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金色の鐘を鳴らせ編
第八十四話 神様を名乗る少女
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次の日、支度をしっかり調えて、私はゼロと二人の時間を貰っていた。
ゼロは私に怯えたようなキスを幾度もしていた。
伏せるような目で、私を見つめ、何かに縋りたいような目をしていた。
「大丈夫、戻ってくるわきっと」
「うむ……ウル、いつまでも。いつまでも待っているよ」
ゼロは何度も私の存在を確かめるように抱きしめて、やがてラクスターに呼ばれ、城の外に出ることにした。
城の外には皆がいて、私の無事を祈ると声をかけてくれた。
皆に挨拶を済ませ、やがて私は――。
「それじゃいってきます」
と、ラクスターの背に乗って、天へ飛び立った。
ラクスターは浮かない顔というより、苦い顔で空を睨み付けていた。
時折雪に顔が当たり、擽ったいと呟く。
やがて気が遠くなりそうなほど空を飛んでから、雲の上に降り立ち。
白雲はふわふわとした心地で歩くのにこつがいるけれど、ラクスターに支えて貰いながら天国の門に来た。
「貴様、ラクスター!? 堕天した身が何しにきた?!」
「その汚い羽根で入ってくるな!」
「アア? 節穴かよ、世界一綺麗な真っ黒い色だろうが! お前らじゃ話にならねえ、ルネ呼んでこい。兄貴だ、兄貴」
「ルネ様に何用で――!?」
天国の門番二人が慌てて跪く。門の奥からはラクスターとよく似た面持ちのルネが現れた。
真っ白い幾つもの翼を広げ、穏やかに微笑んだ。
「僕にその羽根を返しにきたのですよ。お帰り、ラクスター様」
「っち、用事はそれだけじゃねえのは知ってるんだろ!」
「ええ。神様なら此方です。ついておいで、お二人とも」
ルネは優しく微笑むと白雲に光りを射して、道を示した。
ルネはその道を辿る、私達もふらつきながらもなんとかルネについていった。
だいぶ歩いた先に、ヴァルシュアの言っていた通りの少女がいた。
猫のような面持ちの、ベリーショートヘアの少女。真っ白い髪の毛で、にこにこと微笑んでいる。清楚なオフホワイトのドレスは裾が背丈より三倍もあって転びそうだ。幾重にも仙女の衣のように生地が重なっていて重そうでもある。
「待っていたのよ、ラクスターちゃん! ウルちゃん!」
「壮大で長くて面倒な釣り、お疲れサン」
うんざりとした表情でラクスターが皮肉を放ち睨み付けても、少女はものともせずにこにことしたままである。
「そうよう、大変だったの! あらゆるものがウルちゃんを連れて行くの邪魔するから、それならいっそ此処にくるよう仕向けなきゃって張り切ったわ! あたしはずっと欲しい、欲しいって願っていたのに邪魔が沢山」
「……王様の条件も、神様がそうさせるようにしたのですか?」
「ちょっとだけお願いしただけよ? あたしのもとに来させて、って念じただけ。そう、神様って立場は便利なの。ちょっと念じてお願いしただけで、ちょっとだけ思い通りになる! 少し回り道はしたけれど、貴方だって結局は思い通りだわ、ウル」
にこにこと口元に手をおいて、嬉しげな神様。
にこにことした面持ちが、やがてぼんやりとしていく。
何が起きたのか私には分からない、気づけば意識が飛んでいて、指先に力が入らず倒れていて。ラクスターの叫び声が聞こえる。
目を閉じて起きれば、目の前には倒れている「私」自身の姿があった。
「私」を心配するラクスターは一瞬で目を見張り、すぐさま私と視線が合う。
「なんで……何でそっちの身体にいるんだ!?」
「っふふふふ、この日を長く待っていたわ……」
「私」が身体を起こして、妖艶な笑みを浮かべる。
私と神様の身体が交換されたのだった。
ゼロは私に怯えたようなキスを幾度もしていた。
伏せるような目で、私を見つめ、何かに縋りたいような目をしていた。
「大丈夫、戻ってくるわきっと」
「うむ……ウル、いつまでも。いつまでも待っているよ」
ゼロは何度も私の存在を確かめるように抱きしめて、やがてラクスターに呼ばれ、城の外に出ることにした。
城の外には皆がいて、私の無事を祈ると声をかけてくれた。
皆に挨拶を済ませ、やがて私は――。
「それじゃいってきます」
と、ラクスターの背に乗って、天へ飛び立った。
ラクスターは浮かない顔というより、苦い顔で空を睨み付けていた。
時折雪に顔が当たり、擽ったいと呟く。
やがて気が遠くなりそうなほど空を飛んでから、雲の上に降り立ち。
白雲はふわふわとした心地で歩くのにこつがいるけれど、ラクスターに支えて貰いながら天国の門に来た。
「貴様、ラクスター!? 堕天した身が何しにきた?!」
「その汚い羽根で入ってくるな!」
「アア? 節穴かよ、世界一綺麗な真っ黒い色だろうが! お前らじゃ話にならねえ、ルネ呼んでこい。兄貴だ、兄貴」
「ルネ様に何用で――!?」
天国の門番二人が慌てて跪く。門の奥からはラクスターとよく似た面持ちのルネが現れた。
真っ白い幾つもの翼を広げ、穏やかに微笑んだ。
「僕にその羽根を返しにきたのですよ。お帰り、ラクスター様」
「っち、用事はそれだけじゃねえのは知ってるんだろ!」
「ええ。神様なら此方です。ついておいで、お二人とも」
ルネは優しく微笑むと白雲に光りを射して、道を示した。
ルネはその道を辿る、私達もふらつきながらもなんとかルネについていった。
だいぶ歩いた先に、ヴァルシュアの言っていた通りの少女がいた。
猫のような面持ちの、ベリーショートヘアの少女。真っ白い髪の毛で、にこにこと微笑んでいる。清楚なオフホワイトのドレスは裾が背丈より三倍もあって転びそうだ。幾重にも仙女の衣のように生地が重なっていて重そうでもある。
「待っていたのよ、ラクスターちゃん! ウルちゃん!」
「壮大で長くて面倒な釣り、お疲れサン」
うんざりとした表情でラクスターが皮肉を放ち睨み付けても、少女はものともせずにこにことしたままである。
「そうよう、大変だったの! あらゆるものがウルちゃんを連れて行くの邪魔するから、それならいっそ此処にくるよう仕向けなきゃって張り切ったわ! あたしはずっと欲しい、欲しいって願っていたのに邪魔が沢山」
「……王様の条件も、神様がそうさせるようにしたのですか?」
「ちょっとだけお願いしただけよ? あたしのもとに来させて、って念じただけ。そう、神様って立場は便利なの。ちょっと念じてお願いしただけで、ちょっとだけ思い通りになる! 少し回り道はしたけれど、貴方だって結局は思い通りだわ、ウル」
にこにこと口元に手をおいて、嬉しげな神様。
にこにことした面持ちが、やがてぼんやりとしていく。
何が起きたのか私には分からない、気づけば意識が飛んでいて、指先に力が入らず倒れていて。ラクスターの叫び声が聞こえる。
目を閉じて起きれば、目の前には倒れている「私」自身の姿があった。
「私」を心配するラクスターは一瞬で目を見張り、すぐさま私と視線が合う。
「なんで……何でそっちの身体にいるんだ!?」
「っふふふふ、この日を長く待っていたわ……」
「私」が身体を起こして、妖艶な笑みを浮かべる。
私と神様の身体が交換されたのだった。
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