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罪と罰――理
第六話 涙味のえっち
しおりを挟む奴の声なんてしない。
それどころか奴の気配も感じない。
怖い。
それなのに、精密マイクがオレの卑猥な行為の音と、声を拾い、店の中に響かせる。
その音に反応してしまい、オレはまた興奮してしまうのだ。
「あ……ぅ、ぐっ……イヅミ……何か言ってくれよ、そこにいるんだろ……ッ?!」
まさか帰ったんじゃないだろうか?
あるいは別の誰かがいるのか? どうして返事してくれないんだ。
いつもみたいに、罰だよ、と一言だけでもいいから何か言ってくれよ。
でないとおかしくなりそうだ……!
一人でするところをして見せろと言われ抵抗したのに、半勃ち状態まで攻められてそこからは目隠しをされて放置された。
きぃ、ばたんとドアの音が響いた後は、わざと聞かせるような階段を上がる音。
それでオレは、ああ二階の客が見る位置に居るのだなと気づいたのだが……それから音がしない。
する音はひたすら、オレの行為の音だけ。
根本はネクタイで絞められて――後で弁償しろよ!――オレは声を上擦る。
イきたい。
イきたいと許されたいは同義語ではないのに、こんなときは同義語のような気がして、早く何でも良いから解放されるのを願うのと同時に、あいつの顔が見たいのを強く思う。
お前がサディストなのは知っていたけれど、どれだけサドなんだよ、これ。
声を、聞かせろよ。
この状態から、抜け出させろよ。
この苦悶が罰だというのか?
階段からのゆっくりとした靴音。
かつんかつんと鳴るだけで、胸が焦れたように尖る。
「ぅあっ!?」
突如気配も感じずに、いきなり背後から誰かが耳を舐める行為。
びくりとして耳孔を犯す動作に力強さを感じると同時に、それで声があがる。
「あっ、あっ、あ、やだっ……!」
迸る汗が動くと散っていくのが判る。この汗の一つでも良いから奴に染みつくといいな、なんて思いながら。
まさぐられる胸元、かと思えばゆったりとした動作で胸元から首筋を撫で上げられて、最後は猫のようにのど元をくすぐられる。
嗚呼、じれったい。
オレは許しを乞うために、そののど元をくすぐっていた手にシャブリ付き、指フェラをする。
「んっ…じゅ……ふぁ」
こいつの指って太くてでかい。
他の奴に比べて背丈がばかでかい――何せ二メートル近い背だ。手も当然大きくて、他の奴らと違うのが判る。
そこで確認できたんだ、こいつはイヅミだって。
ほっとすると同時に興奮してくる体、嗚呼、早く罰を。罰を。
お前の与える罰が、オレの全てなんだ。オレの罪垢を洗ってくれ。お前のその酷く残酷な罪因の追及で。
「何感じちゃってるのー? 何回言えば、これが罰だって判るんだよ」
そういって奴はたちあがってる状態のオレのあれをオレの背後から握りしめて、くつくつと酷薄な響きの笑い声を響かせる。
オレは羞恥で顔が真っ赤なんじゃないだろうかと恥じてきて、顔を背けたかったが奴は背けるな、と一言冷たい声で言うと、目隠しを取る。
すると、眩しいライトがオレを照らしていて、嗚呼商品の奴らはいつもこんな目の痛い舞台で盛ってるのか、ご苦労なこったと思った。
「お前は罪人なんだよ、判ってるな?」
「ッあ、あ、イヅミ、お願い、イか……」
「許しを乞うたって、もう聞かない。ネクタイはほどかないよ」
何て残酷な、罪状。
ココまでさせておいて、天国へのチケットはくれないというのか。
イヅミはいかさないと言った癖に、体のあちこちを触り、ローションで湿らせたオレの後ろ孔に対して、また嘲る類の笑いを浮かべて弄り出す。
嗚呼、体の中にあの太い指が入ってくる。
予測では、多分これよりも太くてでかい、奴のあれも入ってくるだろう。
それでも奴は解いてくれない予感がして、オレは少し寒気を感じ、許しを必死に乞う。
「朱莉ちゃんを忘れたお前に、何故許す慈悲を与えなきゃなんねーわけ?」
――忘れてない、忘れてないからこそいつまでも囚人なんじゃねーか。お前専用の。
「うわぁ、帰り大変そうだね。びしょびしょ。お前、行儀悪い」
――お前が仕掛けた罠じゃねぇか。責任取れよ。
「オレじゃなくてお友達くんにでも、許しを貰えばいいじゃない」
――誰でもいいわけじゃないんだ。
ダチじゃダメなんだ。お前の、お前の心からの許しが欲しいんだ。
他の奴の言葉なんて、耳を通り抜けるんだ。
「お前が、…ッあ、…じゃないと、…い、みが…んっない」
「へぇ、お前薄情に忘れてるかと思ったら、自覚はまだ残ってた? 自覚残りながらそんなことを?」
――だからそんなことってどんなことだよ?!
「お前、ぜってぇ自虐的エムだよなぁー」
嘲笑う奴の香水が鼻をついてきた時、奴のでかい指が抜かれて、合図なしに奴のが入ってきたんだ。
いっつも思うんだけど、オレ死ぬんじゃないかって思う。
男と服上死なんて最悪。
声が一段と大きく出ても奴は気にしないで、ぱんぱんと腰を打ち付ける。
奴なりに興奮していたみたいで、後ろからの息が荒く感じる。
嗚呼奴がオレに向いている。オレに向いているから、集中してくれてるんだと幸せな勘違い。
もっと幸せな勘違いは、これが奴の罰だということ。
罰だというのなら、こんなことをしなくてもいいのに。
それともオレを性奴隷にすることで、何か奴に得があるんだろうか?
段々と何も考えられなくなっていく、頭の中が真っ白になっていく、それでも奴はネクタイを外してくれない。
「イかせ…ろ!」
「やだね。お前、今日尤も罪深い日だもん」
「だから、何だよ……ッそれっ!?」
「さぁ…っはぁ、あぐっ……」
奴だけイきやがった、オレの中で。奴ははぁはぁと息を乱していたのを整えると、オレの目隠しの布を外して、にこりと微笑む。
「まあ? それでも? イきたいって言うなら俺の勝手に使いなよ、勝手にディルドにすれば」
ネクタイは外されて、オレの肉棒に奴の手が重なり擦りあげたり先を潰そうとしたりする。
腰は完全に動いてくれず、熱を持て余したオレは自ら腰を淫らにかくかくと振り、果てたのだ。
掃除していたのに、床を思い切り汚した、嗚呼。
シアターに思い切りオレの顔が映っていて、恥ずかしさのあまり俯いた。
「今日は仮釈放なしだ。あと、掃除宜しく」
奴がどエスなのは知ってたけれど、ココまでサディストだなんて知らなかった。
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