31 / 358
第一部――第六章 朧月を閉じこめたプラネタリウムに、三人の勇者
第三十話 柘榴のチート技
しおりを挟む
それから三日が経つ。
陽炎の姿を探そうとしても見つからず、劉桜に聞いても会ってないということで柘榴と劉桜は心配して陽炎を探し回るが、町中では見つからない。
劉桜に住処は知ってるかどうか聞いてみるが、知らないそうで、どうしたものかと悩んで、少し酒でも飲んで元気になってからまた探そう、と最後に三人で飲んだ酒場に来たときだった。
そこには赤蜘蛛が居て、劉桜がうわと呟いて、その呟きで赤蜘蛛が此方を見つけたときだった。
「ざ、柘榴ちゃああん! やっと、やっと見つけたぁああ!」
大犬座が泣く声が聞こえた。
後ろの腰の辺りにどんっと、誰かがぶつかったので、柘榴は後ろを見ると、大犬座がわんわんと泣きながら、顔をぐしゃぐしゃにして柘榴の名と陽炎の名を泣き叫んでいた。
鼻水と涙が盛大に己の服に付いているが、あの勇敢な彼女をここまで泣かせるとは、と其方の方に驚き、一瞬何を言おうか柘榴は迷った。
「かげ、かげ、陽炎ちゃんがぁああ!」
「陽炎どのに何かあったのか!?」
大犬座の泣き声が聞こえたのか赤蜘蛛が此方へやってきた。事前に柘榴は劉桜から赤蜘蛛が陽炎の周囲を探っていると聞いていたので、思わず大犬座を後ろに隠したまま武器を取り出して身構えようとするが、冠座が現れ、攻撃する必要はないことを告げた。
「あの人、陽炎の国の人。陽炎の親の知り合いなんだって。だから、敵じゃないよ」
「嗚呼、いつかの少女。掻い摘んだ説明、有難う。幼女、どうした、陽炎どのに何があった?!」
赤蜘蛛が今にも大犬座を掴みあげてそのままの焦った勢いで問いかけそうだったので、柘榴はそれを制して、まずは大犬座を落ち着かせることが必要だと思い、鼻をかませる。
それからしゃがみこんで、抱き上げて、背中をぽんぽんと叩いてみせる。
「大丈夫、大丈夫。あいつ、案外逞しそうだから、さ。あんたが思ってるより丈夫だから。弱くない弱くない。なぁ、るおー?」
それは状況を知らないし、最近会った者の言葉ではないが、今彼女にはこういう安心させる言葉が必要だ。
劉桜も大犬座に泣かれると弱いのか、そうだあいつは強い、と頷いた。
「何せ、百の痛み虫じゃ。並大抵のことにはめげまい」
「ほら、昔からの知り合いが保証してくれたじゃん? とりあえず、あんたがめげてたら、かげ君にも不安が行き渡ってかげ君が弱っちゃうんじゃないのー?」
「そ、そうよね、あたしが、あたしがしっかりしなきゃ。あたしが唯一、あの人の星座の中でまともな愛属性なんだから」
大犬座は涙を手で拭い、それから視線を元の強い色に戻した。
それに柘榴と劉桜は視線をかち合わせて安堵し、それから真剣な顔に戻り、陽炎のことを問いかける。
大犬座は出来る限り自分を落ち着かせ、時折泣きすぎた所為で声を詰まらせるが、何とか答える。
「あのね、陽炎ちゃんがね、変態ホモ三人衆にプラネタリウムに取り込まれちゃって……あたし、必死で水の宮に入ろうとしたの。ちゃんと鳳凰ちゃんも冠ちゃんも協力してくれたのよ? でもね、でもね、あたし攻撃力とかないし、しかも黄道十二宮の宮だから、入れなくて、ずっと蟹座っちの笑い声しか聞こえなくて……水の壁越しに少し見えたんだけど、陽炎ちゃん吐いては水を飲まされてるみたいで……ずっと吐きながらも、無理矢理飲まされて……」
「……取り込むとは、強硬手段に出たもんだね」
大犬座の言葉を聞くなり、以前水瓶座に魅了されて水に依存していた友人の姿を思い出し、柘榴は間に合わなかったかと舌打ちをした。
脳裏によぎった忌々しい水の威力、――妖術の厄介さ。魅了がかつての友人のように、今現在かかっていなければいい、強く柘榴はそう願う。
「……いつかの少女、プラネタリウムを調べた。……水の宮というのは、十二宮のうち四つに分けられた星座の属性の、住む城のようなものだね?」
赤蜘蛛がそう言うと、冠座はこくんと首を縦に振る。
「陽炎、黄道十二宮は蟹座と水瓶座しか作ってなかったの。だから他に対抗できる強い力がないの」
「……百も痛み虫があれば、出来るんじゃ?」
「陽炎はメジャーに興味ないからっていってるけど、本当は星座の正確な痛み虫がどれを得たらどれを得られるか知らないから、マイナーなのしか知らなかったんだと思う。だから星がばらばらにあるの」
「……ならば、あと星幾つかで……作れる可能性はあるわけだね? 教えてくれた方が、百も痛み虫があるのならば、今の星座の人数は少ない方だと仰っていた」
「赤蜘蛛? ……嗚呼、そうか。プラネタリウムに穴あけりゃいいのか」
それは星座の二人から聞けば、天と地がひっくり返るような強硬手段で、目を丸く見開いた。
危ないし、逆に変なのが作られて仕組みが変わるかも知れないと大犬座は必死に訴えるが、柘榴は大丈夫、と苦笑した。
「魚座は作られてないんでしょ? おいらね、魚座を前に反則技で友達に頼まれて作ったこと、あるんだよねぇ? そんでもって……赤蜘蛛、あんたは星座に詳しそうだし……それに寝床も保証してくれる?」
「それは勿論! 御祓に頼んでみる!」
「げ! おいらの雇い主の親じゃん! おいらを処分しないように、ついでに頼んでおいて……」
三人は苦笑してから、大犬座に頼み、陽炎の塒へと招かれる。
陽炎の姿を探そうとしても見つからず、劉桜に聞いても会ってないということで柘榴と劉桜は心配して陽炎を探し回るが、町中では見つからない。
劉桜に住処は知ってるかどうか聞いてみるが、知らないそうで、どうしたものかと悩んで、少し酒でも飲んで元気になってからまた探そう、と最後に三人で飲んだ酒場に来たときだった。
そこには赤蜘蛛が居て、劉桜がうわと呟いて、その呟きで赤蜘蛛が此方を見つけたときだった。
「ざ、柘榴ちゃああん! やっと、やっと見つけたぁああ!」
大犬座が泣く声が聞こえた。
後ろの腰の辺りにどんっと、誰かがぶつかったので、柘榴は後ろを見ると、大犬座がわんわんと泣きながら、顔をぐしゃぐしゃにして柘榴の名と陽炎の名を泣き叫んでいた。
鼻水と涙が盛大に己の服に付いているが、あの勇敢な彼女をここまで泣かせるとは、と其方の方に驚き、一瞬何を言おうか柘榴は迷った。
「かげ、かげ、陽炎ちゃんがぁああ!」
「陽炎どのに何かあったのか!?」
大犬座の泣き声が聞こえたのか赤蜘蛛が此方へやってきた。事前に柘榴は劉桜から赤蜘蛛が陽炎の周囲を探っていると聞いていたので、思わず大犬座を後ろに隠したまま武器を取り出して身構えようとするが、冠座が現れ、攻撃する必要はないことを告げた。
「あの人、陽炎の国の人。陽炎の親の知り合いなんだって。だから、敵じゃないよ」
「嗚呼、いつかの少女。掻い摘んだ説明、有難う。幼女、どうした、陽炎どのに何があった?!」
赤蜘蛛が今にも大犬座を掴みあげてそのままの焦った勢いで問いかけそうだったので、柘榴はそれを制して、まずは大犬座を落ち着かせることが必要だと思い、鼻をかませる。
それからしゃがみこんで、抱き上げて、背中をぽんぽんと叩いてみせる。
「大丈夫、大丈夫。あいつ、案外逞しそうだから、さ。あんたが思ってるより丈夫だから。弱くない弱くない。なぁ、るおー?」
それは状況を知らないし、最近会った者の言葉ではないが、今彼女にはこういう安心させる言葉が必要だ。
劉桜も大犬座に泣かれると弱いのか、そうだあいつは強い、と頷いた。
「何せ、百の痛み虫じゃ。並大抵のことにはめげまい」
「ほら、昔からの知り合いが保証してくれたじゃん? とりあえず、あんたがめげてたら、かげ君にも不安が行き渡ってかげ君が弱っちゃうんじゃないのー?」
「そ、そうよね、あたしが、あたしがしっかりしなきゃ。あたしが唯一、あの人の星座の中でまともな愛属性なんだから」
大犬座は涙を手で拭い、それから視線を元の強い色に戻した。
それに柘榴と劉桜は視線をかち合わせて安堵し、それから真剣な顔に戻り、陽炎のことを問いかける。
大犬座は出来る限り自分を落ち着かせ、時折泣きすぎた所為で声を詰まらせるが、何とか答える。
「あのね、陽炎ちゃんがね、変態ホモ三人衆にプラネタリウムに取り込まれちゃって……あたし、必死で水の宮に入ろうとしたの。ちゃんと鳳凰ちゃんも冠ちゃんも協力してくれたのよ? でもね、でもね、あたし攻撃力とかないし、しかも黄道十二宮の宮だから、入れなくて、ずっと蟹座っちの笑い声しか聞こえなくて……水の壁越しに少し見えたんだけど、陽炎ちゃん吐いては水を飲まされてるみたいで……ずっと吐きながらも、無理矢理飲まされて……」
「……取り込むとは、強硬手段に出たもんだね」
大犬座の言葉を聞くなり、以前水瓶座に魅了されて水に依存していた友人の姿を思い出し、柘榴は間に合わなかったかと舌打ちをした。
脳裏によぎった忌々しい水の威力、――妖術の厄介さ。魅了がかつての友人のように、今現在かかっていなければいい、強く柘榴はそう願う。
「……いつかの少女、プラネタリウムを調べた。……水の宮というのは、十二宮のうち四つに分けられた星座の属性の、住む城のようなものだね?」
赤蜘蛛がそう言うと、冠座はこくんと首を縦に振る。
「陽炎、黄道十二宮は蟹座と水瓶座しか作ってなかったの。だから他に対抗できる強い力がないの」
「……百も痛み虫があれば、出来るんじゃ?」
「陽炎はメジャーに興味ないからっていってるけど、本当は星座の正確な痛み虫がどれを得たらどれを得られるか知らないから、マイナーなのしか知らなかったんだと思う。だから星がばらばらにあるの」
「……ならば、あと星幾つかで……作れる可能性はあるわけだね? 教えてくれた方が、百も痛み虫があるのならば、今の星座の人数は少ない方だと仰っていた」
「赤蜘蛛? ……嗚呼、そうか。プラネタリウムに穴あけりゃいいのか」
それは星座の二人から聞けば、天と地がひっくり返るような強硬手段で、目を丸く見開いた。
危ないし、逆に変なのが作られて仕組みが変わるかも知れないと大犬座は必死に訴えるが、柘榴は大丈夫、と苦笑した。
「魚座は作られてないんでしょ? おいらね、魚座を前に反則技で友達に頼まれて作ったこと、あるんだよねぇ? そんでもって……赤蜘蛛、あんたは星座に詳しそうだし……それに寝床も保証してくれる?」
「それは勿論! 御祓に頼んでみる!」
「げ! おいらの雇い主の親じゃん! おいらを処分しないように、ついでに頼んでおいて……」
三人は苦笑してから、大犬座に頼み、陽炎の塒へと招かれる。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
闇に咲く花~王を愛した少年~
めぐみ
BL
―暗闇に咲き誇る花となり、その美しき毒で若き王を
虜にするのだ-
国を揺るがす恐ろしき陰謀の幕が今、あがろうとしている。
都漢陽の色町には大見世、小見世、様々な遊廓がひしめいている。
その中で中規模どころの見世翠月楼は客筋もよく美女揃いで知られて
いるが、実は彼女たちは、どこまでも女にしか見えない男である。
しかし、翠月楼が男娼を置いているというのはあくまでも噂にすぎず、男色趣味のある貴族や豪商が衆道を隠すためには良い隠れ蓑であり恰好の遊び場所となっている。
翠月楼の女将秘蔵っ子翠玉もまた美少女にしか見えない美少年だ。
ある夜、翠月楼の二階の奥まった室で、翠玉は初めて客を迎えた。
翠月を水揚げするために訪れたとばかり思いきや、彼は翠玉に恐ろしい企みを持ちかける-。
はるかな朝鮮王朝時代の韓国を舞台にくりひげられる少年の純愛物語。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる