまま、返事だけは礼儀正しく返した。
その様子に声の主は何も反応せず、優しい音で言葉を発する。彼が口にするだけでどんな問題も簡単に理解できてしまう、そんな印象の耳というより脳に入りやすい。
「毒を陽炎君は吸ったのか?」
「毒の痛み虫を手に入れるそうですよ。これは胡蝶の仕業でしょう?」
「そう、パピヨンが仕掛けた。ただ、――君が思っている理由と違うと思う。パピヨンは昔から短気でね、漸く欲しい物が近い相手に「接触」出来そうだったのに、中々姿を見せないから樹に蜜を塗ったんだよ」
その言葉ですぐに理解出来るのは、揶揄をいつも陽炎にしているから、言葉遊びが好きだからだろう。
言葉遊びが好きではないと、真意に気づけない。
真意に気づいたところで益々敵意を声に現す鴉座。
「つまり、胡蝶は陽炎様を欲しがったり、ああいうのに手を貸したのは、全て貴方を招くため? 星座も果物も撒き餌、呪いも撒き餌、加えて一番近いと彼が判断した陽炎様は上等の餌ですか? 青いカードは貴方でしょう」
「青いカード? それは違うけれど。……遠慮がないね、君は。でも、まぁそうなる。パピヨンとは因縁があってね――プラネタリウムの話を聞けば妖術オタクのオレが此処へ来ないわけがない、と思ったんだろう。事前にオレへのプレゼント、人々が流行病と思っている呪いを用意して」
「諸悪の根源、おめでとうございます、同類ですね。吐き気がします、もう貴方の手は借りたくない、消える前に答えろ。誰だ、お前は。陽炎様に近い? そんな人間、劉桜ぐらいだろう?」
鋭さの消えない、否、益々鋭くなっている鴉座の声に、妖術使いは笑った気配がした。
馬鹿にしてる訳じゃない、何だか自嘲気味に聞こえる笑いだった。
「本当に、陽炎君に関すると鴉の妖仔は変わるんだね? 妖仔が此処まで感情を押し隠しながら、必死に陽炎君を守ろうとするなんて――。妖術によって作り出された愛属性だけとは思えない。興味深いよ」
「どうでもいい、答えろ。誰だ?」
「……オレは、……プラネタリウムへの敬意を払った名がいいか? それとも本名? でも名前だけ言っても、オレが誰だか判る?」
「……――名前ではない、存在を問うている。それをお前も判っているはずだ、遊びたい訳じゃないんだ、こっちは」
すると、相手は参りました、と声にしてから、存在を口にする。
第一王妃の息子であり、陽炎の義兄で、彼の母国の次期国王だと。
――鴉座は、その言葉に、怪訝そうに眉をしかめて、扉越しにいる相手を睨み付ける。
「第一皇子? 第一皇子が何故妖術なんて? 胡蝶が何故、あんな大国の皇子の存在を知っている?」
「――妖術は趣味。妖術師には二種類居てね、職業のため学ぶ物、それからただのオタクっていうのがある。で、オレはオタクの方。学び過ぎちゃった。まぁプラネタリウムを作れるまではいかないでも、途中までの数式は分かった。君たちの存在出来る数式も半分、解けている」
「……脅しか? 私を消すという。それとも全員?」
鴉座はふふっと上品に笑う。それはそれはとても穏和な顔で。
消すとは、或る意味有難い。こんな状況逃れられるし、果物も陽炎もこの男が治すだろう。
全て、終えることが出来る。苦しんだということも、陽炎を思ったということも全て存在がなかったことになる。
その言葉と声の響きに、相手は驚いた様子で、少しの間があってから返事を返してきた。
声の調子は相手は変わらず穏やかだ。
「――消しはしないよ、別に君がしたことについて怒っているわけではない。オレは妖術オタクだからね、寧ろそこまで暴走させられた我が弟に敬愛を示し、そこまで弟を思うことが出来た、蟹の妖仔と、水瓶の妖仔に驚いて居るんだ。それに――君は、最後には手放したそうじゃないか」
「ええ、手放しました。耐えられなかったんです、私を映してはくれなかった瞳が、酷いことをした後に漸く映してくれて。汚い自分を誰だって見せたくはない。さて、昔話はどうでもいい。貴方が心からそう思っているのか、それとも気遣ってかは知りませんがね、貴方の話の続きをどうぞ、私は過去の者だ」
声の主は鴉座の言葉に、くすりと笑った。その笑い声は確かに聞こえた。
だが鴉座が文句を言う前に、彼の要求通り、言葉にする。
「で、学び過ぎちゃって偶に妖術師の集会に行ったり、頼られるようになって、城でも割と有名になっちゃっていて。その頃に、うちの城専用妖術師が新人で入ってきた。今思うと可哀想なことをしちゃったな。城でも世界でも一番簡略された数式を、その子は産み出した。だけど、親父――陛下――の前で、オレはそれよりももっと簡略化された数式にしちゃったんだ。嗚呼、ここはこうした方が早いし、判りやすいよって。別に有名になりたいわけでもないし、妖術師になりたいわけじゃなくて、ただ単に妖術の間違いを正したかっただけ。オレは、王位を継ぐ、陽炎君じゃ権利も経験もないからね。だから、ただのオタク心で口を出したら――……パピヨンってば、それ以来オレにまとわりつくようになっちゃって」
――鴉座は彼が語る内に薄々気づいていたが、その新人が胡蝶なのか、と改めて確認をすると、主人の義兄は肯定した。
主人の義兄はため息をつきながら、気怠そうに語るが、それでも声が優しい響きじゃなくなることはなかった。決して荒ぶる事はない、下流の河を見ているようだった。
「パピヨンはオレに近づこうとしたから、一度面倒だなーって相手してやったんだけどそしたら益々近づいて来ちゃって。バイだって教えなきゃ良かったなー。んで、彼に罠を仕掛けて彼に姿が変わる呪いをかけてやった。勿論、オレ以外には解けないような。そして丁度その頃、城での任期はもう終えていたわけだから、追い出されて、皇子であるオレとはもう会えなくなったわけ」
「本当に諸悪の根源はお前だな。最低なことをしているな、益々同類だ」
「ゴメンナサイ。だけどさ、自分の方が遙かに正確に誰もが判りやすくて簡略されてる数式を思いついたら、黙ったままでいられる? それもレベルが高くて、どんな偉人でも解けなかったような――オレ、皇子じゃなきゃ妖術師に絶対なってたと思う。それも伝説の蒼刻一(そうこくいつ)を上回るだろう妖術師に!」
「続きを」
「……中々冷たい妖仔だね、陽炎君以外には。まぁうん、それでね、パピヨンは追い出された後、あのインチキ商法と出会って――宗教なんて呼ばれるのも迷惑だろうね、宗教家達には。もっと純粋なものもあるのにね――、それで手を組んだわけ。プラネタリウムを持っているのは、気軽に会えるオレの弟。だから、陽炎君に何かあれば、オレが現れて助ける。あのねーちゃんの方は、プラネタリウムで美味しい商売をしたいだけ。利害は一致。だけど、パピヨンはオレが中々現れないし、その上オレが妖術を偽物プラネタリウムにかけた証拠がないから陽炎君にも言えない。んでまぁすこーし、あてつけに陽炎君に迫ろうとしたら、君があることないこと言うから。ちょっと意外。上品な言い回しで下品な話をするんだね、君たちは。同じ顔をしてるだけに、面白かった」
感想まで混じっているが、つまりは最初から最後まで見ていたかのような言いぐさに、鴉座は少し、仮にも陽炎の兄に会話を聞かれていたかと思うと、今すぐ土下座したくなったが、そんな意志は見せない。
だが彼は別に特別怒った様子もなく、嘘だと判ってるから、と付け足して、話を続ける。
つまりは嘘じゃなかったら、怒っていたのだろうか。
「それで、もうあれだよ、逆恨み。君が陽炎君を愛するように、オレから愛されたいのにオレは陽炎君を確定出来ないように巧みに手助けしちゃうから、毒でも喰らって死ね! 高等な妖術など誰がお前に使ってやるかーってことで、その毒をしかけた、のだと思う」
「……本名を聞いて良いか? それとも我が愛しの君の兄だから敬語を使われた方が宜しくて?」
「君が喋りやすい口調でいいよ。自然体の妖仔を見たり聞いたりするのが、オタクとしては嬉しいわけ。名前は黒雪(くろゆき)。あの陽炎君の友達は、聡いから教えてあげた。妖仔じゃないけど、聡さに敬意を示して――」
「……白雪姫と七人の小人でももじって居るんですか? この扉越しから感じられる妖術の具現化、六つの気配は。――昼間を足すと七つですね……ッ?」
そう鴉座が言うなり扉をあけると、そこには黒雪がいて、サングラスを夜中だというのにしている。
サングラス越しの目を見ようとは思えない。だが、静かなのに何処か強い気迫を感じて、世界で有名になるほどの腕前というのは、この場では疑いようもない程の迫力。
ただ相手は穏やかな表情をしているのに、それだけでも何か圧迫されるものを感じる。
相手は髪の毛の根本が金に近い茶で、妖術を使っている証に髪の毛が妖術に反応して毛先から紫色へと変化している。じきに根本も紫へと変わるだろう。
その妖術というのは彼の足下にいる、大きさは違えども昼間のような黒い小人が六人。やはり朧気な輪郭で彼を守るように足下でうろちょろとしていて、まるで赤子が歩いてるようだった。
扉をいきなり開けても動揺をしない男が気に入らなくて、鴉座はサングラスを奪い取る。
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