【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第一部――第五章 太陽にお願い、月を助けて!

第二十六話 太陽と接点

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「百の痛み虫、それにフルーティがまさか酒飲み仲間になろうとはおもわんかった」
 劉桜は上機嫌に、また白ひげを作りながら、柘榴を見やる。
 対する柘榴は、焼酎だ。濃いめの塩こしょうで焼いた砂肝を熱燗に入れて、これが美味しいんだよ、と劉桜に酒情報をリークする。

「柘榴でいいよ、るおー。おいらもまさか、赤鬼金棒とこうして話せるとは思わなかった。いつか狩るだろうたぁ思ったけどねぇ?」
「今はどうじゃ?」
「いまんとこは、そこまで金に困ってないかな。あんた、賞金低いし」
 柘榴がそう言うと劉桜が二人に敵うわけ無いだろ、といわんばかりの不機嫌面になったので陽炎と柘榴は大笑いをする。
 陽炎は久しぶりに、劉桜という昔からの親友以外と酒を人間と飲んだのだが、不思議と警戒心は強まることはなく、逆に楽しめた。酒の効果もあるかもしれないが、二人が接触してても友達を奪われるというより、この二人の輪に入れるのかという楽しさがあった。

 ――柘榴は何だかうち解けやすく、気軽に喋りたいときには丁度側にいて欲しいような人間だった。他の人間は柘榴をどう思っているか判らないが、少なくとも陽炎はそう感じた。簡単に言うと、悪い奴には思えない、という結論。

「……どったの、かげ君?」
「何でもない」
「――……かげ君。プラネタリウムの奴らと話すのもいいけどさ、こうやって人と話すのも偶にはいいでしょー?」
 柘榴は陽炎の表情から少し警戒心が薄れているのを見計らって、そう微笑んで彼の人間への不信度を測る。
 これで警戒したら、今もまだ最初に出会った状態のままだろうと、柘榴は思いながら。
 陽炎は、少しだけ微笑んで「劉桜が居るから楽しいんだよ、ばぁか」と言った。
 プラネタリウムと比較しても怒らなくなった辺り、少しずつ自分は彼を救えているのだとほっとする。
 だがそこに現れるのは、鴉座に蟹座に大犬座。
 一瞬蟹座と大犬座は火花を散らしてから、大犬座は人なつっこい笑みで陽炎の膝の上によじ登り、ちょこんと座る。
 そこに座っても怒られないのは、大犬座の人徳故に。彼女はなんだかんだ言って甘やかしたい、可愛い妹のような存在なのだ、陽炎にとっては。


「貴方が柘榴?」
 大犬座は自分を甘やかす陽炎に、にこっと笑ってから、顔を柘榴に向けて遠慮無く問うてみる。
 柘榴は目を半目にして、からかうような体勢で挑む。

「おお、星座がきたー。何々、今度はどうやっておいら達を追い払う? るおーも追い払うの?」
「まさか。あたしと、そこのホモ変態二人を一緒にしないでよ。あたしは、……多分、貴方の考えに賛同出来ると思うのだけれど」
 そう言って大犬座は微笑む。
 微笑まれると柘榴は少し面食らって、そう有難う、とお礼にジュースを奢ることにした。

(――これは嘘か、それとも真か。でも、嘘だとしたら今一瞬だけ蟹座と険悪だった理由が分からない。主人を奪おうとするのに賛同する星座? そんなのは居るのか?)

 柘榴はジュースを店員に頼み、小さなレディに奢ることを教えると、大犬座は有難うと微笑む。
 それから視線をちらりと鴉座達に向けて、様子を見張っているような目つきをした。
 その目つきで、大犬座の心は完璧に読めなくても、己に協力態勢となってくれる人物であろうことは理解できた柘榴は、星座にも色んな奴が居るのだなと思って、焼酎をちびりと飲んだ。
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