11 / 358
第一部――第二章 喧嘩なんざ買わねぇよ
第十話 他の知られてない星座をも生み出したい欲張り
しおりを挟む
本気になり始めた。
それは、……やはり、そういう意味で?
それとも、主人を一人に統一させて、そろそろ本気でプラネタリウムの完成を狙いだしたと言うことか?
プラネタリウムの力は凄まじく、破壊兵器という言葉は或る意味当たっている。
黄道十二宮を揃えれば、きっとありとあらゆる刺客からは逃れられるほど強靱にはなるのだろう。防御も攻撃も治療も、そういった面に強いのを知っている。
蟹座が良い例で彼のお陰で、瀕死体験は何度もしたが、それでも今日までこうして生きているのは彼が己に乗り移って敵へ攻撃すると、大抵相手は死ぬからだ。
彼の機嫌が良くても、体の一部は必ず失うくらいまで攻撃する。とりあえず、黄道十二宮一人でこの威力とは、凄まじい。全員が揃ったときは。
それ故に前の主人は急に怯えて――爆弾抱えてるようなものだから――、一切の星座を最初から作り直すように封印してから、捨てたと聞いた。鴉座から。
だから己が手にしたときは、何の星座もなかったようだ。
何故覚えているかと聞いたら、星座には以前の主人の記憶が誰だかはなくとも、情報だけは脳に残っている星座もいるという返答を貰った。
「ふむ……」
「ふむ、じゃないの!! 陽炎ちゃん、もうこうなったら、肛門塞ぎなさい! 肛門さえ塞げば、男同士は……」
「馬鹿、便が出ないだろ! って、何でお前、どっからそんな知識得てるの! 俺の教育法が間違ったように見られるから、人前では猥談はするな!」
「あら、教育法が間違ってるように見られてもあたしは平気よ。間違って育てた責任をとってよ、体で」
「……愛属性な奴って、変態ばかりな気がしてきた」
ため息をついて、陽炎は大犬座から離れるように衣服を選んでいる冠座の方に歩み寄る。
一生懸命に一番似合わなさそうなものを選んでいる彼女。だけど他の者が見たら、それは素晴らしく陽炎にはぴったりと似合うであろうセンスの良い物。
彼女の能力は確かにあるのだから、彼女が選ぶのとは逆を目指せばそれは己のために生まれた衣服のような存在感になる。
それに陽炎も冠座も気づかない。
「冠座ー、服決まった?」
「一番似合わないっていうのが、結構難しい注文よ。私、ほら、センス良いから」
「うん、だよな」
「それで? 果物と赤蜘蛛、どっちを優先するの?」
その言葉にむぅと唸る陽炎。
星座は見たいし、新しい仲間とも話してみたい。だがそれをしてみると、蟹座からのドメスティックバイオレンスが待っている。蟹座に力で勝てる者は今のところ居ない……。
「あー、でもいざとなったら、大犬座の力で逃げればいいか」
大犬座は交通を操ったり、逃げやすくしてくれたり、乗り物になってくれる。
なので、長距離行動や、逃げるときには重宝されるものなのだ。
陽炎の呟きに、じゃあ果物? と、冠座は首を傾げて、服を押しつけて試着室へ陽炎を押しやる。
「いいや、両方にするよ。そしたら、赤蜘蛛の周辺もやったじゃんって言えるからね。同時進行でいこう」
「陽炎ー、余計なお節介かも知れないけれどね、二兎を追う者一兎も得ず、っていうよ?」
「……――うん」
「それに、あいつら三人が何か企んでるっぽいことがさ、星座関連なら……集めるのやめてしまえばいいのに、って思う。陽炎は、十分やったよ。百も痛み虫を集めて、頑張ったよ」
冠座の言葉に何か考えにふける様子が、試着室越しから感じられる冠座は陽炎の返事を待つ。
陽炎は数分経って、着替え終えながら、返事をする。
「でもさ、俺、鴉座作ったときに、あんなに感謝されたの初めてなんだ。まさか自分を作ってくれる人がいるなんて!! って、泣かれたんだよ。……きっと、他にもそういう星座はいると思う。だから、……なるべく、作って、そんで俺も昼に完璧なプラネタリウムを見てみたいんだ」
そう言って試着室から出ると、陽炎の衣服は陽炎の眼鏡に見合う上品な装いになっていた。
その上にはマントではなく、コートを選んでみた冠座は、陽炎を半目で見やり、ふぅんと頷いた。
「陽炎はそういう知られていない星座を作りたいの? 黄道十二宮じゃなくて。黄道十二宮なら強い力持ってるよ。鳳凰を見てみなよ、鳳凰には何も力がない」
「力がある、ないだったら最初に十二宮作っておしまいじゃね? ……なんつーかなぁ、誰にも見つからない場所に閉じこめられて、見つけてくれたときの嬉しさって言うのは分かるからなぁ。鳳凰はあれでいいの、あの子で俺は癒される。愛だったらもっとよかったんだけどね、あの変態三人じゃなくてさ……!!」
陽炎は顔を俯き、もう嫌だと言わんばかりに首をぶんぶんと振って、気苦労の多さを見せつけてくれた。何だかこう育児に疲れた主婦を見ている感覚だった、冠座は。
「はいはい、泣かないの。おーい、大犬、これでどうかしらー?」
冠座曰く全くセンスが伺えない衣服に、大犬座はOKを出した。
それに二人は首を傾げて、こういうのが本当にいいのだろうか、と疑問に思った。
それは、……やはり、そういう意味で?
それとも、主人を一人に統一させて、そろそろ本気でプラネタリウムの完成を狙いだしたと言うことか?
プラネタリウムの力は凄まじく、破壊兵器という言葉は或る意味当たっている。
黄道十二宮を揃えれば、きっとありとあらゆる刺客からは逃れられるほど強靱にはなるのだろう。防御も攻撃も治療も、そういった面に強いのを知っている。
蟹座が良い例で彼のお陰で、瀕死体験は何度もしたが、それでも今日までこうして生きているのは彼が己に乗り移って敵へ攻撃すると、大抵相手は死ぬからだ。
彼の機嫌が良くても、体の一部は必ず失うくらいまで攻撃する。とりあえず、黄道十二宮一人でこの威力とは、凄まじい。全員が揃ったときは。
それ故に前の主人は急に怯えて――爆弾抱えてるようなものだから――、一切の星座を最初から作り直すように封印してから、捨てたと聞いた。鴉座から。
だから己が手にしたときは、何の星座もなかったようだ。
何故覚えているかと聞いたら、星座には以前の主人の記憶が誰だかはなくとも、情報だけは脳に残っている星座もいるという返答を貰った。
「ふむ……」
「ふむ、じゃないの!! 陽炎ちゃん、もうこうなったら、肛門塞ぎなさい! 肛門さえ塞げば、男同士は……」
「馬鹿、便が出ないだろ! って、何でお前、どっからそんな知識得てるの! 俺の教育法が間違ったように見られるから、人前では猥談はするな!」
「あら、教育法が間違ってるように見られてもあたしは平気よ。間違って育てた責任をとってよ、体で」
「……愛属性な奴って、変態ばかりな気がしてきた」
ため息をついて、陽炎は大犬座から離れるように衣服を選んでいる冠座の方に歩み寄る。
一生懸命に一番似合わなさそうなものを選んでいる彼女。だけど他の者が見たら、それは素晴らしく陽炎にはぴったりと似合うであろうセンスの良い物。
彼女の能力は確かにあるのだから、彼女が選ぶのとは逆を目指せばそれは己のために生まれた衣服のような存在感になる。
それに陽炎も冠座も気づかない。
「冠座ー、服決まった?」
「一番似合わないっていうのが、結構難しい注文よ。私、ほら、センス良いから」
「うん、だよな」
「それで? 果物と赤蜘蛛、どっちを優先するの?」
その言葉にむぅと唸る陽炎。
星座は見たいし、新しい仲間とも話してみたい。だがそれをしてみると、蟹座からのドメスティックバイオレンスが待っている。蟹座に力で勝てる者は今のところ居ない……。
「あー、でもいざとなったら、大犬座の力で逃げればいいか」
大犬座は交通を操ったり、逃げやすくしてくれたり、乗り物になってくれる。
なので、長距離行動や、逃げるときには重宝されるものなのだ。
陽炎の呟きに、じゃあ果物? と、冠座は首を傾げて、服を押しつけて試着室へ陽炎を押しやる。
「いいや、両方にするよ。そしたら、赤蜘蛛の周辺もやったじゃんって言えるからね。同時進行でいこう」
「陽炎ー、余計なお節介かも知れないけれどね、二兎を追う者一兎も得ず、っていうよ?」
「……――うん」
「それに、あいつら三人が何か企んでるっぽいことがさ、星座関連なら……集めるのやめてしまえばいいのに、って思う。陽炎は、十分やったよ。百も痛み虫を集めて、頑張ったよ」
冠座の言葉に何か考えにふける様子が、試着室越しから感じられる冠座は陽炎の返事を待つ。
陽炎は数分経って、着替え終えながら、返事をする。
「でもさ、俺、鴉座作ったときに、あんなに感謝されたの初めてなんだ。まさか自分を作ってくれる人がいるなんて!! って、泣かれたんだよ。……きっと、他にもそういう星座はいると思う。だから、……なるべく、作って、そんで俺も昼に完璧なプラネタリウムを見てみたいんだ」
そう言って試着室から出ると、陽炎の衣服は陽炎の眼鏡に見合う上品な装いになっていた。
その上にはマントではなく、コートを選んでみた冠座は、陽炎を半目で見やり、ふぅんと頷いた。
「陽炎はそういう知られていない星座を作りたいの? 黄道十二宮じゃなくて。黄道十二宮なら強い力持ってるよ。鳳凰を見てみなよ、鳳凰には何も力がない」
「力がある、ないだったら最初に十二宮作っておしまいじゃね? ……なんつーかなぁ、誰にも見つからない場所に閉じこめられて、見つけてくれたときの嬉しさって言うのは分かるからなぁ。鳳凰はあれでいいの、あの子で俺は癒される。愛だったらもっとよかったんだけどね、あの変態三人じゃなくてさ……!!」
陽炎は顔を俯き、もう嫌だと言わんばかりに首をぶんぶんと振って、気苦労の多さを見せつけてくれた。何だかこう育児に疲れた主婦を見ている感覚だった、冠座は。
「はいはい、泣かないの。おーい、大犬、これでどうかしらー?」
冠座曰く全くセンスが伺えない衣服に、大犬座はOKを出した。
それに二人は首を傾げて、こういうのが本当にいいのだろうか、と疑問に思った。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─
藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。
そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!?
あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが…
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊
喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者
ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』
ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
Rシーンは※をつけときます。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる