勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
41 / 88
蒼い花の隠れた恋慕編

第四十一話 奥様の味方だ

しおりを挟む

 ミディ団長は指先に光りが集う魔法を使いながら、ベッドにつかせたゼロの容態を見てくれた。
 結論はラクスターと同じ、呪いが原因であった。

「魔王様がこうなっていることは人間側に知られると厄介だね、こうなっている間は代理指揮官を呼ぼう。そこで食い止めて貰うしかないね」
「あの、ゼロは……」
「呪いで暫く起きることができないんだね。いつ起きるかも不明、多分ユリシーズ様次第だね、この刻印からして。ユリシーズ様の刻印だ。無理矢理起こすには、条件をいくつか整えなければならない」
「条件……」
「まず、満月の夜に気付け薬を調合する。このときに使う水は、新月の翌日の朝露であること。新月の次の日の朝露には魔力が沢山含まれているからね」
「ほ、他には?」
「体温が上がりやすいだろうから、冷やし続けること。これはシラユキに頼もう」
「お任せください!」
 呼ばれたシラユキは泣きそうな顔だったものを、きりっとさせて頷いて意気込む。
 最後にもう一つ条件があるのか、ミディ団長は言いよどむ。
「さて、最後の条件、これが一番厄介だね。満月の日に咲く、蒼雫の花で薬を調合する。ただの花だと軽んじてはいけないね、この花は雷頂(らいちょう)にある」

 何処なのかと聞こうとすれば、ラクスターとシラユキは一気に青ざめた。
 不審に思い視線でラクスターに問いかけると、ラクスターは素直に答えてくれた。

「天国の門の一歩手前と言われるほどに、高い山があってな。そこのてっぺんだ」
「ら、ラクスターなら飛べば採れるでしょう?」
「蒼雫の花は、純潔の乙女……つまり摘むのが未婚の女性でないと摘んだ途端に枯れてしまうね。つまり、奥様が取りに行くしか希望がないんだね」
「……分かった、行きましょう!」
「高い山を登るのは大変だから、確かにラクスターに背負って貰うのは良い考えだと思うね。ラクスター、頼めるね? 奥様のことも、山のことも」
「お、れは……」
「ラクスター! お願い、連れて行って欲しいの! ゼロが、ゼロがこのまま起きないかもしれない!」

 躊躇っていたラクスターへ私が懇願すると、ラクスターはむっとした顔つきをしてから考え込み、安心するように笑いかけてくれた。

「オレは…………奥様の味方だ」
「連れて行ってくれるのね!? 有難う、ラクスター!」
「…………厄介な魔王だな、こんなときに。ミディ、ユリシーズについてはどうするんだ?」
「今、王がいない間に何かを仕掛けられても困るからね、勇者にユリシーズを倒しに行くようけしかけるつもりだね。手間取って時間稼ぎくらいはしてくれるだろうね」
 ラクスターの質問に、ミディは頷き、至急荷物を作ってくるよう私達に命じた。

「くれぐれも頭目がいないことがばれるのは厄介だからね、二人で取りに行って貰うね。気をつけるんだよ」
「へ!? 他に誰かいかねえの!?」
「奥様の他に、抱えられるのかね、君は?」
「あ……そうか、わか、った……」
「ほら、荷物を作ってさっさと取りに行くんだね! 蒼雫の花なら、雷頂にそれしか咲いてないから行けば分かるね」

 ミディ団長は手をぱんっと両手で軽く柏手をし、私達に勢いづかせた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...