勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

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龍の忘れ物編

第二十五話 めろめろになっていく大人達

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 厨房ではゼロとシラユキが何かを打ち合わせしているのか、話し合っていて、私とドラゴンを見るなりゼロが怒りを露わにして、牛の姿になった。
 え、え、怒られるようなことはしてないのに?

「誰の子だ!? お前と誰の子だ!?」
「ぜ、ゼロ、違う。そんなわけないじゃない。実は……」

 事情を説明するなり早とちりに気づいたゼロは火の粉を散らして、照れ隠しをし。
 シラユキは厨房から肉塊を取り出す。牛の肉だそうだ。
 ドラゴンはそれをぺろりと食べると、くるるるるーと鳴き、皆に目を細めた。
 愛らしさに、皆は心を和ませ、次は何を食べさせようかと食料庫を漁ることとなった。

「果物もいいんじゃないかしら」
「奥様! 男児といえば肉ですよ、肉!」
「いや、魚もきっと食べたいのではなかろうか!?」

 珍しくゼロもドラゴンを気に入ったのか、会話に参加して一緒にきゃっきゃと騒ぐ。

「名はなんというんだ?」
「そういえばなかったわね、名付けましょう」
「余とそなたの名を合わせて、ゼリアはどうか」
「可愛らしい名前ですね、いいと思う」
「っふ、この会話も既に夫婦のようで良いな……ゼリアはこの城に春をもたらしてくれたな」

 ゼロがゼリアを抱きよせて、抱き上げるとゼリアは虚空に蒼い炎を吐いた。
 その炎に益々、ゼロは気を良くする。

「見ろ、余とウルの子供のようではないか! 青くとも、炎を使うのか。良き良き」
「魔王様顔がだらしないですわ」
「ゼリアには教育係を見繕うか! 誰がいいかね、知識高いドラゴンにするか、それとも誰をも戦かせるドラゴンにするか……力こそ正義であるのだから、強くなるのは大前提ではあるな」
「ゼロ、落ち着いて。親馬鹿の発想になってるわ。ひとまず、二週間くらい世話してみて様子を見ようと思うの」
「良いと思うぞ、余の元にも顔を見せにこい! 一緒にくるといい! 食事の席につくときにでも」
「……親馬鹿になる幹部達が目に浮かびますわあ」

 シラユキは遠い目をしてからくすくすと噴き出して笑った。
 魔物にも愛情深いところがあることに、私は親しみを覚えてついついにやけがとまらなかった。

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