25 / 88
龍の忘れ物編
第二十五話 めろめろになっていく大人達
しおりを挟む
厨房ではゼロとシラユキが何かを打ち合わせしているのか、話し合っていて、私とドラゴンを見るなりゼロが怒りを露わにして、牛の姿になった。
え、え、怒られるようなことはしてないのに?
「誰の子だ!? お前と誰の子だ!?」
「ぜ、ゼロ、違う。そんなわけないじゃない。実は……」
事情を説明するなり早とちりに気づいたゼロは火の粉を散らして、照れ隠しをし。
シラユキは厨房から肉塊を取り出す。牛の肉だそうだ。
ドラゴンはそれをぺろりと食べると、くるるるるーと鳴き、皆に目を細めた。
愛らしさに、皆は心を和ませ、次は何を食べさせようかと食料庫を漁ることとなった。
「果物もいいんじゃないかしら」
「奥様! 男児といえば肉ですよ、肉!」
「いや、魚もきっと食べたいのではなかろうか!?」
珍しくゼロもドラゴンを気に入ったのか、会話に参加して一緒にきゃっきゃと騒ぐ。
「名はなんというんだ?」
「そういえばなかったわね、名付けましょう」
「余とそなたの名を合わせて、ゼリアはどうか」
「可愛らしい名前ですね、いいと思う」
「っふ、この会話も既に夫婦のようで良いな……ゼリアはこの城に春をもたらしてくれたな」
ゼロがゼリアを抱きよせて、抱き上げるとゼリアは虚空に蒼い炎を吐いた。
その炎に益々、ゼロは気を良くする。
「見ろ、余とウルの子供のようではないか! 青くとも、炎を使うのか。良き良き」
「魔王様顔がだらしないですわ」
「ゼリアには教育係を見繕うか! 誰がいいかね、知識高いドラゴンにするか、それとも誰をも戦かせるドラゴンにするか……力こそ正義であるのだから、強くなるのは大前提ではあるな」
「ゼロ、落ち着いて。親馬鹿の発想になってるわ。ひとまず、二週間くらい世話してみて様子を見ようと思うの」
「良いと思うぞ、余の元にも顔を見せにこい! 一緒にくるといい! 食事の席につくときにでも」
「……親馬鹿になる幹部達が目に浮かびますわあ」
シラユキは遠い目をしてからくすくすと噴き出して笑った。
魔物にも愛情深いところがあることに、私は親しみを覚えてついついにやけがとまらなかった。
え、え、怒られるようなことはしてないのに?
「誰の子だ!? お前と誰の子だ!?」
「ぜ、ゼロ、違う。そんなわけないじゃない。実は……」
事情を説明するなり早とちりに気づいたゼロは火の粉を散らして、照れ隠しをし。
シラユキは厨房から肉塊を取り出す。牛の肉だそうだ。
ドラゴンはそれをぺろりと食べると、くるるるるーと鳴き、皆に目を細めた。
愛らしさに、皆は心を和ませ、次は何を食べさせようかと食料庫を漁ることとなった。
「果物もいいんじゃないかしら」
「奥様! 男児といえば肉ですよ、肉!」
「いや、魚もきっと食べたいのではなかろうか!?」
珍しくゼロもドラゴンを気に入ったのか、会話に参加して一緒にきゃっきゃと騒ぐ。
「名はなんというんだ?」
「そういえばなかったわね、名付けましょう」
「余とそなたの名を合わせて、ゼリアはどうか」
「可愛らしい名前ですね、いいと思う」
「っふ、この会話も既に夫婦のようで良いな……ゼリアはこの城に春をもたらしてくれたな」
ゼロがゼリアを抱きよせて、抱き上げるとゼリアは虚空に蒼い炎を吐いた。
その炎に益々、ゼロは気を良くする。
「見ろ、余とウルの子供のようではないか! 青くとも、炎を使うのか。良き良き」
「魔王様顔がだらしないですわ」
「ゼリアには教育係を見繕うか! 誰がいいかね、知識高いドラゴンにするか、それとも誰をも戦かせるドラゴンにするか……力こそ正義であるのだから、強くなるのは大前提ではあるな」
「ゼロ、落ち着いて。親馬鹿の発想になってるわ。ひとまず、二週間くらい世話してみて様子を見ようと思うの」
「良いと思うぞ、余の元にも顔を見せにこい! 一緒にくるといい! 食事の席につくときにでも」
「……親馬鹿になる幹部達が目に浮かびますわあ」
シラユキは遠い目をしてからくすくすと噴き出して笑った。
魔物にも愛情深いところがあることに、私は親しみを覚えてついついにやけがとまらなかった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる