勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
26 / 88
龍の忘れ物編

第二十六話 龍娘ゼリアの成長

しおりを挟む
 二週間世話し終わる頃に、衝撃的なことが起きた。
 二週間の間、蝶よ花よと育てられたゼリアは、可愛らしいドラゴンだったのに。
 二週間後の朝に、一緒に寝ていたゼリアはなんと、金髪赤目の幼女になっていた! 七歳くらいの背丈はありそう。

「ぜ、りあ?」
「はい! ぜりあです。恩人様、世話をしていただきありがとうございます!」
「貴方、人型に……なれたの? お、大きくない? 見目が」
「そうですかあ? ぜりあは恩人様やシラユキ様を見て、人型の姿を覚えたのでぜりあなりに化けてみたのです。あ! とと様、とと様はどこにいらっしゃいますか?」
「とと様? 誰のこと? あ、ゼロなら……」
「恩人様、それは魔王様であり、気易くとと様などと呼んではいけません」
「あ、はい……なら一体誰が……」
「とと様は、恩人様とよく一緒にいる方です。恩人様のお仕事のときによく一緒に……」
「えっ、ミディ団長がお父様なの!?」
「はい! だって一番最初に目が合いましたし、卵からノックしてくださったのはとと様ですから!」

 無邪気な笑みを前に私は、あのミディ団長は貴方を料理にして食べようとしていたのよなんて教えることは出来なかった。





 ミディ団長は子供が不慣れなのか、城中がゼリアにでれでれになる中でも、冷静そのものでマイペースだった人。
 今の状態を教えたら卒倒しそうだと思案していると、ゼリアは翼を背中に出して、部屋から出て行き飛んでいった!
 まずい、あの方角は治癒室だ!
 流石に何回もゼリアを抱えながら治癒室で仕事をしていたから、覚えてしまったらしい!
 部屋に辿り着く寸前、治癒室からは悲鳴が聞こえた。

 扉を開ければ、ミディ団長が泣きそうな顔で、ゼリアに押し倒されていた。

「ななななななななななな、なんだね、きみはっ」
「ぜりあです、とと様♡ 嗚呼、とと様ッ、間近で見るととてもりりしくて、ぜりあは誇らしく思います」
「ととさまああああ?!!! な、何がどうなってるんだね、奥様!?」
「とと様、照れないで」

 ゼリアの様子にミディ団長は白目を剥いて気絶した。
 よほどの子供嫌いの様子だ。
 程なくして、食事の時間だからとゼリアを説得し、ミディ団長から退かせることに成功したけれどミディ団長は気絶したままだ。

 ゼリアと手を繋いで一緒に朝食の時に集まる部屋へ行けば、幹部達は騒ぎ、ゼロにいたっては自分がとと様ではないと知ると分かりやすく肩を落とした。


「ミディが父か……やめたほうがいいと思うな。あいつは極度に幼い子供が苦手でな」
「お医者様なのに?」
「ゼリアよ、ミディは生理的に子供を受け付けぬものなのだよ。どんなに可愛らしい姫だろうとな」
「ええー、それじゃあとと様はぜりあのこと嫌いなの?」

 しょんぼりとする姿に笑い転げるのはラクスターだけ。
 ラクスターはげらげらと笑い転げ、ミディ団長の弱点を知るなり広めたがっていたけれど全力で阻止した。
 ラクスターは残念そうな顔を残しつつ、ゼリアに笑いかける。

「おい、龍のガキ」
「なぁに。ゼリアはゼリアよ、淑女の扱い方を知らないのですね、らくすたあは」
「そんなもん知ったことかよ。オレの淑女は奥様だけだ。なあなあ、お前の成長速度どうなってるんだ? いつまでガキでいられるんだ?」
「運命の相手と出会うまでよ。運命の番……ゼリアのお婿さんになる他の魔物と出会えば、また成長が変わるの。成長が変わって運命の番が現れたら、闘うことによりそれが結婚式のかわりとなるのです。それまではこの小さな身体で、ゼリアはとっても不便です」
「へえ! それまできっと寂しがるから、ミディんとこにいるといいぜ!」
「はい! そうします!」
「ラクスター! 好奇心もいい加減にしなさい」
「だって奥様、あの冷静なミディが怯える姿なんてそう滅多にみれねえぜ?」

 にこにことゼリアは笑っているし、ラクスターは愉悦そのものの笑みを浮かべている。
 笑顔って種類があるのね、と感慨深くもなりつつ、私はラクスターの頬を抓んで引っ張った。
「いって! いたいいたい、奥様!」
「からかい癖もいい加減にしないといつか身を滅ぼすわよ」
「一回滅んだ身だけど、そんときはまた奥様が力貸してくれるだろ?」
「分かっててやってるなら、尚悪いわ!」

 ラクスターは私がぷりぷりと怒ると逃げるように、爆笑しながら窓から外へ飛んでいった。
「恩人様、あれやりたい! ゼリアもあのように飛びたいです! 綺麗に飛ぶのですね、らくすたあは!」
「あれは言葉で言い負かせなくてただ逃げただけよ。ゼリア、ご飯一人で食べられる? その姿なら」
「はい、恩人様! お任せください! とと様や魔王様、皆様の手を煩わせません!」

 ゼリアがにこりと歯を見せ笑うと、場に居る皆が和み、好きそうな食べ物をそれぞれ皿によそうので少し面白い光景だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。

晴日青
恋愛
「私の子を産んでほしい」  倒すべき相手として教えられてきた魔王は、どうやら人間の思い描いていたものとは違っていたようで。  『勇者』として相対したのに些細なことから懐かれる羽目になり――。 「どうして断られるのかわからない」 「あなたがなにを考えているか、そっちの方がわからないからよ」  天然魔王シュクルと、プリンセス兼元勇者ティアリーゼの、ズレ気味ファンタジーラブコメディ。 *** 五つの大陸を治める五人の魔王。 獣の特徴を持った亜人となにも持たぬ人間たち。 そんな世界で繰り広げられる小さな物語のひとつめ。 中央に座する白蜥の魔王の物語。 ※「小説家になろう」でも同タイトルを掲載させていただいております。 ※番外編はじめました。本編読了後にお楽しみください。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...