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第一部 罪と罰――イヅミ
第三話 色恋未満の相談
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睡蓮は黒く艶めかしい短い髪の毛を片手で弄り、髪型を整える。
整え終わると、鏡をしまい、ポケットに入れてにこりと俺に向かって微笑む。
今は売り買いの出張で、商品をホテルに仕出すところで、送っている。時折こうやって送り迎えもする。基本的には自宅には行かないっていう約束でね。
「片木君虐めも程ほどにしなよ、イヅミ」
次の日、出勤のボディーガードで、睡蓮に付き添ってたら、睡蓮が突如言い出すから、俺は噴き出してしまった。
「ばれてましたか」
「あんなところでするのって、店の従業員ぐらいだからね。皆、あの時間帯はロビーや売り買いに夢中だ」
睡蓮は男の癖に私だのとかいう言葉を使ったり、口調や態度が何処か柔らかなんだよな、この男は。
女性っぽさていうより、なんつーか、男って感じがはっきりとしないけど、男なんだろーなぁとも思う。
なよなよしてるわけでもないから。
ただ単に性格なんだろうと思う。本人は自らを堂々と「男だよ」と微笑んで言うくらいだしな。
「君たちは本当に不思議な関係だね」
「それを言うならそっちだって。ユエルンの事件聞きましたよ。貴方、あれを噛まれたんですって?」
「うん、噛まれてあいつ以外に勃起しなくなった。あいつの所為で私の人生滅茶苦茶だから、虐めてやろうと思う」
にこりと微笑む睡蓮。
睡蓮はユエルンとよく組まされるのだけれど、所有欲に飢えたユエルンが睡蓮のあれをその噛んでしまってね。軽くだけど、かなりやばい状況だったらしくあと一歩でユエルンは睡蓮に対して暴行沙汰をしていたかもしれない。
俺の非番の時にあった出来事だから、朱莉ちゃんのときといい皆俺のいないときを狙っているのかなと疑いたくなる。
ユエルンという男はそれだけ睡蓮に固執しているのに、睡蓮はさらさらと水のように流して笑って気にしすぎない。けれど虐める。
――うん、この人はどっちかというと俺の位置なんだよなぁ。
大体がネコをやるこの人だが、本当は物凄いどエスなんじゃないかなぁって思う。
いや、俺は違うよ。俺は常人。平々凡々のおひとですのよ。
「君はあの事件で、片木君が憎い? あの話、聞いたよ。店の設立初期にあったストーカー事件」
「っはは、睡蓮には隠せないですね。そうですよ」
「私にはね、どう見ても君がそれを枷に片木君を独占しようとしているのにしか見えないんだけれどね。私に対してのユエルンみたいに」
「心外っすね」
「それはどうだろうね。嗚呼、ホテルついたね。ねぇ、私と君は、違うんだからね……大事なところを見逃して逃がしちゃダメだよ。幸せになりなさい」
睡蓮は何処かこの世の全てを悟ってるんじゃないだろうかって思ってしまうことが偶にある。
物わかりのいいこちゃんだ。
確かに俺と睡蓮は似ていても違うんだろう。
睡蓮は愛されてアソコをがぶりとされた。でも俺の場合、憎しみで色々してる。
かといって、大事なところって何か俺が見逃してるところがあると?
よく判らない。
それでも睡蓮は店をよく見ていて観察力が鋭いから、色々と彼の言うことは当てはまったりするのだ。
店に戻って車を駐車場に置いてから、ビルに戻るとドアの付近に人が見える。片方は判る。俺が蹂躙してるやつだ。片木理。
髪の色は茶髪なのか黒なのかよく判らない色をしていて、髪質はあんまりよくない。
シャンプー拘ってる癖にね。
綺麗にスーツを着こなしていて、でもそういう格好は野暮ったいのか、首元のネクタイだけは開店前は少し緩めている。
仕事が始まると、ちゃんとしめるんだけどね。
髪の毛はちょっと長い奴だから、後ろにしばって、少しだけ垂らしている。
だから見かけは、あの無精ひげを剃りさえすれば清潔に見えるだろう――。
十人中七人は、小汚い印象に、一万円。
その隣に居る子は、逆に明るい印象だなぁー。
何だか糸目で、にこにことしている。
黒髪の子で、新しい店の商品だろうか? ネコの顔してるな。いや、でもユエルンも絶世の美女顔のイケメンのくせにタチだったりすることもあるからタチなのかもしれない。 色々考えていると、糸目が俺に気づく。
「あの人?」
「そう」
え、何が。
何、お前、俺がお前虐めてるのちくったの? ばかだねぇ、そんなことしたって俺には痛くも痒くもないのに。
俺は扉に近づくと、糸目が人なつこい笑みで俺にお辞儀をした。
「こんにちわぁ。今度から経理でバイトする理ちゃんの友達でえす」
「え、あ、うん。丁寧にありがとーねぇ。で、それで俺に挨拶?」
「そう、オーナーに統括には顔を知って貰った方がいいってー。そしたらいざというとき、守ってくれるからって。えへへ、宜しくお願いしますね、イヅミさん」
「嗚呼成る程成る程。了解、任せてちょーだいっ。しっかし、今の時期経理のバイトなんて、どーしたんだよ」
「コイツは、今借金の返済中で金欠なんだよ」
お友達くんの代わりにお前が答えなくても別にいーよ。
お友達くんに聞いてるんだから。
俺がちょっとむっとしてるのに気づくと、理は何だよ、と言わんばかりに睨み付けてくる。
それが気にくわなくて、俺はお友達くんにお愛想の笑みを浮かべて、大変そうだけど頑張って、と声をかけてから中に入る。
嗚呼、世の中っておもしろくねぇ!
整え終わると、鏡をしまい、ポケットに入れてにこりと俺に向かって微笑む。
今は売り買いの出張で、商品をホテルに仕出すところで、送っている。時折こうやって送り迎えもする。基本的には自宅には行かないっていう約束でね。
「片木君虐めも程ほどにしなよ、イヅミ」
次の日、出勤のボディーガードで、睡蓮に付き添ってたら、睡蓮が突如言い出すから、俺は噴き出してしまった。
「ばれてましたか」
「あんなところでするのって、店の従業員ぐらいだからね。皆、あの時間帯はロビーや売り買いに夢中だ」
睡蓮は男の癖に私だのとかいう言葉を使ったり、口調や態度が何処か柔らかなんだよな、この男は。
女性っぽさていうより、なんつーか、男って感じがはっきりとしないけど、男なんだろーなぁとも思う。
なよなよしてるわけでもないから。
ただ単に性格なんだろうと思う。本人は自らを堂々と「男だよ」と微笑んで言うくらいだしな。
「君たちは本当に不思議な関係だね」
「それを言うならそっちだって。ユエルンの事件聞きましたよ。貴方、あれを噛まれたんですって?」
「うん、噛まれてあいつ以外に勃起しなくなった。あいつの所為で私の人生滅茶苦茶だから、虐めてやろうと思う」
にこりと微笑む睡蓮。
睡蓮はユエルンとよく組まされるのだけれど、所有欲に飢えたユエルンが睡蓮のあれをその噛んでしまってね。軽くだけど、かなりやばい状況だったらしくあと一歩でユエルンは睡蓮に対して暴行沙汰をしていたかもしれない。
俺の非番の時にあった出来事だから、朱莉ちゃんのときといい皆俺のいないときを狙っているのかなと疑いたくなる。
ユエルンという男はそれだけ睡蓮に固執しているのに、睡蓮はさらさらと水のように流して笑って気にしすぎない。けれど虐める。
――うん、この人はどっちかというと俺の位置なんだよなぁ。
大体がネコをやるこの人だが、本当は物凄いどエスなんじゃないかなぁって思う。
いや、俺は違うよ。俺は常人。平々凡々のおひとですのよ。
「君はあの事件で、片木君が憎い? あの話、聞いたよ。店の設立初期にあったストーカー事件」
「っはは、睡蓮には隠せないですね。そうですよ」
「私にはね、どう見ても君がそれを枷に片木君を独占しようとしているのにしか見えないんだけれどね。私に対してのユエルンみたいに」
「心外っすね」
「それはどうだろうね。嗚呼、ホテルついたね。ねぇ、私と君は、違うんだからね……大事なところを見逃して逃がしちゃダメだよ。幸せになりなさい」
睡蓮は何処かこの世の全てを悟ってるんじゃないだろうかって思ってしまうことが偶にある。
物わかりのいいこちゃんだ。
確かに俺と睡蓮は似ていても違うんだろう。
睡蓮は愛されてアソコをがぶりとされた。でも俺の場合、憎しみで色々してる。
かといって、大事なところって何か俺が見逃してるところがあると?
よく判らない。
それでも睡蓮は店をよく見ていて観察力が鋭いから、色々と彼の言うことは当てはまったりするのだ。
店に戻って車を駐車場に置いてから、ビルに戻るとドアの付近に人が見える。片方は判る。俺が蹂躙してるやつだ。片木理。
髪の色は茶髪なのか黒なのかよく判らない色をしていて、髪質はあんまりよくない。
シャンプー拘ってる癖にね。
綺麗にスーツを着こなしていて、でもそういう格好は野暮ったいのか、首元のネクタイだけは開店前は少し緩めている。
仕事が始まると、ちゃんとしめるんだけどね。
髪の毛はちょっと長い奴だから、後ろにしばって、少しだけ垂らしている。
だから見かけは、あの無精ひげを剃りさえすれば清潔に見えるだろう――。
十人中七人は、小汚い印象に、一万円。
その隣に居る子は、逆に明るい印象だなぁー。
何だか糸目で、にこにことしている。
黒髪の子で、新しい店の商品だろうか? ネコの顔してるな。いや、でもユエルンも絶世の美女顔のイケメンのくせにタチだったりすることもあるからタチなのかもしれない。 色々考えていると、糸目が俺に気づく。
「あの人?」
「そう」
え、何が。
何、お前、俺がお前虐めてるのちくったの? ばかだねぇ、そんなことしたって俺には痛くも痒くもないのに。
俺は扉に近づくと、糸目が人なつこい笑みで俺にお辞儀をした。
「こんにちわぁ。今度から経理でバイトする理ちゃんの友達でえす」
「え、あ、うん。丁寧にありがとーねぇ。で、それで俺に挨拶?」
「そう、オーナーに統括には顔を知って貰った方がいいってー。そしたらいざというとき、守ってくれるからって。えへへ、宜しくお願いしますね、イヅミさん」
「嗚呼成る程成る程。了解、任せてちょーだいっ。しっかし、今の時期経理のバイトなんて、どーしたんだよ」
「コイツは、今借金の返済中で金欠なんだよ」
お友達くんの代わりにお前が答えなくても別にいーよ。
お友達くんに聞いてるんだから。
俺がちょっとむっとしてるのに気づくと、理は何だよ、と言わんばかりに睨み付けてくる。
それが気にくわなくて、俺はお友達くんにお愛想の笑みを浮かべて、大変そうだけど頑張って、と声をかけてから中に入る。
嗚呼、世の中っておもしろくねぇ!
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