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第一章 リーチェ編
第十七話 バッドエンド回避
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場所を変えて、俺とキャロラインは授業を早退した。
授業に関しては、学ぶのも学ばないのも自己責任ということで理由を追及されなかったが、ただキャロラインはそわそわとしていた。
場所を校内にあるカフェテラスで話そうと思ったので、カフェテラスにて誘うと、キャロラインは顔を赤らめ、嬉しげに微笑んだ。
イミテは逆に、つんとした顔でキャロラインが笑った瞬間に俺の足を蹴ってきた。
「ここのふわふわケーキが絶品なんだよ!」
ふわふわケーキという物は、転生する前の世界で言うなれば、生クリームが山ほど乗り切ったパンケーキのことである。やたらと果物で装飾されている。既に毒味済みのようではある。
キャロラインはそれを美味しそうに食べながら、微苦笑した。
「授業をいきなりさぼるなんて、お姫様失格なのかもね」
「いいんじゃないんですか、たまには。これから真面目に取り組めばいいでしょう、キャロライン姫、お口元にクリームついてますよ」
口元についた生クリームを指摘するとどこか判らないらしく、おろおろとしていたので、そっと指先でとってあげる。
「はい、あーん」
「え」
「クリーム勿体ないでしょう」
キャロライン姫は瞬いてから、恥じ入るように俯いて顔がいちごみたいだ。
同時にイミテから机の下で足攻撃が猛攻になったので、イミテに視線で訴える。
イミテはぺっと唾を吐くような仕草をして、腕を組んでふんぞり返り、紅茶を口にして「苦い!」と目を白黒させた。
紅茶と奮闘するイミテを放っておこう。
「それで、ヴァスティがどうしたんですか」
「やっぱり、君はヴァスティを知っているんだね!? 昔から誰にも教えちゃいけないヒトで、誰も名前を口にすることのない存在だったんだよ。ヴァスティは……人の形をして、人と同じ心を持ち、人と同じ言葉を話す神様なんだ」
「……そこが悲しい性だと思いますけどね」
「うん、ヴァスティはね、予言が出来てね。予言が外れた出来事が今までなかったんだ。だけど、……最近外れるって悔しげなんだ。特に、私の未来を予言する内容で。でも、私にはそれが嬉しいの。……リーチェ様は、私の行動を、不自然に思いますか? 言動、なにもかも」
「うーん、ええと、……心から言ってる感じがするときとしないときが、ありますね」
「……ヴァスティに、そうしたほうが未来のためだって言われてるから行動したりしてるときがあるの……私の未来も、私の言動も全て世界のため。……私、お人形みたい」
言葉を失ってイミテと思わず視線を交じらせた、イミテも流石に驚いた様子だった。
俺は、この予兆はまずい、と感じる。
これ、見覚えあるぞ……確か……。
「だからね、今が嬉しくて。ヴァスティの言葉はもうどうせ外れるから、私に全て任せるってお父様も仰ってくださったの」
ああああああああああ!!!!!!!
そうくる!?!! それあからさまに、ヴァスティ不要のバッドエンドルートだぞ?!!
今からでも更正間に合うか?!!!
これ、姫様の本命が誰にもいないパターンのやつだ!
誰にも本命フラグが立ってない場合の!
誰か、誰か候補の方フラグ立てて!! そこから俺がヴァスティルートにしてやるから!!
頼むからァアアアアアアア!!!
って思い至ってから、はっとした。
俺、候補じゃん。ここで、俺がフラグ持ち直せば、バッドエンド免れるンじゃねぇの?!!
授業に関しては、学ぶのも学ばないのも自己責任ということで理由を追及されなかったが、ただキャロラインはそわそわとしていた。
場所を校内にあるカフェテラスで話そうと思ったので、カフェテラスにて誘うと、キャロラインは顔を赤らめ、嬉しげに微笑んだ。
イミテは逆に、つんとした顔でキャロラインが笑った瞬間に俺の足を蹴ってきた。
「ここのふわふわケーキが絶品なんだよ!」
ふわふわケーキという物は、転生する前の世界で言うなれば、生クリームが山ほど乗り切ったパンケーキのことである。やたらと果物で装飾されている。既に毒味済みのようではある。
キャロラインはそれを美味しそうに食べながら、微苦笑した。
「授業をいきなりさぼるなんて、お姫様失格なのかもね」
「いいんじゃないんですか、たまには。これから真面目に取り組めばいいでしょう、キャロライン姫、お口元にクリームついてますよ」
口元についた生クリームを指摘するとどこか判らないらしく、おろおろとしていたので、そっと指先でとってあげる。
「はい、あーん」
「え」
「クリーム勿体ないでしょう」
キャロライン姫は瞬いてから、恥じ入るように俯いて顔がいちごみたいだ。
同時にイミテから机の下で足攻撃が猛攻になったので、イミテに視線で訴える。
イミテはぺっと唾を吐くような仕草をして、腕を組んでふんぞり返り、紅茶を口にして「苦い!」と目を白黒させた。
紅茶と奮闘するイミテを放っておこう。
「それで、ヴァスティがどうしたんですか」
「やっぱり、君はヴァスティを知っているんだね!? 昔から誰にも教えちゃいけないヒトで、誰も名前を口にすることのない存在だったんだよ。ヴァスティは……人の形をして、人と同じ心を持ち、人と同じ言葉を話す神様なんだ」
「……そこが悲しい性だと思いますけどね」
「うん、ヴァスティはね、予言が出来てね。予言が外れた出来事が今までなかったんだ。だけど、……最近外れるって悔しげなんだ。特に、私の未来を予言する内容で。でも、私にはそれが嬉しいの。……リーチェ様は、私の行動を、不自然に思いますか? 言動、なにもかも」
「うーん、ええと、……心から言ってる感じがするときとしないときが、ありますね」
「……ヴァスティに、そうしたほうが未来のためだって言われてるから行動したりしてるときがあるの……私の未来も、私の言動も全て世界のため。……私、お人形みたい」
言葉を失ってイミテと思わず視線を交じらせた、イミテも流石に驚いた様子だった。
俺は、この予兆はまずい、と感じる。
これ、見覚えあるぞ……確か……。
「だからね、今が嬉しくて。ヴァスティの言葉はもうどうせ外れるから、私に全て任せるってお父様も仰ってくださったの」
ああああああああああ!!!!!!!
そうくる!?!! それあからさまに、ヴァスティ不要のバッドエンドルートだぞ?!!
今からでも更正間に合うか?!!!
これ、姫様の本命が誰にもいないパターンのやつだ!
誰にも本命フラグが立ってない場合の!
誰か、誰か候補の方フラグ立てて!! そこから俺がヴァスティルートにしてやるから!!
頼むからァアアアアアアア!!!
って思い至ってから、はっとした。
俺、候補じゃん。ここで、俺がフラグ持ち直せば、バッドエンド免れるンじゃねぇの?!!
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