21 / 88
勇者参列編
第二十一話 五センチの猛威
しおりを挟む
アルギスが水の魔法も使えると分かった後に聞いたことがある。
炎と水はどちらが強いのか。
魔物達の返事はそれぞれだったが、皆は結論は一緒だったのを思い出した、ふと。
皆最終的に「魔王様が世界で一番お強い」と。
現状、豪炎と流水が交わろうとしている、その何方が勝つかなんて予測はできない。
ヴァルシュアという魔王は後方でバフ係として様子を見ているつもりの様子だった。
その様子に牛の姿でゼロは鼻息荒く、嘲笑った。
手には炎を模した槍を生み出し、自慢の黒い角も炎を纏う。
アルギスは酷薄な笑みで手元に水を滴らせ、それらを凍らせて刃にすると茨で柄を編み、剣を作った。
ヴァルシュアがアルギスの項にキスをすれば、アルギスの持つ氷の剣はより派手な装飾となった。
側にいるサキとリデルは毒魔法を配置したり、バフを強力にかける魔法をアルギスに捧げている。
私は金色の炎に祈り、この場にいる味方全員のバリアを強めると同時に、ゼロの勝利を祈ることでゼロの真っ赤であった炎に金色が混ざり、荘厳となる。
ゼロは少し驚いたが、すぐに強気に笑い、互いに代表者が前と出る。
「帰れ、諦めろ! ウルは余の妃だ!」
槍を大きく振るい、真正面からアルギスの頭部に切っ先を向けたが、アルギスは氷の剣で受け止める。氷はとけはするがそれだけだ。流水の剣として、ゼロの槍を受け止める。
「ウルは僕の運命の人です」
「失ってから分かるとは大層な運命だな!」
「ッ、この無礼者が!!」
槍ごと力でごり押そうとするゼロの攻撃に、かっとなったアルギス。
最初に睨み合いのような剣戟に最初に動いたのは、アルギスだった。
空気中に漂う水分から鋭い針を何万本も生み出し、ゼロをめがけて攻撃した。
ゼロは勿論針に気づき、追い払うように炎の槍で円を描くように、振り回した。
周りが熱風で威圧される。その間にも毒の範囲は広がりつつあり、サキはにやにやと笑っている。ミディ団長は舌打ちをしながら、眼鏡をしまい目を限界まで開き開眼して詠唱し、毒の範囲解毒の魔方陣をより広げた。
「あの治癒師、いい仕事をするな」
「欲しいか、やらぬぞ」
「くれないか、残念だ。なら潰すまでだ」
アルギスは式場に流水を流し込み、場を地面から五センチほど水で溢れさせる。
そのたった五センチに私達は苦しめられることになる。
*
アルギスが式場に流水を流し込むことで何が起きたのか私達は判断が出来なかった。溢れるほどの強い水流で何かされたわけでもない。
だからこそ油断を誘った。
水は通常靴や足を湿らせる。靴や足から水分は吸収される。
吸収される道を許してしまった。
サキの上乗せした毒魔法にアルギスの僅かな池、それにより毒の範囲は広がり、場に居る全員に毒が行き届く。
少なくとも、毒の池を踏みしめてる者は全員苦しめられる。
真っ先に気づいたのは、ミディ団長で、いきなり式場の椅子を踏みつけ、場に居る皆に怒声を響かせる。
「皆、この水に触れるな! 何か少しでも水に触れない位置にいくのだね!」
「奥様はオレの腕に! 妬くなよ、炎牛!」
「今は許す、さっさと避難させろ!」
ラクスターはミディ団長の声にすぐさまに従い、羽根を現すと私を姫抱きしてばさばさと宙へ飛んだ。
ゼロは毒のダメージよりアルギスを優先し、アルギスへ攻撃を放っている。
アルギスは攻撃を受け流しながらも、恍惚とした笑みでヴァルシュアから魔力を貰っている様子だった。
他の魔崩れ二人も恍惚とし、目は完全にイカれていた。
兄様達も魔崩れ達の妨害をしようと、長椅子に足をかけながら妨害魔法や弓による援護射撃をしているのだが、魔崩れは意に介さない。
攻撃は全て欠伸しているヴァルシュアのバリアがはじき返す。
この場をどうにか出来るのは、ゼロ、ただ一人だった。
炎と水はどちらが強いのか。
魔物達の返事はそれぞれだったが、皆は結論は一緒だったのを思い出した、ふと。
皆最終的に「魔王様が世界で一番お強い」と。
現状、豪炎と流水が交わろうとしている、その何方が勝つかなんて予測はできない。
ヴァルシュアという魔王は後方でバフ係として様子を見ているつもりの様子だった。
その様子に牛の姿でゼロは鼻息荒く、嘲笑った。
手には炎を模した槍を生み出し、自慢の黒い角も炎を纏う。
アルギスは酷薄な笑みで手元に水を滴らせ、それらを凍らせて刃にすると茨で柄を編み、剣を作った。
ヴァルシュアがアルギスの項にキスをすれば、アルギスの持つ氷の剣はより派手な装飾となった。
側にいるサキとリデルは毒魔法を配置したり、バフを強力にかける魔法をアルギスに捧げている。
私は金色の炎に祈り、この場にいる味方全員のバリアを強めると同時に、ゼロの勝利を祈ることでゼロの真っ赤であった炎に金色が混ざり、荘厳となる。
ゼロは少し驚いたが、すぐに強気に笑い、互いに代表者が前と出る。
「帰れ、諦めろ! ウルは余の妃だ!」
槍を大きく振るい、真正面からアルギスの頭部に切っ先を向けたが、アルギスは氷の剣で受け止める。氷はとけはするがそれだけだ。流水の剣として、ゼロの槍を受け止める。
「ウルは僕の運命の人です」
「失ってから分かるとは大層な運命だな!」
「ッ、この無礼者が!!」
槍ごと力でごり押そうとするゼロの攻撃に、かっとなったアルギス。
最初に睨み合いのような剣戟に最初に動いたのは、アルギスだった。
空気中に漂う水分から鋭い針を何万本も生み出し、ゼロをめがけて攻撃した。
ゼロは勿論針に気づき、追い払うように炎の槍で円を描くように、振り回した。
周りが熱風で威圧される。その間にも毒の範囲は広がりつつあり、サキはにやにやと笑っている。ミディ団長は舌打ちをしながら、眼鏡をしまい目を限界まで開き開眼して詠唱し、毒の範囲解毒の魔方陣をより広げた。
「あの治癒師、いい仕事をするな」
「欲しいか、やらぬぞ」
「くれないか、残念だ。なら潰すまでだ」
アルギスは式場に流水を流し込み、場を地面から五センチほど水で溢れさせる。
そのたった五センチに私達は苦しめられることになる。
*
アルギスが式場に流水を流し込むことで何が起きたのか私達は判断が出来なかった。溢れるほどの強い水流で何かされたわけでもない。
だからこそ油断を誘った。
水は通常靴や足を湿らせる。靴や足から水分は吸収される。
吸収される道を許してしまった。
サキの上乗せした毒魔法にアルギスの僅かな池、それにより毒の範囲は広がり、場に居る全員に毒が行き届く。
少なくとも、毒の池を踏みしめてる者は全員苦しめられる。
真っ先に気づいたのは、ミディ団長で、いきなり式場の椅子を踏みつけ、場に居る皆に怒声を響かせる。
「皆、この水に触れるな! 何か少しでも水に触れない位置にいくのだね!」
「奥様はオレの腕に! 妬くなよ、炎牛!」
「今は許す、さっさと避難させろ!」
ラクスターはミディ団長の声にすぐさまに従い、羽根を現すと私を姫抱きしてばさばさと宙へ飛んだ。
ゼロは毒のダメージよりアルギスを優先し、アルギスへ攻撃を放っている。
アルギスは攻撃を受け流しながらも、恍惚とした笑みでヴァルシュアから魔力を貰っている様子だった。
他の魔崩れ二人も恍惚とし、目は完全にイカれていた。
兄様達も魔崩れ達の妨害をしようと、長椅子に足をかけながら妨害魔法や弓による援護射撃をしているのだが、魔崩れは意に介さない。
攻撃は全て欠伸しているヴァルシュアのバリアがはじき返す。
この場をどうにか出来るのは、ゼロ、ただ一人だった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる