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第一部――第六章 朧月を閉じこめたプラネタリウムに、三人の勇者
第三十三話 内部分裂、助けたい者と閉じ込めたい者
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「水瓶座……」
他の者を呼ぶときと違って熱が籠もったような響きで陽炎は呟く。
それが他の二人は気にくわないが、依存させてしまえば、後は水に頼らず此方を振り向かせてしまえばいい話だ、と思っている。
「陽炎様、さぁお水を飲みましょうね」
「水……飲ませて」
「陽炎様は甘え上手ですね? 前は何かというと鴉座に頼っていたのに、今は僕を頼ってくださるのですか? 嬉しいですねえ」
鴉座に勝ったという優越感と、陽炎に頼られているという満足感。この二つでも幸せだが、もう一つそこに「好き」という言葉が聞けたら、水瓶座は最高に幸せだった。
だが、陽炎はどんなになっても、誰にも「好き」とは言わなかった。
水瓶の水を結構飲ませている、今までの主人より何倍も飲ませているのに、その言葉は決して吐かなかった。
それはまだ自我がまだ残ってる証拠。欠片ですら、依存されてない部分が残るのは許せないのでこうして水を与え続けている。
「陽炎様……ッ、お願い、水瓶ちゃん、カァーちゃん、蟹座様、やめて…! 陽炎様、聞こえてますか、私の声……ッ」
水の壁越しに、鳳凰座の姿。ちらりと見やると、蟹座は少し青ざめたまま、鳳凰座に怒鳴る。
「五月蠅い! 黙れ、邪魔をするな! どうせお前には助けることなどできんのだから、黙ってそこにいるがいい! でなくば、失せろ!」
「酷い方だ。愛しき霊鳥は、心優しいのですから、もっと丁重にここからお退きを願わないと」
「カァーちゃん、お願いだから、此処に入らせて……! 陽炎様をいつも、貴方助けてくれていたじゃない。何で今回は、助けてくれないの?!」
鳳凰座の涙声に、鴉座は心痛めるような顔をして、額に手をあてて、嗚呼、と嘆く。
嘆く様子は己の中で、邪な考えと仕える心構えと戦っているようで、少し鳳凰は安心したが、すぐにそれは打ち砕かれる。
――鴉座は世にも残忍な異相を現して、冷たい声で答える。
「一番欲しい者を手に入れたいとき、私は手段も人選も選ばないんですよ。結果論で私は動きますので」
鳳凰座はその言葉に、うっと声を詰まらせて、涙を再びぽろぽろと零して、その場で蹲る。もう何もかもがダメだ、もうあの優しい主人は助からない。悲しみに暮れていたとき――。
「じゃあ結果論で言うと、貴方は陽炎ちゃんを結局は虐めて楽しんでるそこのDVホモ野郎と同じってことね?」
大犬座の声が聞こえた。
先ほどまで泣きながら、このホモ変態三匹豚野郎ーと叫び逃げ出したというのに帰ってきた。
それも泣く様子ももう声からは感じられなかった。
鴉座は、おや、と眉根をあげ、訝しむ。
「これは小さき姫、どうされました? 私をそこの鋏と一緒にしないでくださいません?」
「だって、これはどう見ても、誰が見ても、全員サドDVホモ野郎っていう結論が出るわ、貴方達は禄でもないってことよ! かといって、ホモを差別してるわけじゃないけどね! 貴方達を見下しているだけ! だってこれ、思いっきり犯罪行為よ!」
大犬座がやけに強気だ。言ってる事もちゃんとしていて先ほどまでの、罵倒だけでない。誰か味方でも連れてきたのだろうか、ふと外の様子をうかがってみることにした。
此処は自分の住まいではないので蟹座に頼んで、外の景色を、小屋の中の景色を映すように頼むと、そこには強硬手段で星を作ろうとしている柘榴が見えた。劉桜が柘榴の手元を照らしながら、赤蜘蛛が星座を指さし何かを教えている。
鴉座は歯の奥を噛みしめて、表面上では目を伏せ上品な笑みを作る。
「……蟹座、いってらっしゃい。口論ではただの時間の無駄ですから、力でねじ伏せてやめさせてください」
「命令されるのは嫌だが、お前の考えと今一致したから動いてやる」
そう言うなり、蟹座は消えようとしたが、その時、突風が水の宮を襲い、水の壁を破った!
聞こえるは、獅子の咆吼。蟹座は、くつ、と笑い、指を全て刃物にして、風になって襲ってきた巨体に立ち向かう。
(――嗚呼、ついに、お前か。お前と剣を交えるとは、な。偶然とはいえ、この上なく嬉しい)
蟹座は目を見開き、笑ったまま相手をしかと、目で捉える。
他の者を呼ぶときと違って熱が籠もったような響きで陽炎は呟く。
それが他の二人は気にくわないが、依存させてしまえば、後は水に頼らず此方を振り向かせてしまえばいい話だ、と思っている。
「陽炎様、さぁお水を飲みましょうね」
「水……飲ませて」
「陽炎様は甘え上手ですね? 前は何かというと鴉座に頼っていたのに、今は僕を頼ってくださるのですか? 嬉しいですねえ」
鴉座に勝ったという優越感と、陽炎に頼られているという満足感。この二つでも幸せだが、もう一つそこに「好き」という言葉が聞けたら、水瓶座は最高に幸せだった。
だが、陽炎はどんなになっても、誰にも「好き」とは言わなかった。
水瓶の水を結構飲ませている、今までの主人より何倍も飲ませているのに、その言葉は決して吐かなかった。
それはまだ自我がまだ残ってる証拠。欠片ですら、依存されてない部分が残るのは許せないのでこうして水を与え続けている。
「陽炎様……ッ、お願い、水瓶ちゃん、カァーちゃん、蟹座様、やめて…! 陽炎様、聞こえてますか、私の声……ッ」
水の壁越しに、鳳凰座の姿。ちらりと見やると、蟹座は少し青ざめたまま、鳳凰座に怒鳴る。
「五月蠅い! 黙れ、邪魔をするな! どうせお前には助けることなどできんのだから、黙ってそこにいるがいい! でなくば、失せろ!」
「酷い方だ。愛しき霊鳥は、心優しいのですから、もっと丁重にここからお退きを願わないと」
「カァーちゃん、お願いだから、此処に入らせて……! 陽炎様をいつも、貴方助けてくれていたじゃない。何で今回は、助けてくれないの?!」
鳳凰座の涙声に、鴉座は心痛めるような顔をして、額に手をあてて、嗚呼、と嘆く。
嘆く様子は己の中で、邪な考えと仕える心構えと戦っているようで、少し鳳凰は安心したが、すぐにそれは打ち砕かれる。
――鴉座は世にも残忍な異相を現して、冷たい声で答える。
「一番欲しい者を手に入れたいとき、私は手段も人選も選ばないんですよ。結果論で私は動きますので」
鳳凰座はその言葉に、うっと声を詰まらせて、涙を再びぽろぽろと零して、その場で蹲る。もう何もかもがダメだ、もうあの優しい主人は助からない。悲しみに暮れていたとき――。
「じゃあ結果論で言うと、貴方は陽炎ちゃんを結局は虐めて楽しんでるそこのDVホモ野郎と同じってことね?」
大犬座の声が聞こえた。
先ほどまで泣きながら、このホモ変態三匹豚野郎ーと叫び逃げ出したというのに帰ってきた。
それも泣く様子ももう声からは感じられなかった。
鴉座は、おや、と眉根をあげ、訝しむ。
「これは小さき姫、どうされました? 私をそこの鋏と一緒にしないでくださいません?」
「だって、これはどう見ても、誰が見ても、全員サドDVホモ野郎っていう結論が出るわ、貴方達は禄でもないってことよ! かといって、ホモを差別してるわけじゃないけどね! 貴方達を見下しているだけ! だってこれ、思いっきり犯罪行為よ!」
大犬座がやけに強気だ。言ってる事もちゃんとしていて先ほどまでの、罵倒だけでない。誰か味方でも連れてきたのだろうか、ふと外の様子をうかがってみることにした。
此処は自分の住まいではないので蟹座に頼んで、外の景色を、小屋の中の景色を映すように頼むと、そこには強硬手段で星を作ろうとしている柘榴が見えた。劉桜が柘榴の手元を照らしながら、赤蜘蛛が星座を指さし何かを教えている。
鴉座は歯の奥を噛みしめて、表面上では目を伏せ上品な笑みを作る。
「……蟹座、いってらっしゃい。口論ではただの時間の無駄ですから、力でねじ伏せてやめさせてください」
「命令されるのは嫌だが、お前の考えと今一致したから動いてやる」
そう言うなり、蟹座は消えようとしたが、その時、突風が水の宮を襲い、水の壁を破った!
聞こえるは、獅子の咆吼。蟹座は、くつ、と笑い、指を全て刃物にして、風になって襲ってきた巨体に立ち向かう。
(――嗚呼、ついに、お前か。お前と剣を交えるとは、な。偶然とはいえ、この上なく嬉しい)
蟹座は目を見開き、笑ったまま相手をしかと、目で捉える。
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