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第一部――第一章 ただ星空がいつでも見たいだけ
第四話 陽炎の悩み
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それを見た劉桜は情報と聞き、何の情報だろうかと思考を巡らせて、嗚呼そうか自分の攻撃が痛み虫に繋がるのかと頷き、それで他の痛み虫を集めようとしているのかと納得した。
折角見逃して貰えるのに、そして何より久しぶりの旧友との再会だから、劉桜は、情報を与えようと口にした。
それに対して陽炎は嬉しそうな顔をし、鴉座は己のポジションを奪われたからか複雑そうな顔をしてから、お心遣い痛み入りますと礼を告げた。
「わしゃ賞金首の中じゃ弱い方じゃがな、情報通としては有名なんじゃよ」
「へぇ、それは知らなかった。賞金首ルートでの情報通? 成る程、なら情報は手に入りにくい」
「ええか、ニュースソースはわしじゃと明かすなよ。この店、に時折来る奴が居てな。そいつは、フルーティーって名称なんじゃが、何故だか判るか?」
その質問に今度は陽炎が思案する番で、悩む。
鴉座は即座に判ったが、悩む主人の顔は好きだし、下手に教えると機嫌を損ねてしまうので、助けを出さないで黙ったまま主人の顔を眺める。とても柔らかな眼差しのまま。
「……香り?」
「いいや、果物のように人の皮を剥いて殺すのが好きだからじゃ」
「嗚呼、そりゃ確かに今まで無い、痛み虫っぽいな」
おおお、と拍手を今度は陽炎が贈って、それから虚空を見上げて、ふむと陽炎は考え込む。
「それなら、何か今度は大きな星になるかもしれないし、いいな」
「どんな痛み虫になるかは知らん。じゃがな、おんしの噂同様、中々に恐れられてる人物じゃから、気ぃつけるんじゃよ」
「……私は、皮を剥かれる我が愛しの君なんて見たくないんですがねぇー、我が愛しの君の願いのため、そいつの情報収集に出かけましょうか……。嗚呼、挨拶ならば水瓶の馬鹿はやめてくださいよ、話してて落ち込んで死にたくなりますから。そうですね、……こういう場は鳳凰の姫がふさわしいのでは?」
そう言って鴉座は立ち上がり、やれやれとため息をつき、薬草を噛んだような顔をする。
それでも主の為に働こうとしている姿を見ると、劉桜は成る程、主に尽くすというのは嘘ではないのか、と納得した。
鴉座は改めて劉桜へ微笑みかけて、丁寧にお辞儀をしてそれでは失礼いたしますと去っていこうとした。
出口への途中で、ウェイターに間違えられて女性に声をかけられたので、一言二言口説いて成功していたが、主人は既に鴉座から眼を離していて注目されてない。
その様子を少しちらりと鴉座は振り返り、やれやれと言わんばかりにため息をついて、劉桜と目が合うと少し寂しげに笑って、別の一点をちらりと見やってから今度こそ去る。
「……おんしも、わしの知らん世界に入ったかぁ。どうせなら、ケツの痛みで痛み虫でも住まわせばええんじゃなかろうか」
「……劉桜、今すぐ首を切り落とされたいか?」
「冗談じゃ。おんしは、きれるのが早いのー」
げらげらと笑う劉桜とは対照的に、陽炎はため息をついて、眼鏡をくいっと人差し指親指で摘みあげた。
「……どこでどうして間違って、忠実じゃない方に走ったんだか。ほんっとうさ、聞いてくれよ! 水瓶座も男なのに忠実じゃない方だし、可愛い俺の好きなタイプの猫っぽい冠座は忠実! 幼女の大犬座はませてる愛だし、色っぽい鳳凰座姉さんは忠実でしかも無垢ときた! お前、蟹座の奴なんか男なのに思いっきりサドで忠実じゃないほうなんだよ……俺が攻撃されて喜んでるんだよ……戦うの手伝わないんだよ。乗り移って攻撃とかさ、攻撃力あげてくれる唯一の攻撃向きの味方なのに、殺そうとするんだよ」
その言葉は、ただの惚気か家族自慢のようにしか聞こえないが、本気で悩んでいてしかも後半とんでもない言葉が聞こえたので、劉桜は心底同情した。
嗚呼、おんし昔からそっちに受けがよかったもんな、と。
それを言ったら、きっと首を落とされるから言わないのだが。
折角見逃して貰えるのに、そして何より久しぶりの旧友との再会だから、劉桜は、情報を与えようと口にした。
それに対して陽炎は嬉しそうな顔をし、鴉座は己のポジションを奪われたからか複雑そうな顔をしてから、お心遣い痛み入りますと礼を告げた。
「わしゃ賞金首の中じゃ弱い方じゃがな、情報通としては有名なんじゃよ」
「へぇ、それは知らなかった。賞金首ルートでの情報通? 成る程、なら情報は手に入りにくい」
「ええか、ニュースソースはわしじゃと明かすなよ。この店、に時折来る奴が居てな。そいつは、フルーティーって名称なんじゃが、何故だか判るか?」
その質問に今度は陽炎が思案する番で、悩む。
鴉座は即座に判ったが、悩む主人の顔は好きだし、下手に教えると機嫌を損ねてしまうので、助けを出さないで黙ったまま主人の顔を眺める。とても柔らかな眼差しのまま。
「……香り?」
「いいや、果物のように人の皮を剥いて殺すのが好きだからじゃ」
「嗚呼、そりゃ確かに今まで無い、痛み虫っぽいな」
おおお、と拍手を今度は陽炎が贈って、それから虚空を見上げて、ふむと陽炎は考え込む。
「それなら、何か今度は大きな星になるかもしれないし、いいな」
「どんな痛み虫になるかは知らん。じゃがな、おんしの噂同様、中々に恐れられてる人物じゃから、気ぃつけるんじゃよ」
「……私は、皮を剥かれる我が愛しの君なんて見たくないんですがねぇー、我が愛しの君の願いのため、そいつの情報収集に出かけましょうか……。嗚呼、挨拶ならば水瓶の馬鹿はやめてくださいよ、話してて落ち込んで死にたくなりますから。そうですね、……こういう場は鳳凰の姫がふさわしいのでは?」
そう言って鴉座は立ち上がり、やれやれとため息をつき、薬草を噛んだような顔をする。
それでも主の為に働こうとしている姿を見ると、劉桜は成る程、主に尽くすというのは嘘ではないのか、と納得した。
鴉座は改めて劉桜へ微笑みかけて、丁寧にお辞儀をしてそれでは失礼いたしますと去っていこうとした。
出口への途中で、ウェイターに間違えられて女性に声をかけられたので、一言二言口説いて成功していたが、主人は既に鴉座から眼を離していて注目されてない。
その様子を少しちらりと鴉座は振り返り、やれやれと言わんばかりにため息をついて、劉桜と目が合うと少し寂しげに笑って、別の一点をちらりと見やってから今度こそ去る。
「……おんしも、わしの知らん世界に入ったかぁ。どうせなら、ケツの痛みで痛み虫でも住まわせばええんじゃなかろうか」
「……劉桜、今すぐ首を切り落とされたいか?」
「冗談じゃ。おんしは、きれるのが早いのー」
げらげらと笑う劉桜とは対照的に、陽炎はため息をついて、眼鏡をくいっと人差し指親指で摘みあげた。
「……どこでどうして間違って、忠実じゃない方に走ったんだか。ほんっとうさ、聞いてくれよ! 水瓶座も男なのに忠実じゃない方だし、可愛い俺の好きなタイプの猫っぽい冠座は忠実! 幼女の大犬座はませてる愛だし、色っぽい鳳凰座姉さんは忠実でしかも無垢ときた! お前、蟹座の奴なんか男なのに思いっきりサドで忠実じゃないほうなんだよ……俺が攻撃されて喜んでるんだよ……戦うの手伝わないんだよ。乗り移って攻撃とかさ、攻撃力あげてくれる唯一の攻撃向きの味方なのに、殺そうとするんだよ」
その言葉は、ただの惚気か家族自慢のようにしか聞こえないが、本気で悩んでいてしかも後半とんでもない言葉が聞こえたので、劉桜は心底同情した。
嗚呼、おんし昔からそっちに受けがよかったもんな、と。
それを言ったら、きっと首を落とされるから言わないのだが。
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