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第二部――第二章 復活の黒き片翼
第十八話 ただ、友達でありたいはずなのに
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「冗談やめ……」
一瞬だけ、この場の空気が穏やかにされど鴉座が最後に己に告白した時と同じ柔らかな暖かみを持っていた。
柘榴の眼差しは、冗談なのか本気なのか一瞬判らず、否定の言葉を止めてしまった。
(――冗談でも本気でも、否定しなきゃいけないのに、何故口は動かない……?)
そう、冗談でも本気でも否定の言葉を己は言わなければならない。
なぜなら自分はノンケ、それは激しく主張したいところだ、特に愛属性の星座の男連中に。
そして他の星座がこうした言葉を言ったとしても、己は即座にお断りの意志を示していたのに、何故か今、否定の言葉を紡げなくて。
――それは、柘榴が好き、とかそういう意味ではなくて、ただもし彼が本気だとしたらそこで否定してしまったら彼は、この件が終わったらもう二度と自分の前から姿を現さないんじゃないか、と思ったからだ。
――浅ましい己のエゴだ。
相手が友情じゃなくても、己は友情にしたい。そして側にずっと居て貰いたいから、否定をしないなんて。
そんな陽炎の心境を見抜いたように、柘榴はため息をついて、陽炎の頬をぺちぺちと叩く。
「――なんて、おいらがあんたにそんな馬鹿げたこと本気で言うわけ無いデショ。おいらだって、ノンケだよ」
柘榴は微笑んでいる、微笑んでいるが――彼は、笑顔が上手いから、本当にそれは冗句だったとして受け取って良いか、陽炎は迷う。
言葉を無くす陽炎に、柘榴は、苦笑を浮かべて、今度はデコピンを力なくしてやった。
「大丈夫、おいらだけは何があっても友達だから――。あんたが考えてるようなことはないない! おいらだって、可愛い奥さん欲しいもんねー」
「……魚座でいいじゃん」
そこで漸く軽口が叩けてたところで、柘榴は、魚座という単語にむすっとして、やれやれと首を振ってベッドに寝てしまう。
「魚座の女王は、駄目だ。あんた、あの人が可哀想になるとこと、おいらがサドになるところ見たいわけ? 星座相手にはおいらは、サドになっちまう自信がある。愛、の場合ね?」
それはプラネタリウムを憎んでいるからだと判っているが、それでも陽炎は魚座を応援したい心があった。
魚座は純粋に柘榴を好きだと、己は信じているからだ。
その応援態勢を知っているからこそ、柘榴はよけいに避けてしまう。
だから今も逃げるため、そして肝心なことを話すため、手紙を示す。
「それで、星座、あんたは作らなきゃと思う?」
「わかんねぇ。もしかしたら、胡蝶が変に気に入ってるからどうなるかわかんねぇし」
「ケツが狙われてるんだよ? また拉致監禁やられるかもよ?」
「誰が何の痛み虫持ってるか、調べてみる」
変わり身の早さに、本当に男色の気はないのだなぁと柘榴は苦笑する。
「かげ君、妖術師は何か目的があってからでないと動かないからね、覚えておきなよ」
去っていこうとする陽炎へそう言葉をかけた。
徐々に熱が戻ってくる。気怠さも、頭痛も、口の中の生臭さも。
(かげ君、――それじゃ、星座の誰一人報われないなぁ? 報われて欲しいのはわんこぐらいだけど、でも外見に問題有りだしねぇ? ――……流れとはいえ、変なこと言っちゃったな)
柘榴は思案し、それじゃあと出て行く陽炎に手をひらひらと振りながら、その去っていく背を、無感情に映す。
(――……おいらはただの悪友だし、そうでありたい。でないと、誰かが傷つく。おいらだって、そんな関係、本気で求めてる訳じゃない。――うん、そうだ。求めるわけ、ないんだ。それに誰に対しても、愛なんて言葉使っちゃいけないんだから。遠い昔から皆と己に言い聞かせていた言葉を、今更言い聞かせるなんてね――)
過保護すぎた情は、何処へ彷徨うのだろう。熱に再び魘される時を取り戻しながら、柘榴は熱の所為で低いながらも弱い声で呟く。
「何で、あんなこと、言ったんだろ――? ただの、友達、なのに……。おいらは、そんな事にはなりたくないのに……」
“望んでないならどーして口にしちまったんだ、ホーリーゴースト――?”
何処かで聞き覚えのある憎い声がしたが、聞こえないふりをした。
こいつにだけは、絶対答えてやらない――。
一瞬だけ、この場の空気が穏やかにされど鴉座が最後に己に告白した時と同じ柔らかな暖かみを持っていた。
柘榴の眼差しは、冗談なのか本気なのか一瞬判らず、否定の言葉を止めてしまった。
(――冗談でも本気でも、否定しなきゃいけないのに、何故口は動かない……?)
そう、冗談でも本気でも否定の言葉を己は言わなければならない。
なぜなら自分はノンケ、それは激しく主張したいところだ、特に愛属性の星座の男連中に。
そして他の星座がこうした言葉を言ったとしても、己は即座にお断りの意志を示していたのに、何故か今、否定の言葉を紡げなくて。
――それは、柘榴が好き、とかそういう意味ではなくて、ただもし彼が本気だとしたらそこで否定してしまったら彼は、この件が終わったらもう二度と自分の前から姿を現さないんじゃないか、と思ったからだ。
――浅ましい己のエゴだ。
相手が友情じゃなくても、己は友情にしたい。そして側にずっと居て貰いたいから、否定をしないなんて。
そんな陽炎の心境を見抜いたように、柘榴はため息をついて、陽炎の頬をぺちぺちと叩く。
「――なんて、おいらがあんたにそんな馬鹿げたこと本気で言うわけ無いデショ。おいらだって、ノンケだよ」
柘榴は微笑んでいる、微笑んでいるが――彼は、笑顔が上手いから、本当にそれは冗句だったとして受け取って良いか、陽炎は迷う。
言葉を無くす陽炎に、柘榴は、苦笑を浮かべて、今度はデコピンを力なくしてやった。
「大丈夫、おいらだけは何があっても友達だから――。あんたが考えてるようなことはないない! おいらだって、可愛い奥さん欲しいもんねー」
「……魚座でいいじゃん」
そこで漸く軽口が叩けてたところで、柘榴は、魚座という単語にむすっとして、やれやれと首を振ってベッドに寝てしまう。
「魚座の女王は、駄目だ。あんた、あの人が可哀想になるとこと、おいらがサドになるところ見たいわけ? 星座相手にはおいらは、サドになっちまう自信がある。愛、の場合ね?」
それはプラネタリウムを憎んでいるからだと判っているが、それでも陽炎は魚座を応援したい心があった。
魚座は純粋に柘榴を好きだと、己は信じているからだ。
その応援態勢を知っているからこそ、柘榴はよけいに避けてしまう。
だから今も逃げるため、そして肝心なことを話すため、手紙を示す。
「それで、星座、あんたは作らなきゃと思う?」
「わかんねぇ。もしかしたら、胡蝶が変に気に入ってるからどうなるかわかんねぇし」
「ケツが狙われてるんだよ? また拉致監禁やられるかもよ?」
「誰が何の痛み虫持ってるか、調べてみる」
変わり身の早さに、本当に男色の気はないのだなぁと柘榴は苦笑する。
「かげ君、妖術師は何か目的があってからでないと動かないからね、覚えておきなよ」
去っていこうとする陽炎へそう言葉をかけた。
徐々に熱が戻ってくる。気怠さも、頭痛も、口の中の生臭さも。
(かげ君、――それじゃ、星座の誰一人報われないなぁ? 報われて欲しいのはわんこぐらいだけど、でも外見に問題有りだしねぇ? ――……流れとはいえ、変なこと言っちゃったな)
柘榴は思案し、それじゃあと出て行く陽炎に手をひらひらと振りながら、その去っていく背を、無感情に映す。
(――……おいらはただの悪友だし、そうでありたい。でないと、誰かが傷つく。おいらだって、そんな関係、本気で求めてる訳じゃない。――うん、そうだ。求めるわけ、ないんだ。それに誰に対しても、愛なんて言葉使っちゃいけないんだから。遠い昔から皆と己に言い聞かせていた言葉を、今更言い聞かせるなんてね――)
過保護すぎた情は、何処へ彷徨うのだろう。熱に再び魘される時を取り戻しながら、柘榴は熱の所為で低いながらも弱い声で呟く。
「何で、あんなこと、言ったんだろ――? ただの、友達、なのに……。おいらは、そんな事にはなりたくないのに……」
“望んでないならどーして口にしちまったんだ、ホーリーゴースト――?”
何処かで聞き覚えのある憎い声がしたが、聞こえないふりをした。
こいつにだけは、絶対答えてやらない――。
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