【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第一部――第九章 星座とラストダンス

番外編――太陽が一人きりでいることを決めた時2

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「どうしてそんなことを聞くんだ?!」
「落ち着いて、柘榴。獅子座どのが困惑している。獅子座どのは小生に付き合わされただけだ」
「ざ、柘榴陛下、何でそんな怒るだ? おら達は陛下の部下なんだ。陛下がどんな人だろうと構わないだ。だけど……」
「だけど、何だよ。だけど、おいらが此処にいるのはかげ君には危険だから出て行けってか? 獅子舞、凄いこと言うようになったねぇ?」
「へ、陛下……」
 
 柘榴の剣幕は凄いもので、陽炎が椿に裏切られたと聞いたときくらいの眼差しで睨み付けている。
 ぎろりとしたアイスブルーには、暖かみなんかなくて、何処か暗闇の中の炎を見るような心細さを感じる。
 鷲座は少し言うのを躊躇うように、言葉を選び、なるべく柘榴を刺激しないものを己の脳から見つけ出す。
 
「柘榴。君、本当に落ち着きなさい。君がそんなに怒るのを見るのは、久しぶりで正直小生も困る。だけどね、これだけは確認しなければならないんだ。理由は分かってくれるでしょう?」
「……鷲座。獅子座。確認しなくたって……あんたらは、プラネタリウムから過去の記憶を見れば、判るはずだ。主人の過去を見られる。だから、あんたらと魚座は判る筈なんだ。判った上で、聞いてるんだろう?」
 
 柘榴がこうやって星座を正式に呼ぶときは、真剣か、きれているかのどちらかで。両方なのだと思った陽炎は、水瓶座にこれ以上此処に居て聞いて良いかどうか躊躇いの視線を向ける。
 だが水瓶座は目の前の光景――本棚が崩れていて、その中の数冊がびりびりに裂かれていることに気づき、泣きそうになっていた。
 
「柘榴陛下ぁ、おら、プラネタリウムから情報を盗み見るんじゃなくて、陛下の口からちゃんと聞きたい。おら達、あんたに作られた。だから、あんたのことは主人でもあるんだ」
「――……だからって、言えると思うか? 何年も隠し続けていたことを……原因の一つでもある、“星”を象徴するあんたらにさ」
 
 柘榴はそこで少し瞳から剣呑さを鈍らせ目を細めて頭をかきあげて、顔を俯かせる。
 それから、一瞬泣いてしまったのかと思ったが、違うようで。だけど、泣くような形で両手を使い顔を覆い隠している。
 まるでその姿は、何かと葛藤しているようで、己の中の天使と悪魔と戦っているようで。
 星、と言われて、戸惑う星座の二人の姿が見えたが、柘榴はそれを知ってるように、違う、と何が違うのか判らないが言葉を続けた。
 
「違う。こんなのは八つ当たりだ。判ってる、あんたらは別に、何もしてない。あんたらは、ただの夜空で、それも偽物――判ってる。判ってるけど、あんたらは“あいつ”の作った物で……――ッ!」
「……柘榴。創造主のことはともかく……――柘榴、大丈夫。君の“それ”を知ったところで、劉桜どのも、陽炎どのも君を嫌いになりはしない」
「そうだ! 陛下も、劉桜さんもそんなことしないだ!! 皆だって、きっと……死にガニ以外は」
「……――本当にそうかな。そういう類の言葉を言ってくれた奴は、おいらを恨んだよ。おいらを恨んで、おいらの所為で……あいつが自滅したと思ったよ」
「柘榴。裏切り裏切られることがあると、陽炎どのに教えたのは君でしょう? その人は柘榴という人間を、裏切った。それだけです……――っと、誰だ?!」
 
 水瓶座が水瓶を持ち直したとき、その水音で鷲座はドアに気配を感じ、獅子座が大急ぎで扉をあけ、険しい顔で覗き見していた人物達を見やる。
 と、そこには主人と水瓶座。
 獅子座は目を見開き、少し泣きそうな顔で、背後の二人を振り返る。
 
「……皇子と、水瓶だぁ――……」
 
 そのあげる名前に、びくりと柘榴は反応し、顔を覆い隠していた両手をどけて、ぼんやりと床のカーペットを見つめる。
 今の柘榴には陽炎とまともに話す気力がないと判っているので、陽炎は、ごめん、と謝ってから、自分は何も知らないふりで通すことにした。
 
「ごめん、盗み聞きしちゃった。それで? 獅子座のお仕置きは何にするの?」
「は? え、あの、皇子……?」
「だって、蟹座と喧嘩したからそれで柘榴がうんざりして鷲座と説教していた、そういう話だろ? で、その流れで昔の柘榴の友人と対峙していた時の話が出た。違う?」
 
 陽炎がそう言って、獅子座を押しのけて、二人の前に現れる。
 鷲座は酷く苦い顔をしていて、柘榴は安堵した表情をしていて、陽炎に笑いかけた。
 
「そう、それであってる」
「……陽炎どの、此処で何を?」
 
 柘榴が頷いて返事すると同時に鷲座が首を傾げて、陽炎の持つ本を目に留める。
 つられるように目に留めた柘榴に気づき、鷲座が慌ててその手にある本を隠そうとするが、柘榴はケタケタと笑い、いつもの柘榴に戻っていた。
 
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