勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
88 / 88
金色の鐘を鳴らせ編

第八十八話 幸せな結末を。(完)

しおりを挟む
 神聖なバージンロードを歩く、兄様のパーティに入ってる魔法使いが奏でるパイプオルガンで音楽を演奏して。
 兄様に連れられて歩き、時々白いウエディングドレスに躓きそうになりながら、ゼロの元へ歩く。
 長かった、とても。
 ここまでくるのにとても苦労したのねゼロ。

 でもね、私貴方がいつも私を愛してくれていたの嬉しかったの。
 何を言っても何をしても貴方は耐えて、理由なく怒鳴らず受け入れ、私の悲しみごと包み込んでくれたの。

 そんな人、この世で一人で十分って思わない?

「ゼロ……かっこいい」
「ウル、お前も美しいよ」
「式の途中でいちゃつくのやめてもらえるゥ?」
「兄様ったら……有難う。認めてくれて」
「あー、だってさ、そりゃ世界が平和になるのが勇者の願いだし。それを叶えられちゃあなあ。オレも好きな人と結ばれるときは宜しくくそ魔王」

 こっそりとシラユキを指さす兄様に私達は笑い、シラユキはきょとんとしている。人間に戻ったアルギスがシラユキに咳払いして、シラユキははっとする。
 兄様が離れ、私とゼロは式で誓いの言葉を結ぶ。

「汝、魔王ゼロを婿と迎えますか?」
「はい、いついかなる時も添い遂げます」
「汝、神ウルシュテリアを嫁と迎えますか?」
「この世界の民を敵に回しても、神の寵愛は頂こう――いついかなるときも添い遂げる」

「誓いのキスを」

 私とゼロは互いに見つめ合い、ゼロが私の腰を抱き寄せ、私はゼロの首根に抱きつきキスをした。
 こんなに幸せなキスをしたのは初めてよ。ゼロもそうだといい。
 皆が拍手をしてくれると、私は笑顔でゼロと顔を寄せ合う。

「これで二人は夫婦と認める!」
 証人の言葉に私達は嬉しさで目元に涙をにじませた。

「ゼロ、ずっとずっと待たせてごめんね。私をあげる、だから受け取って」
「生涯大事にしよう、お前も余から離れられないと覚悟するがいい――ああ、なんといじらしい花嫁だ。お前は余の誇りだよ」

 ライスシャワーを浴びながら、私とゼロは荷物が沢山入った馬車に乗り込む。
 雪合戦の時勝ち取った休暇を使うの。
 二人で旅をするの、きっと楽しいわ。

「魔王様、ご立派な式でした、このシラユキとても、とても感動致しました!!」
「有難う、シラユキ、次はきっとお前だな」
「え!? な、何故です!? 魔王様、どうして!?」
「後に思い知るとよいよ、お前の後ろにいる人間から聞くといい。その人間は些か厄介な義兄だがな。さて、花嫁よ、行き先は何処を願う? 全てお前の望むままに――」


「それなら……」


 いつか二人で初めてデートした街に、最初は行きたい。

 きっと私にとって、貴方が初めて私自身の心に触れてくれた日のことを思い出すから。


 世界一幸せな花嫁となり、私はゼロと一緒に新婚旅行へ思いをはせた。

 ねえ、ゼロ。私、物語はハッピーエンドがいいって言ったの覚えてる?
 貴方といたから叶ったの。貴方が私にとってのハッピーエンドに必要な王子様なのよ。
 自覚してね、ゼロ。私の雄牛さん。
 貴方の笑顔が、私を幸せにしてくれるんだから。


 ――完。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...