覗き見よりも俺を見て?

かぎのえみずる

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第一部 罪と罰――イヅミ

第一話 罪と罰

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 神様、例えばこの世界に愛が溢れているのだとしたら、今の俺たちはどういえばいいのでしょうか。
 愛してるという言葉すら交わさない。
 だって愛してなんかいないから。
 これは罰だ。
 これは罪を購い続ける罪人を処刑し続けているのだ。
 罪人は永遠に、許されないことを行ったから――。

 噛みついてやる、罪人の首筋。
 罪人がひっと喉をひくつかせるが、下の方だってひつくかせてるのが判ってるから、俺は、下の根っこをぎゅっとつかんで、これは罰だと言うことを知らしめようとするが、それすら感じるようになってきているので、この男はもうダメなんだと言うことを知り、俺はため息をつく。

 神様、俺はこの男が憎いんです。
 憎いんです。とてもとてもとてもとても、毎日夢に出て魘されるぐらいに。
 恋愛感情? オーノー、そんなのとんでもない。
 こいつに対してあるとすれば、憎悪ぐらいなものだ。
 こいつを罰するとすっきりするから、だから性奴隷にしてやってる。

 こいつもそれを望んでいるからな。

 神様、世にも淫乱なこの男を紹介いたしましょう。
 この男は、片木理かたぎさとる。昔はさっちゃんーなんて呼んでふざけたりもしたけど、それは遠い昔のお話しであり、今は理と呼び捨てだ。
 理は随分と無愛想でかわいげの無い、百八十センチの男性。
 日本人の割に超背丈でかくない?? まあ組み伏せてやるけど。
 よく染めるのが面倒なのか、茶髪からの黒髪でプリン頭をしている。
 口元には無精髭、剃ればきっとそれなりの見目である日本人なのになあ。
 筋肉は細マッチョってやつかな、なんで体型知ってるかって? 徐々に分かるよ。
 淫乱っつってる時点で少しお察しだろ?
 眼孔は鋭くて焦げ茶色している。三白眼? なんつーの、すげえ怖い目つき。
 それを溶かすのは俺の歪んだ愉しみ。



 こいつの許せないこと、そのいち。
 こいつは失敗をしたからといって、ボディーガードという職業から、店のドアマンになったこと。
 この店は、商品同士が疑似恋愛してその場でプレイさせてのぞき見するという風俗店。
 時にはその商品を売り買いしたりしてね?
 その商品達を守るのが、俺たちボディーガードで、俺は統括役のイヅミ。
 よくね、さとるに言われるんだけどね、俺の当て字怖いみたい。
 畏罪って当て字なんだけど、似合いすぎだ、馬鹿野郎って言われるんだ。
 この俺に馬鹿野郎なんつーことぬかすんで、その日は口枷してやったんだけどね。
 背丈も馬鹿でかいから、百九十センチあって迫力がすごいらしいんだ。
 髪の毛は蜂蜜よりは、プラチナ混じりの金髪。
 目は少し垂れていて、へらへらとよく笑いかけると青い目は笑っていないって怒られる。
 筋肉はがっしりとしてて、雄っぱいなんて流行ってるから、商品たちがこぞって触ろうとするのでヤメテーと絹のような悲鳴をあげる日もある。
 俺は本来海外で様々な特定個人を作らずボディーガード職をしていたのだが、ある日友人の風俗店のオーナーをし始めたという日本人が、「おねがーい、うちの店守ってー!! お給料はずんじゃうよー」という言葉を信じたわけではないが、このオーナーという人間の駄目さ加減を知ってる人間ならば「おいおい大丈夫か」とつい手を貸してやりたくなる。
 それ故に俺はココで働き、統括役なんて面倒なことを引き受けていた。

 そんな俺の目の前に現れた天使。
 天使のように美しいあの子は、大人気だった。
 枯葉達双子が競い合わせたら足下にも及ばないだろうほどの、人気だったんだ。
 枯葉達双子はいつの間にか辞めていたもんで、俺は驚いた。
 町中で見かけたときは、柚ちゃんの可愛らしい微笑みで、幸せになれたんだなって思ったけどね。
 話がずれた、兎に角伝説級の商品がいたんだ。

 アノコは、きっと究極的な天使! でもね、天使はいずれ悪魔の手によって消される運命と俺たちは思い知らされることになる。
 アノコはストーカーの攻撃に負けて、死んでしまった。
 それを、理は目の前でみすみす消されるところを、ボディーガードでありながら、そのまま見過ごしたんだ。

 許せないこと、そのに。
 俺の大好きだった店の商品、朱莉あかりちゃんを見殺しにしたこと。

 そんなことってある?
 朱莉ちゃんと大好きよ、愛してる、本当だってばって何回も言っても信じて貰えなかったけれど、朱莉ちゃんは朱莉ちゃんで別の子を好きだったみたいだから、本心をからかいのネタにして嘘にした。
 嘘の気持ちにすることで、恋心を封じ込めて崖から突き落としてばいばいした。
 でも俺は朱莉ちゃんが笑うだけで、心が温かくなって幸せだったから後悔はその時点ではなかった。

 だが人生、そうそう巧くいくわけ無くて。
 ある日、理が朱莉ちゃんのボディーガードの日、朱莉ちゃんは彼のストーカーの手によって殺された。

 吃驚したよ。
 だって、何時間も前まではにこにこと笑みを見せてさ、俺もへらへらとしてさ。お互いに冗談の言い合いっこしてさ、愛してるーあたしもーなんてオネエの真似して馬鹿のように言ってたのに、本当に彼は死んでしまった。

 そこで簡単に立ち直るのは許せないが、かといって逃げるのも許せない。
 だが、理は逃げて、オーナーの慈悲でドアマンに職を変更しやがったんだ――。
 だから、俺は罰を与え続ける。未来永劫、お前の魂に、このことを忘れないよう――。


 朱莉ちゃんを二度と見えない憂さ晴らしを、ようはしているんだ。
 罰を与えるという名目で、ずっとずっとこの背丈がほんのすこうししか変わらない男臭い男を雌扱いし続けている。

 お前が俺の雌になるんだよ、理――。

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