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第一部――第五章 太陽にお願い、月を助けて!
第二十八話 連携の内緒話
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「大した連係プレイだな?」
「ん? 何がー蟹座のにーさん」
「……プラネタリウムから引きはがす作戦にプラネタリウムの星座も引き入れて行うのか?」
その言葉に一気に陽炎は、柘榴はプラネタリウムを捨てさせる目的があるということを思い出して、警戒心が復活する。
嗚呼、折角緩めさせたのに、と柘榴は蟹座を少し睨みながら、口の端だけつり上げる。
「そっちも大した連係プレイだよねぇ? 水瓶座の水、止めなかったンでしょ、あんたも? あんたがあの水がどういう水か知らないって言うのは、同じ黄道十二宮なんだからあり得ないでっしょー」
げらげらと笑うと、蟹座は眼を細めて、眼の奥から射抜くような鋭い殺気立った眼差しを送るので、流石に結構有名な賞金首である自分でも背筋がぞくりと凍るようなものを感じた柘榴。
修羅場は幾つも乗り越えてきたが、ここまで鋭く恐ろしい視線には出会ったことは、多分無い。友人がプラネタリウムを使っていたときでさえ、こんな目をした蟹座は見たことはない。愛属性の厄介さを思い知る。
だが、冷や汗を感じながら、震えては、怯えてはお終いだと思って我慢しながら、にっと人なつっこい笑みを浮かべた。
「何、え、知らなかったわけ、マジで?」
「サドDVホモ野郎のことだから、知ってて飲ませてるに決まってるじゃないの」
「黙れ、大犬。オレは今、この果物と話している」
「別にー? 別においらは、このおちびのレディが会話に雑ざっても構わないよ?」
「……オレが構う。おい、帰るぞ、陽炎。お前とて、今、飲みたいような気分ではなかろう?」
「おや、珍しく愛しき我が君を構うのですね? ですがそうですね、時間もそろそろですし、名残惜しいですが……劉桜どの、柘榴どの、また機会があればどうぞ宜しく。愛しき我が君、帰りましょう? 貴方が――、貴方が今は星座と居たくないのならば、私たちは姿を消しますから」
鴉座は笑みを作ろうとして失敗した切ない顔を陽炎に向ける。
陽炎はそれを黙って見て、じっと鴉座の眼を見つめた。その目には、鴉座に向ける目だけは躊躇いが隠されていて。
(そこでそういう顔をして、一番信頼のある鴉くんが同情心を誘う。成る程、蟹座は同情心を出す劇の為の悪役ってわけ――)
柘榴が影で納得している間に陽炎は意を決したのか、頷いて劉桜にごめんと謝りつつ、柘榴を一瞬見やって何か言いたげにした。が、何も言わず星座を皆消して、一人帰路へと向かう。
飲んだ代金はテーブルに置いておいて。
「なんじゃ? なんか変な雲行きじゃのう?」
「んー、まぁ変な雲行きがあるもんがあるからねぇ? るおー、お願いがあるんだけどさ」
「なんじゃ?」
「あんたは、あんたで居てくれ。普通に接して、何も知らないまんまでいて」
そのお願いは劉桜には理解できず、ただ首を傾げる。
だけど結構柘榴にとっては真剣なお願いなのだ。
(こうして、状況を知らない奴が一人でもいないと、あんたは窒息しちゃうだろ? かげ君――)
「ん? 何がー蟹座のにーさん」
「……プラネタリウムから引きはがす作戦にプラネタリウムの星座も引き入れて行うのか?」
その言葉に一気に陽炎は、柘榴はプラネタリウムを捨てさせる目的があるということを思い出して、警戒心が復活する。
嗚呼、折角緩めさせたのに、と柘榴は蟹座を少し睨みながら、口の端だけつり上げる。
「そっちも大した連係プレイだよねぇ? 水瓶座の水、止めなかったンでしょ、あんたも? あんたがあの水がどういう水か知らないって言うのは、同じ黄道十二宮なんだからあり得ないでっしょー」
げらげらと笑うと、蟹座は眼を細めて、眼の奥から射抜くような鋭い殺気立った眼差しを送るので、流石に結構有名な賞金首である自分でも背筋がぞくりと凍るようなものを感じた柘榴。
修羅場は幾つも乗り越えてきたが、ここまで鋭く恐ろしい視線には出会ったことは、多分無い。友人がプラネタリウムを使っていたときでさえ、こんな目をした蟹座は見たことはない。愛属性の厄介さを思い知る。
だが、冷や汗を感じながら、震えては、怯えてはお終いだと思って我慢しながら、にっと人なつっこい笑みを浮かべた。
「何、え、知らなかったわけ、マジで?」
「サドDVホモ野郎のことだから、知ってて飲ませてるに決まってるじゃないの」
「黙れ、大犬。オレは今、この果物と話している」
「別にー? 別においらは、このおちびのレディが会話に雑ざっても構わないよ?」
「……オレが構う。おい、帰るぞ、陽炎。お前とて、今、飲みたいような気分ではなかろう?」
「おや、珍しく愛しき我が君を構うのですね? ですがそうですね、時間もそろそろですし、名残惜しいですが……劉桜どの、柘榴どの、また機会があればどうぞ宜しく。愛しき我が君、帰りましょう? 貴方が――、貴方が今は星座と居たくないのならば、私たちは姿を消しますから」
鴉座は笑みを作ろうとして失敗した切ない顔を陽炎に向ける。
陽炎はそれを黙って見て、じっと鴉座の眼を見つめた。その目には、鴉座に向ける目だけは躊躇いが隠されていて。
(そこでそういう顔をして、一番信頼のある鴉くんが同情心を誘う。成る程、蟹座は同情心を出す劇の為の悪役ってわけ――)
柘榴が影で納得している間に陽炎は意を決したのか、頷いて劉桜にごめんと謝りつつ、柘榴を一瞬見やって何か言いたげにした。が、何も言わず星座を皆消して、一人帰路へと向かう。
飲んだ代金はテーブルに置いておいて。
「なんじゃ? なんか変な雲行きじゃのう?」
「んー、まぁ変な雲行きがあるもんがあるからねぇ? るおー、お願いがあるんだけどさ」
「なんじゃ?」
「あんたは、あんたで居てくれ。普通に接して、何も知らないまんまでいて」
そのお願いは劉桜には理解できず、ただ首を傾げる。
だけど結構柘榴にとっては真剣なお願いなのだ。
(こうして、状況を知らない奴が一人でもいないと、あんたは窒息しちゃうだろ? かげ君――)
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