勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
11 / 88
勇者参列編

第十一話 認められる為に頑張る花嫁は治癒団に。

しおりを挟む

 あれからラクスターが戻ってくるまでに他の魔物の態度をよく観察した。
 よくよく見れば好待遇してくれる魔物と、よくはしてくれるけどぎこちない魔物、嫌悪を隠してる魔物が分かった。
 幹部でも半分に分かれてる印象だったから、ラクスターの勘は馬鹿に出来ないと実感し、向かわせた自分を評価しようと思うほどには私を嫌う魔物はいた。
 認められるには何が一番いいか考えた結果、魔物の治療を手伝うことだった。
 魔物の城には、怪我や討伐で生きながらえて傷の手当てを受けに戻る魔物がいるのだけれど、回復魔法を出来る魔物が少ないみたいで私はちょうど回復魔法が得意だった。
 あの日から枷がとれたかのように、以前より問題なく魔法は使えるようになった。
「もしかしたら此処でなら役に立てるかもしれない……あの、失礼します」
 治療室にノックして入ると忙しそうな白衣を着た巨大な蛇が近づいてくる。
 蛇は人型の姿に化けると、一礼をし、眼鏡越しに金色の眼差しで私を見つめた。
 蛇だった魔物は、水色のマッシュと呼ばれる髪型で、糸目を限界まで開眼し私を見つめる。臆しては駄目だと私は、蛇だった魔物をじっと見つめる。
「あの、なんとお呼びすれば」
「ミディで結構。どうされたね、奥方様。何か不調というわけでもなさそうだね」
「ではミディさん、あの私も治癒するのをお手伝いしたいのです。私も回復魔法が使えます」
「奥方様に?」
 ミディは目を見開き、とんでもないと青ざめた。
「奥方様のする仕事じゃあないんだね。お帰りしなさい」
「でもっ、お願いします!」
「遊びじゃあないんだね、こっちは。帰った帰った!」

 ミディは私を部屋から追い出すと扉越しにシャーと威嚇した。
 私は此処で諦めては駄目だと思い、そのまま部屋の扉越しにずっとノックをし続ける。

 それが三日三晩続き、ゼロがやがて心配しやってきた。

「食事にも来ず、何をしてるかと思えば」
「私ね、ただ此処でのんきに暮らしてるだけじゃ、ゼロのお嫁さんだなんて認められないと思うの。少しでも皆の仲間として受け入れられたい」
「……ウル。命じてやろうか」
「ううん、私が頑張らないといけないの。私だけの力で、まずは受け入れて貰わないと。この部屋が一番役立てそうなのよ」
「そうか……程ほどにするんだぞ、我が乙女よ」
 ゼロが私の手に携帯食を握らせてくれた辺りで、扉が開いた。
 中には苦い顔をしたミディがいて、じいいいいいいいいと私を品定めする。
「参ったんだね、ほんっっとうにこき使っていいんだね? 汚れ物にも触れることになるんだね。女性には見せられないえぐい傷だってあるんだね」
「構いません、頑張ります!」

 ミディは、はーっとため息をついてゼロを見やる。

「魔王様、貴方から直接ご命令しないのですか」
「それはたった今、我が乙女に断られたものでな。余が言ってもきかんのだ」
「……~~宜しい、よっぽどのご覚悟があるんだね。朝は食事が終わったらすぐに此処へくること、昼餉は此処で携帯食にする。休憩は各自の判断で五回まで。魔力の補給で飲むポーションを支給するから一日五本まで飲んでいい。夕方からは自由だ、守れるね?」
「ッはい!!!」
 私はミディが条件を出してのんでくれたことに大喜びして、ミディの両手を握った。
 ミディの半分蛇の名残がある鱗に触れ、驚いたがミディは気にした様子もなく、「負けたよ」と項垂れた。
 ミディはポケットから予備に持っていたらしいポーションを二本私に渡してくれて、中へ入る。
 ゼロも入ろうとしていたけれど、ミディから「魔王様はお仕事をどうぞ」と暗に追い出され、ゼロは笑って出て行った。

 室内に入れば巨大なドラゴンの魔物がちょうど深い傷を負っていて、ミディはドラゴンが顔を寄せてくるとよしよしと撫でた。

「この子のこの傷、何処まで治せるね? 腕前を見せてくれ。一人につき、全力を使っては駄目だね。一日一人につき十分の一までしか魔力を使ってはいけない。そうしないと倒れるね」
「分かりました、やってみます……十分の一……調整しながら、ですね?」
 私は頷いて目を閉じドラゴンの傷に意識を集中させると、辺りに金色の炎が過る。
 ミディはそれに驚くものの止めはしないでくれたので、集中出来た。

「金色の頂よ、我が思い、我が願いに応え給え――稲穂のように揺れろ、揺れろ、揺れろ……!」

 詠唱を唱えると、金色の炎が傷の部分に燃えさかり、ドラゴンが少し唸る。

「我慢して、少し痛むけれど」

 私はドラゴンに願いながら、力を言われたとおり十分の一……いいえ、百分の一くらいの加減で既にドラゴンの身体は怪我など嘘かのように治った。
 鱗なんか生まれたばかりのように艶々だ。
 ミディは目を見張り、しげしげとドラゴンの傷を見やり私が魔法を使い終わると怪我を確認して、具合を改めて見てから私も診る。
 私が一切体調を壊してないことを知ると、ミディは面白おかしそうに笑った。

「成る程、元人間ってだけで断ろうとしていた自分を恥じる。すまない、改めて助手をお願いするね。君は我が治癒団の副団長に任命しようね。僕は団長のミディ・アレム。改めて歓迎するね。団長と呼び給え」

 ミディ団長は私に握手を心から求めてくれて、私は嬉しくて握手に応じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

処理中です...