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第一部――第五章 太陽にお願い、月を助けて!
第二十五話 赤蜘蛛
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――あいつ見てると、何かまな板の上の死んでる魚見てる気分になるんだよ。
――いや、それ変だから。
――大犬、黙れ!
「っていう夢を見たんだ」
毎度のごとく冠座に相談しながら武器を引き取り、やはり自分の鉄扇と円形剣が一番だ、と研ぎ澄まされた美しい刃に陽炎は見とれる。
冠座はその美しき刃の良さはよく判らないのだが、何だかいつもと相談される夢の内容が違って変だなと感じて、ふぅんと頷きながらも、頭の中では色々考えている。
「あいつって誰だろうな。まな板の上の死んだ魚」
「それって食べたいって意味なのかな。それとも死人相手だからもう手出ししたくないってことなのかな」
「……げんなりした感じだったから、多分後者じゃないかなぁ」
「じゃあ、鳳凰じゃない?」
その言葉にそれで苦手なのか、と陽炎は納得した。
鳳凰座にそれを告げるのは酷な気がするから言わないが、多分告げても首を傾げて大犬座か蟹座に意味を問いかけるのだろう。
蟹座が鳳凰を苦手とする理由が分かってすっきりしたので、陽炎は心おきなく夜の酒場をうろつく。
昨日向こうが勝手に決めたとはいえ、劉桜を連れて柘榴と飲む話になったのだし、律儀な陽炎は劉桜を捜す。
裏路地にでも居るかな、それとも地下水路だろうかと思いながら夜の暗がりの道を歩いていると、その先には大きな体ともう一つ影があった。
(――劉桜と、赤蜘蛛?)
少し近づいて会話を聞くつもり――などではなく、ただ単純に劉桜に用事があるから劉桜に遠慮無く近づく陽炎。
二人は此方を見てないからか気づかない。普通誰かと話しているときは、周りの人間など目に入らないのだろう。
「何故そんなに陽炎のことを聞きたがるんじゃ!」
「彼に用事があるんだ」
「それならば本人に言えばええじゃろうが!」
「……本人に会おうとしたんだが、邪魔が入ったんだ。それで今の彼の環境が知りたくて……」
「劉桜ー」
会話を止めさせるのも何だが、自分の話題だったようなのでいいか、と陽炎は劉桜を呼んでみる。
双方は此方を振り返り、劉桜は赤蜘蛛を睨み付けてから此方へ来る。
それから雑談をしながら柘榴を紹介する話を陽炎は劉桜にしながら、ちらりと赤蜘蛛の方を見やる。
赤蜘蛛は礼儀正しくお辞儀――など、もうしない。
それは昨日のことが嘘ではなく、逆に真実みを増した。人通りの少ないとはいえ、結構裏家業の者が歩くこの地でそれらしく振る舞うと言うことは、やはり自分の変装を解きたくなくて。
それでも自分を見る眼差しが何処か、優しくて。
陽炎はそれを見なかったことにして、背を向けて、劉桜と夜の街へ。
陽炎は気づかない。冠座が赤蜘蛛に話し掛けていたことに。
「ねぇ、赤蜘蛛、でいいんだよね?」
「? ――ああ」
「陽炎のことで一つ教えてあげる。人のこと勝手に話すのってあんまり好きじゃないけれど、このままじゃあいつらのいいようにされるから」
冠座は無関心の筈。それでも心配なのは忠誠心があるというのもあるが、特別扱いしてくれる陽炎のためにだ。彼女も一応それなりに主人が大事なのだ。
赤蜘蛛は目を見開くが、情報をくれるということを信じて良いのかどうか迷いながら、鋭い目を向ける。
「……お嬢ちゃんは、あの人を取り巻く環境の一つなのか?」
「……――プラネタリウムの中の人よ、私。プラネタリウムを知らないなら自分で調べなさい。陽炎はプラネタリウムを作ろうとしている、ただそれだけを教えてあげる」
「ぷらねた……?」
「じゃあね、頑張ってねおじさん。私、人間は嫌いじゃないの。あの人を守るのなら余計に」
――いや、それ変だから。
――大犬、黙れ!
「っていう夢を見たんだ」
毎度のごとく冠座に相談しながら武器を引き取り、やはり自分の鉄扇と円形剣が一番だ、と研ぎ澄まされた美しい刃に陽炎は見とれる。
冠座はその美しき刃の良さはよく判らないのだが、何だかいつもと相談される夢の内容が違って変だなと感じて、ふぅんと頷きながらも、頭の中では色々考えている。
「あいつって誰だろうな。まな板の上の死んだ魚」
「それって食べたいって意味なのかな。それとも死人相手だからもう手出ししたくないってことなのかな」
「……げんなりした感じだったから、多分後者じゃないかなぁ」
「じゃあ、鳳凰じゃない?」
その言葉にそれで苦手なのか、と陽炎は納得した。
鳳凰座にそれを告げるのは酷な気がするから言わないが、多分告げても首を傾げて大犬座か蟹座に意味を問いかけるのだろう。
蟹座が鳳凰を苦手とする理由が分かってすっきりしたので、陽炎は心おきなく夜の酒場をうろつく。
昨日向こうが勝手に決めたとはいえ、劉桜を連れて柘榴と飲む話になったのだし、律儀な陽炎は劉桜を捜す。
裏路地にでも居るかな、それとも地下水路だろうかと思いながら夜の暗がりの道を歩いていると、その先には大きな体ともう一つ影があった。
(――劉桜と、赤蜘蛛?)
少し近づいて会話を聞くつもり――などではなく、ただ単純に劉桜に用事があるから劉桜に遠慮無く近づく陽炎。
二人は此方を見てないからか気づかない。普通誰かと話しているときは、周りの人間など目に入らないのだろう。
「何故そんなに陽炎のことを聞きたがるんじゃ!」
「彼に用事があるんだ」
「それならば本人に言えばええじゃろうが!」
「……本人に会おうとしたんだが、邪魔が入ったんだ。それで今の彼の環境が知りたくて……」
「劉桜ー」
会話を止めさせるのも何だが、自分の話題だったようなのでいいか、と陽炎は劉桜を呼んでみる。
双方は此方を振り返り、劉桜は赤蜘蛛を睨み付けてから此方へ来る。
それから雑談をしながら柘榴を紹介する話を陽炎は劉桜にしながら、ちらりと赤蜘蛛の方を見やる。
赤蜘蛛は礼儀正しくお辞儀――など、もうしない。
それは昨日のことが嘘ではなく、逆に真実みを増した。人通りの少ないとはいえ、結構裏家業の者が歩くこの地でそれらしく振る舞うと言うことは、やはり自分の変装を解きたくなくて。
それでも自分を見る眼差しが何処か、優しくて。
陽炎はそれを見なかったことにして、背を向けて、劉桜と夜の街へ。
陽炎は気づかない。冠座が赤蜘蛛に話し掛けていたことに。
「ねぇ、赤蜘蛛、でいいんだよね?」
「? ――ああ」
「陽炎のことで一つ教えてあげる。人のこと勝手に話すのってあんまり好きじゃないけれど、このままじゃあいつらのいいようにされるから」
冠座は無関心の筈。それでも心配なのは忠誠心があるというのもあるが、特別扱いしてくれる陽炎のためにだ。彼女も一応それなりに主人が大事なのだ。
赤蜘蛛は目を見開くが、情報をくれるということを信じて良いのかどうか迷いながら、鋭い目を向ける。
「……お嬢ちゃんは、あの人を取り巻く環境の一つなのか?」
「……――プラネタリウムの中の人よ、私。プラネタリウムを知らないなら自分で調べなさい。陽炎はプラネタリウムを作ろうとしている、ただそれだけを教えてあげる」
「ぷらねた……?」
「じゃあね、頑張ってねおじさん。私、人間は嫌いじゃないの。あの人を守るのなら余計に」
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