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第十一話 デートは甘い茶番

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 街に出て駅ビルの中にある服屋さんを見てから、旋風の運転で映画付きのショッピングモールに向かう。ショッピングモールでは人が混んでいて、旋風は黒いマスクをずれないように付け直して、オレはバッグや服を見て回る。
 雑貨屋さんで、可愛いゆるキャラのキーホルダーを見つけたものだから、つむじに二つ押しつける。

「ねえ買って、ダーリン」
「客にそうやって強請ってきたんですか、今まで」
「そうだな、皆は買ってくれたけど、お前は買わない?」
「買うに決まってるじゃないですか、他の人に劣りたくないです」

 レジで二つ買うと二つとも渡されたので、オレは思わず笑ってしまい一つを手渡した。
 貰った一つを口づけ、とびきりの媚びを見せる。

「お揃いがいいってどうして分からないかな」
「……令和の小悪魔」
「昭和から小悪魔はいるんだぜ」
「だとしても!! 貴方は小悪魔極まりない」

 とか言いながら旋風ははにかみ、大事そうにキーホルダーを両手で大事そうに抱え込むのだから、あー堪らない。可愛すぎる。

「映画は何がいい? 恋愛物はパスね」
「どうしてですか、好きそうなのに」
「情事のシーンあまり好きじゃないんだ」

 仕事のこと思い出すから。何より得体の知れない気持ちがこみ上げてくる。あまり得意ではないと伝えたら、旋風は映画館でホラー映画のチケットを買った。
 お前、恋愛が駄目ならホラーって極端だな!?
 とか思いながら、縁があまりなくて初めて見る和製ホラーにオレはびくびくし、終始涙目で怯えてしまい。旋風の腕を引っ張り、ひっついていた。

 映画館から出て、恐怖の余韻でオレが寒気を感じてる頃には、旋風はご機嫌だったから嫌味な奴だと少し拗ねてしまう。

「お昼食べよう、旋風は何食べたい?」
「僕は……ハンバーガーがいいです」
「オッケー、ならこの辺確か大きなハンバーガーショップあったよな。アボガド入った奴がいいなあ、オレは」
「僕はチーズが美味しい奴がいいです」

 スマホで調べて、幸い近くの店に大きなハンバーガーを食べられる店が、やはりあったので二人で入って食事をする。
 もぐもぐ食べてると、ティッシュを使って旋風がオレの口端を拭いてくれた。
 オレを見つめる目は甘く蕩けていて、この時間が幸せだよと伝えていた。
 そんな目を見ちゃったら、ちょっと、ときめいてしまう。

「僕は閉じ込めるだけが愛だと思ってました」
「何か変化あったのか?」
「はい。外にいることで、愛らしい貴方の姿を見つけました。二人きりの場合でも見られるかもしれませんが、優越感がとても大きい」
「シたい? いいホテル教えようか」
「すぐに下半身で考えるのやめませんか?」

 不満げに旋風は顔を赤らめ、ぼそりとつぶやきを続けた。

「時間を愛しむ恋も良い物なのですね」
「……オレと旋風なら出来るよ、永遠に」
「どうして? 貴方が否定しないからですか?」
「違う、オレも旋風が好きだからだよ」

 恥ずかしそうに笑う旋風の瞳は、まだ疑念が宿っていて、信じられてないんだろうなあと思った。
 この可愛いハムスターは警戒心が高いのだろうなあと、同時にそれだけ愛されてる実感ににやつく。

 そうでなきゃ、愛してなきゃ裏切られたらダメージだなんて顔をしないから。

「僕も貴方を愛してます」

 知ってるけどちょっと違うだろ、多分。
 オレの愛を信じないけど、自分さえオレを愛していればオレの気持ちはどうでもいいんだろう?
 ねえ、嘘つき。胸が少し痛いね。でも胸の痛みは無視して笑って見た。

 旋風も笑って、茶番めいた甘い空気が流れた。


 夜が濃くなり、デートの終わりも近づいてきた。
 いつもならじゃあ一発いきますか、とホテルにでも誘うところなんだけれど。
 旋風は下半身直結はあまり好ましくないらしく。気持ちいいこと好きな癖にね?

 じゃあ帰ろうかな、みたいな空気を匂わせた。

 旋風は察してくれて、オレを奏さんとこの組まで送ってくれた。
 別れ間際にキスして帰ろうとすると、背中に声をかけられた。

「日向さん、あのね。僕は貴方の愛し方には興味は無い」
「ふうん? じゃあ諦める?」
「……分からないんです。本当に。何もかもが。時間をください」

 返事は誤魔化し濁しておいて、背中に向かって手を振りながら家の中に入った。

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