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第一部――第六章 朧月を閉じこめたプラネタリウムに、三人の勇者
第三十話 柘榴のチート技
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それから三日が経つ。
陽炎の姿を探そうとしても見つからず、劉桜に聞いても会ってないということで柘榴と劉桜は心配して陽炎を探し回るが、町中では見つからない。
劉桜に住処は知ってるかどうか聞いてみるが、知らないそうで、どうしたものかと悩んで、少し酒でも飲んで元気になってからまた探そう、と最後に三人で飲んだ酒場に来たときだった。
そこには赤蜘蛛が居て、劉桜がうわと呟いて、その呟きで赤蜘蛛が此方を見つけたときだった。
「ざ、柘榴ちゃああん! やっと、やっと見つけたぁああ!」
大犬座が泣く声が聞こえた。
後ろの腰の辺りにどんっと、誰かがぶつかったので、柘榴は後ろを見ると、大犬座がわんわんと泣きながら、顔をぐしゃぐしゃにして柘榴の名と陽炎の名を泣き叫んでいた。
鼻水と涙が盛大に己の服に付いているが、あの勇敢な彼女をここまで泣かせるとは、と其方の方に驚き、一瞬何を言おうか柘榴は迷った。
「かげ、かげ、陽炎ちゃんがぁああ!」
「陽炎どのに何かあったのか!?」
大犬座の泣き声が聞こえたのか赤蜘蛛が此方へやってきた。事前に柘榴は劉桜から赤蜘蛛が陽炎の周囲を探っていると聞いていたので、思わず大犬座を後ろに隠したまま武器を取り出して身構えようとするが、冠座が現れ、攻撃する必要はないことを告げた。
「あの人、陽炎の国の人。陽炎の親の知り合いなんだって。だから、敵じゃないよ」
「嗚呼、いつかの少女。掻い摘んだ説明、有難う。幼女、どうした、陽炎どのに何があった?!」
赤蜘蛛が今にも大犬座を掴みあげてそのままの焦った勢いで問いかけそうだったので、柘榴はそれを制して、まずは大犬座を落ち着かせることが必要だと思い、鼻をかませる。
それからしゃがみこんで、抱き上げて、背中をぽんぽんと叩いてみせる。
「大丈夫、大丈夫。あいつ、案外逞しそうだから、さ。あんたが思ってるより丈夫だから。弱くない弱くない。なぁ、るおー?」
それは状況を知らないし、最近会った者の言葉ではないが、今彼女にはこういう安心させる言葉が必要だ。
劉桜も大犬座に泣かれると弱いのか、そうだあいつは強い、と頷いた。
「何せ、百の痛み虫じゃ。並大抵のことにはめげまい」
「ほら、昔からの知り合いが保証してくれたじゃん? とりあえず、あんたがめげてたら、かげ君にも不安が行き渡ってかげ君が弱っちゃうんじゃないのー?」
「そ、そうよね、あたしが、あたしがしっかりしなきゃ。あたしが唯一、あの人の星座の中でまともな愛属性なんだから」
大犬座は涙を手で拭い、それから視線を元の強い色に戻した。
それに柘榴と劉桜は視線をかち合わせて安堵し、それから真剣な顔に戻り、陽炎のことを問いかける。
大犬座は出来る限り自分を落ち着かせ、時折泣きすぎた所為で声を詰まらせるが、何とか答える。
「あのね、陽炎ちゃんがね、変態ホモ三人衆にプラネタリウムに取り込まれちゃって……あたし、必死で水の宮に入ろうとしたの。ちゃんと鳳凰ちゃんも冠ちゃんも協力してくれたのよ? でもね、でもね、あたし攻撃力とかないし、しかも黄道十二宮の宮だから、入れなくて、ずっと蟹座っちの笑い声しか聞こえなくて……水の壁越しに少し見えたんだけど、陽炎ちゃん吐いては水を飲まされてるみたいで……ずっと吐きながらも、無理矢理飲まされて……」
「……取り込むとは、強硬手段に出たもんだね」
大犬座の言葉を聞くなり、以前水瓶座に魅了されて水に依存していた友人の姿を思い出し、柘榴は間に合わなかったかと舌打ちをした。
脳裏によぎった忌々しい水の威力、――妖術の厄介さ。魅了がかつての友人のように、今現在かかっていなければいい、強く柘榴はそう願う。
「……いつかの少女、プラネタリウムを調べた。……水の宮というのは、十二宮のうち四つに分けられた星座の属性の、住む城のようなものだね?」
赤蜘蛛がそう言うと、冠座はこくんと首を縦に振る。
「陽炎、黄道十二宮は蟹座と水瓶座しか作ってなかったの。だから他に対抗できる強い力がないの」
「……百も痛み虫があれば、出来るんじゃ?」
「陽炎はメジャーに興味ないからっていってるけど、本当は星座の正確な痛み虫がどれを得たらどれを得られるか知らないから、マイナーなのしか知らなかったんだと思う。だから星がばらばらにあるの」
「……ならば、あと星幾つかで……作れる可能性はあるわけだね? 教えてくれた方が、百も痛み虫があるのならば、今の星座の人数は少ない方だと仰っていた」
「赤蜘蛛? ……嗚呼、そうか。プラネタリウムに穴あけりゃいいのか」
それは星座の二人から聞けば、天と地がひっくり返るような強硬手段で、目を丸く見開いた。
危ないし、逆に変なのが作られて仕組みが変わるかも知れないと大犬座は必死に訴えるが、柘榴は大丈夫、と苦笑した。
「魚座は作られてないんでしょ? おいらね、魚座を前に反則技で友達に頼まれて作ったこと、あるんだよねぇ? そんでもって……赤蜘蛛、あんたは星座に詳しそうだし……それに寝床も保証してくれる?」
「それは勿論! 御祓に頼んでみる!」
「げ! おいらの雇い主の親じゃん! おいらを処分しないように、ついでに頼んでおいて……」
三人は苦笑してから、大犬座に頼み、陽炎の塒へと招かれる。
陽炎の姿を探そうとしても見つからず、劉桜に聞いても会ってないということで柘榴と劉桜は心配して陽炎を探し回るが、町中では見つからない。
劉桜に住処は知ってるかどうか聞いてみるが、知らないそうで、どうしたものかと悩んで、少し酒でも飲んで元気になってからまた探そう、と最後に三人で飲んだ酒場に来たときだった。
そこには赤蜘蛛が居て、劉桜がうわと呟いて、その呟きで赤蜘蛛が此方を見つけたときだった。
「ざ、柘榴ちゃああん! やっと、やっと見つけたぁああ!」
大犬座が泣く声が聞こえた。
後ろの腰の辺りにどんっと、誰かがぶつかったので、柘榴は後ろを見ると、大犬座がわんわんと泣きながら、顔をぐしゃぐしゃにして柘榴の名と陽炎の名を泣き叫んでいた。
鼻水と涙が盛大に己の服に付いているが、あの勇敢な彼女をここまで泣かせるとは、と其方の方に驚き、一瞬何を言おうか柘榴は迷った。
「かげ、かげ、陽炎ちゃんがぁああ!」
「陽炎どのに何かあったのか!?」
大犬座の泣き声が聞こえたのか赤蜘蛛が此方へやってきた。事前に柘榴は劉桜から赤蜘蛛が陽炎の周囲を探っていると聞いていたので、思わず大犬座を後ろに隠したまま武器を取り出して身構えようとするが、冠座が現れ、攻撃する必要はないことを告げた。
「あの人、陽炎の国の人。陽炎の親の知り合いなんだって。だから、敵じゃないよ」
「嗚呼、いつかの少女。掻い摘んだ説明、有難う。幼女、どうした、陽炎どのに何があった?!」
赤蜘蛛が今にも大犬座を掴みあげてそのままの焦った勢いで問いかけそうだったので、柘榴はそれを制して、まずは大犬座を落ち着かせることが必要だと思い、鼻をかませる。
それからしゃがみこんで、抱き上げて、背中をぽんぽんと叩いてみせる。
「大丈夫、大丈夫。あいつ、案外逞しそうだから、さ。あんたが思ってるより丈夫だから。弱くない弱くない。なぁ、るおー?」
それは状況を知らないし、最近会った者の言葉ではないが、今彼女にはこういう安心させる言葉が必要だ。
劉桜も大犬座に泣かれると弱いのか、そうだあいつは強い、と頷いた。
「何せ、百の痛み虫じゃ。並大抵のことにはめげまい」
「ほら、昔からの知り合いが保証してくれたじゃん? とりあえず、あんたがめげてたら、かげ君にも不安が行き渡ってかげ君が弱っちゃうんじゃないのー?」
「そ、そうよね、あたしが、あたしがしっかりしなきゃ。あたしが唯一、あの人の星座の中でまともな愛属性なんだから」
大犬座は涙を手で拭い、それから視線を元の強い色に戻した。
それに柘榴と劉桜は視線をかち合わせて安堵し、それから真剣な顔に戻り、陽炎のことを問いかける。
大犬座は出来る限り自分を落ち着かせ、時折泣きすぎた所為で声を詰まらせるが、何とか答える。
「あのね、陽炎ちゃんがね、変態ホモ三人衆にプラネタリウムに取り込まれちゃって……あたし、必死で水の宮に入ろうとしたの。ちゃんと鳳凰ちゃんも冠ちゃんも協力してくれたのよ? でもね、でもね、あたし攻撃力とかないし、しかも黄道十二宮の宮だから、入れなくて、ずっと蟹座っちの笑い声しか聞こえなくて……水の壁越しに少し見えたんだけど、陽炎ちゃん吐いては水を飲まされてるみたいで……ずっと吐きながらも、無理矢理飲まされて……」
「……取り込むとは、強硬手段に出たもんだね」
大犬座の言葉を聞くなり、以前水瓶座に魅了されて水に依存していた友人の姿を思い出し、柘榴は間に合わなかったかと舌打ちをした。
脳裏によぎった忌々しい水の威力、――妖術の厄介さ。魅了がかつての友人のように、今現在かかっていなければいい、強く柘榴はそう願う。
「……いつかの少女、プラネタリウムを調べた。……水の宮というのは、十二宮のうち四つに分けられた星座の属性の、住む城のようなものだね?」
赤蜘蛛がそう言うと、冠座はこくんと首を縦に振る。
「陽炎、黄道十二宮は蟹座と水瓶座しか作ってなかったの。だから他に対抗できる強い力がないの」
「……百も痛み虫があれば、出来るんじゃ?」
「陽炎はメジャーに興味ないからっていってるけど、本当は星座の正確な痛み虫がどれを得たらどれを得られるか知らないから、マイナーなのしか知らなかったんだと思う。だから星がばらばらにあるの」
「……ならば、あと星幾つかで……作れる可能性はあるわけだね? 教えてくれた方が、百も痛み虫があるのならば、今の星座の人数は少ない方だと仰っていた」
「赤蜘蛛? ……嗚呼、そうか。プラネタリウムに穴あけりゃいいのか」
それは星座の二人から聞けば、天と地がひっくり返るような強硬手段で、目を丸く見開いた。
危ないし、逆に変なのが作られて仕組みが変わるかも知れないと大犬座は必死に訴えるが、柘榴は大丈夫、と苦笑した。
「魚座は作られてないんでしょ? おいらね、魚座を前に反則技で友達に頼まれて作ったこと、あるんだよねぇ? そんでもって……赤蜘蛛、あんたは星座に詳しそうだし……それに寝床も保証してくれる?」
「それは勿論! 御祓に頼んでみる!」
「げ! おいらの雇い主の親じゃん! おいらを処分しないように、ついでに頼んでおいて……」
三人は苦笑してから、大犬座に頼み、陽炎の塒へと招かれる。
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