39 / 88
星流れのデート編
第三十九話 信頼と信用
しおりを挟む
アルギスはデートを終えると、夜に一緒にラクスターと三人で星の流れる様を見ると素直に帰って行った。
目的が分からなかった。
ただ去り際に「眠れる獅子を起こしたかった、それでまた僕がつけいる隙が出来るから」と私に笑いかけていたのが気になった。
アルギスが帰って行き、ラクスターと二人で馬車に乗る。
ラクスターは面妖な表情をずっとしていた。
「どうしたの」
「いや……今日一日ずっとなんつーか、むかむかして」
「どうして? 何か悪い物食べた?」
「違う。オレにもわかんねーよ……なんか、あいつと奥様が並ぶ姿見てたら、ちりって、胸が痛くて。意味わかんねーし」
ラクスターは無意識なのだろうけれど、私に手を伸ばし手をそっと繋いだ。
手を繋いでおきながら、ラクスターは自分で吃驚し私の顔を二度見したので、私は笑いかけた。
「大丈夫、アルギスはしばらくの間何もしてこないわ」
「……奥様、その持ってる花束」
「クロユリ?」
「それ花言葉相当不吉だぞ。恋って意味もあるが、呪いって意味もある」
「……でしょうね、その話をしていたわ」
「燃やそうぜ、どうせ魔王だって燃やすんだから」
「本当に苛ついてるのね、ラクスター」
アルギスとのデートから帰ると、シラユキが速攻やってきて、私達の様子を見つめた。
「ご無事でして!? 何よりです! 初の星流れは魔崩れに取られましたが、明日こそが本番! 魔王様のために肌を綺麗にしていきましょう、奥方様!」
「それよりもその花束先に処理したほうがいいぜ、あの魔崩れからの呪いだ」
「あらクロユリ、不吉ですこと! 奥方様、此方の処分は私どもが致しますわ!」
クロユリが手元から離れていく瞬間に、何故か死ぬ前に泣きじゃくっていたアルギスが脳裏に過って、きまずい思いをした。
あの時、確かにアルギスは寂しがっていた。
「一人にしないで」と――。
*
次の日にゼロと二人で星流れを見に行く、夜に星がしゅっと一瞬で流れていく様はアルギスと見たけれど、ゼロと二人で見るほうが心は躍る。
でも互いにぎこちない距離感になってしまい、最初は何を話せばいいか分からなかった。
徐々に星が流れていく数が増えていくにつれ、私のテンションや驚きが増えていき、ゼロはやっと安心したように私を自分の膝の上に座らせて抱きしめる。
「ゼロ、これじゃ空見えないわ……貴方の顔が近い」
「わざとだよ。余でいっぱいになるとよい……お前の心にあるのは、余であるといい」
「ねえ、……願い事貴方にあるのだけれど、叶えてくれる?」
「何だ? 言ってみろ」
「私に救われたってどういう、ことなの? ずっと気になるの」
「お前が……特別何かをしたわけではないよ。ただ、どんなときにも幽霊姿のお前は側で話をし続けてくれていただろう? お前は寂しかったゆえの言動かもしれぬが、余はあのとき初めて心から他人との会話を損得なしに、楽しめたのだよ。そこから、損得勘定のない付き合いもあるのだと知っていった」
「……ゼロも寂しかった?」
「さてな。ただお前のいない世界はつまらぬ。もう、お前なしでは生きていたくはないかな」
ゼロは片手で私の目を覆い、項にキスらしき行為をした。
「ひゃっ?!」
「ふふ、擽ったいか。……お前が、最初で最後の奇跡だと言っても、お前は信じないだろうな。余にとって、損得の世界でしかなかった世界に、光りを持ってきたのだと」
「……ゼロ。それこそ、貴方は私に正真正銘、光りをくれたわ。生きると言うこと。目をこうして遮られるだけで、鼓動がとてもよく分かるの」
「星の鼓動と何方が強いかな」
「星流れみたいに、一瞬ではないわ」
ふふ、とゼロと私は笑い合って、そっと夜の中、互いに目を瞑りキスをした。
私は、ゼロに惹かれつつある、認めても良いかもしれない。
あとはきっと信じるだけ。
目的が分からなかった。
ただ去り際に「眠れる獅子を起こしたかった、それでまた僕がつけいる隙が出来るから」と私に笑いかけていたのが気になった。
アルギスが帰って行き、ラクスターと二人で馬車に乗る。
ラクスターは面妖な表情をずっとしていた。
「どうしたの」
「いや……今日一日ずっとなんつーか、むかむかして」
「どうして? 何か悪い物食べた?」
「違う。オレにもわかんねーよ……なんか、あいつと奥様が並ぶ姿見てたら、ちりって、胸が痛くて。意味わかんねーし」
ラクスターは無意識なのだろうけれど、私に手を伸ばし手をそっと繋いだ。
手を繋いでおきながら、ラクスターは自分で吃驚し私の顔を二度見したので、私は笑いかけた。
「大丈夫、アルギスはしばらくの間何もしてこないわ」
「……奥様、その持ってる花束」
「クロユリ?」
「それ花言葉相当不吉だぞ。恋って意味もあるが、呪いって意味もある」
「……でしょうね、その話をしていたわ」
「燃やそうぜ、どうせ魔王だって燃やすんだから」
「本当に苛ついてるのね、ラクスター」
アルギスとのデートから帰ると、シラユキが速攻やってきて、私達の様子を見つめた。
「ご無事でして!? 何よりです! 初の星流れは魔崩れに取られましたが、明日こそが本番! 魔王様のために肌を綺麗にしていきましょう、奥方様!」
「それよりもその花束先に処理したほうがいいぜ、あの魔崩れからの呪いだ」
「あらクロユリ、不吉ですこと! 奥方様、此方の処分は私どもが致しますわ!」
クロユリが手元から離れていく瞬間に、何故か死ぬ前に泣きじゃくっていたアルギスが脳裏に過って、きまずい思いをした。
あの時、確かにアルギスは寂しがっていた。
「一人にしないで」と――。
*
次の日にゼロと二人で星流れを見に行く、夜に星がしゅっと一瞬で流れていく様はアルギスと見たけれど、ゼロと二人で見るほうが心は躍る。
でも互いにぎこちない距離感になってしまい、最初は何を話せばいいか分からなかった。
徐々に星が流れていく数が増えていくにつれ、私のテンションや驚きが増えていき、ゼロはやっと安心したように私を自分の膝の上に座らせて抱きしめる。
「ゼロ、これじゃ空見えないわ……貴方の顔が近い」
「わざとだよ。余でいっぱいになるとよい……お前の心にあるのは、余であるといい」
「ねえ、……願い事貴方にあるのだけれど、叶えてくれる?」
「何だ? 言ってみろ」
「私に救われたってどういう、ことなの? ずっと気になるの」
「お前が……特別何かをしたわけではないよ。ただ、どんなときにも幽霊姿のお前は側で話をし続けてくれていただろう? お前は寂しかったゆえの言動かもしれぬが、余はあのとき初めて心から他人との会話を損得なしに、楽しめたのだよ。そこから、損得勘定のない付き合いもあるのだと知っていった」
「……ゼロも寂しかった?」
「さてな。ただお前のいない世界はつまらぬ。もう、お前なしでは生きていたくはないかな」
ゼロは片手で私の目を覆い、項にキスらしき行為をした。
「ひゃっ?!」
「ふふ、擽ったいか。……お前が、最初で最後の奇跡だと言っても、お前は信じないだろうな。余にとって、損得の世界でしかなかった世界に、光りを持ってきたのだと」
「……ゼロ。それこそ、貴方は私に正真正銘、光りをくれたわ。生きると言うこと。目をこうして遮られるだけで、鼓動がとてもよく分かるの」
「星の鼓動と何方が強いかな」
「星流れみたいに、一瞬ではないわ」
ふふ、とゼロと私は笑い合って、そっと夜の中、互いに目を瞑りキスをした。
私は、ゼロに惹かれつつある、認めても良いかもしれない。
あとはきっと信じるだけ。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!
Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。
転生前も寝たきりだったのに。
次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。
でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。
何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。
病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。
過去を克服し、二人の行く末は?
ハッピーエンド、結婚へ!

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる