【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

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第一部――第四章 朝焼けに戸惑う夜の皇子

第二十二話 同じ轍は踏まない

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 ――この男は、プラネタリウムだけでなく、友人も攫っていくつもりだろうか。

 柘榴の言葉に、自然と陽炎は睨んでいて冷たい声も出していた。
 それに柘榴は、「やーよ、怖いわーかげ君ー」とオネエ言葉で頬に手を当てからかう。
 陽炎は、その仕草にげんなりと、してしまう。


「……どうして、紹介しなきゃいけないんだ」
「ん、共通の友人は作りたいデショ。それにおいらだって、友達は増やしたいさ。同じ裏家業ならば余計に仲良くして損はないデショ」
「損得とか考えるわけ?」
 陽炎はため息をついて、馬鹿にするように柘榴を見やるが、柘榴はそれで気分を害した様子もなく、うん、と頷いて、それが何か? と首を傾げる。


「損得、利害一致してこその関係じゃん、最初って。親交が深まっても、それは関係してくると思うし。それがないって言ってる奴のがおいらは信用できんよ。少なからず、相手に癒しとかそういう得を求めてるはずだし?」
「じゃあ、お前は何で俺に関わろうとする? 俺に関わった得って何だよ」
 そう問いかけると、柘榴は少しだけ真剣みを出した顔で、自嘲気味に笑った。
「昔プラネタリウムで自滅した馬鹿を救いたかったのに救えなかった。その罪滅ぼし代わりを、あんたに求めてるんさぁ」

 その言葉には重みがあったのを陽炎は感じ取ったが、気づかないふりをした。
 気づかないふりは、得意なのだ。それに例え重みがあったとしてそれを指摘したとして、己を傷つけたり星座を傷つけるような言葉を返すのならば聞きたくはない。


「んだよ、代理かよ、俺ぁ」
「そ、代理。あんたは、もしも事前にあれがどういうものか知っていて救えていたら、こうなっただろうなっていうおいらの、希望。……これで、安心できたか? おいらがあんたに構ってる理由が見えて」
 そう言われれば確かに何処か安心できるものができた。
 理由が見えてくると安心できるものがあるというのを知り、陽炎は信頼関係や友情にもそういうものが必要な場合もあるのか、と少し目から鱗だった。
 柘榴は素直に頷く陽炎を見ると、素直で偉いなーとがしゃがしゃと頭を撫で回すので、自分のが年上である筈なのに、と陽炎は少しむっとした。


「頭撫でンなよ」
「撫でてるんじゃないの、髪の毛乱させて髪型崩す嫌がらせー」
「……地味な嫌がらせだなぁ」
 陽炎は、警戒心を少し緩めて、心からの笑みを見せた。
 一部の星座が嫉妬する一瞬。
 鳳凰座は言われたとおり蟹座を追いかけてるからか蟹座は現れなかったが、代わりに水瓶座が現れた。
 人目を惹く美しさ。だから人々は彼を凝視するが、彼はそれは自分があまりに変で醜くて浮いているからだと思いこみ、あまり外に出たがらない。
 それでも出ているのは、他にプラネタリウムへ執着させようとしている二人が動けないからだ。


「陽炎様」
「あ? 珍しいじゃん、水瓶座。お前が昼間に人通りが多いところに出るなんて」
「嗚呼、やっほー水瓶座。久しぶり、覚えてないよな、昔の主人の友人のことなんて」
 陽炎は水瓶座を見て、目を見開き、それから微笑む。その笑みはやはり、愛しくて。
 続く挨拶の声に、視線を向ける。柘榴は、手を一回だけふって、口元だけで笑った。
 柘榴のことは覚えてないが、何処か自分たちにとって危険な香りがするので水瓶座は眼に涙を浮かべて、水瓶をぎゅっと腕に抱えて、陽炎に視線で訴える。

「陽炎様、陽炎様はそんなに人間が良い? 人間と一緒だからそんな笑ったりするの?  それとも、嗚呼僕が不細工だから遊んでくれないんだね……」
「お前がネガティブだから、遊んでも後ろ向きなんだもん」
 いきなり現れてネガティブ発言をされて、陽炎は辟易とする。
 でもその言葉の中に、「やはりお前も他の人間と同じか」という意味合いが聞こえたので、陽炎はひやりとするものを感じながら、水瓶座に提案をしてみる。許しを乞うごとく。

「一緒に遊ぶか?」
「一緒は嫌です。その人間とは一緒に遊びたくないです。その人間、ちょっと顔良いから」
「あいっかわらず、自分の顔に気づいてないのな、あんた」
 柘榴は己の容姿にコンプレックスがある水瓶座を、それは個性だろうかと考えながらけらけらと笑い、己は立ち上がる。

「さて、おいらもそろそろ稼ぎ時だから、帰るよ。かげ君、いいかい、水瓶座の水は危険時以外飲むんじゃないよ? んでもって明日、夜に此処で会おう。劉桜っての紹介してくれよ、んで酒飲もうぜ!」
 柘榴はじゃあなぁと手をひらひらと振って、人混みの中へ身を投じて紛れる。
 星座と居れば、星座に依存しているので星座が何かしら手放せさせようとしている人間には失態させる。あるいは、主人の心の影を抉る。
 それを柘榴は知っているから、自ら陽炎から離れた。


(――水瓶座、もう二度とあいつの二の舞は踏ませないよ)
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