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夏は過激編
第七十七話 夏の祝福
しおりを挟む次の組み合わせに与えられたのは、ボールアソビだった。
ネットを使ったボール遊びで、風船のように軽いボールでパスを続ける行為だった。
但し投げるのではなく、両手で打つ行為。
「人間はこんなことしていて楽しいのですか、ウル様、ギル!?」
「そこはオレも疑問なんだが、どうなんだ、奥様と勇者さんよお!」
シラユキとラクスターの打ち合いは甘酸っぱさは一切無く、どちらかといえば、スポーツをきちんと楽しんでいる感覚だった。
夏の精霊王も、これには満足いかない様子であった。
『色気が欲しい、色気が足りないのだ、お前たちには! 夏と言えば色気!! それこそが夏の正義だろう!!』
「次は余たちか。ならば期待していいぞ、何せ余とウルは夫婦であるからなあ!!」
ふふふふふ、と不穏な笑みを浮かべるゼロに私は視線のやり場に困っていた。
こんな筋肉美を簡単に惜しげも無く出さないでほしい。
皆ゼロに見とれるじゃないの!!
『ならばそうだな。色気をくれるのであれば、何でも良い』
この精霊王さてはただのエロい人だったりしない?
と、思いながら私はゼロに困ったように視線を配ると、ゼロは深く何度も頷き提案してくれた。
「色気ならもう既にこの場に充分に溢れているだろう。水着こそが夏の至高、そこに工夫や差異は要らないのだ」
「ゼロ、それって何もしないでいいってこと?」
「我が花嫁の困る姿も愛らしいが、これ以上はプライベートで頼むよ」
ゼロは笑ってマントを私に着せてくれると、どうだ、と言わんばかりに夏の精霊王へ見やる。
精霊王は感銘に打たれたようで、何度も頷いていた。
『よくぞ見抜いた! 夏の水着こそが至高! 工夫も差異もなくていいのだ!! 一手間加えたらそれは……ただのプレイだ!!』
「ちょっと精霊王様の言ってることが高レベルすぎて何を言ってるか私分かりませんわ」
シラユキが悩みながら言葉をつげると、夏の精霊王はにこやかに告げた。
『合格であるということだ。素敵な水着だった、良き物を有難う、魔物達よ。お前たちを認めよう、残りは秋の者か。秋の精霊王には気をつけると良い、あいつは……まあよい、会えば分かるだろう』
夏の精霊王は城の周りにたくさんのひまわりを咲かせて声だけ残し去って行った。
『夏の祝福をくれてやろう、先行きに我らが加護を与えん。汝らよ、幸運を祈る』
慌ただしい夏の精霊王だったけれど、恥ずかしい格好だったけれど、一番今までの精霊のなかで好意的にしてくれた気がして私はゼロと見合って笑ってから自分の格好を思いだす。
「夏はもうお終いよ!! 私には夏の良さなんて分からない!!」
後日、私は暫く部屋に引きこもった。
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