【R18】どうせなら、君を花嫁にしたかった。

湖霧どどめ

文字の大きさ
上 下
18 / 56

18.猫を被れるようになれば大人の始まりさ。

しおりを挟む
「はあ、はあっ……ジェリアっ……」

 エリオードは身を起こして足を伸ばし座り、ジェリアを自分に乗せると再び口づけてきた。もう、完全に拒む意志は溶かされきっていた。
 だってこんなにも、気持ちいい。

「ん、ふぅ、んっ」

 舌が筋肉痛になる程にまで絡んでいるのに、もはやジェリアはエリオードの舌を自ら迎えに行っていた。それが嬉しくて仕方ないのか、エリオードは尚もジェリアに唾液を注いでくる。くぷ、くぷ、と水音を重ねながらエリオードは隙間に言葉を落とし続けた。

「好きだ、好き、好きだ……」

 譫言のように繰り返される言葉は、ずっと溶岩のようにジェリアの脳へと流れ込んでくる。そして、暗示と化した。

「ジェリア、俺のこと……まだ、好き?」

 切なさすら見て取れる声だった。ジェリアもまた、泣いてしまいそうになる。
 だからこそ、言ってしまった。

「好き……好き、大好き……」

 数年前と、自分の心が同化していくのを感じる。本当に駄目な事だという事を、焼いて消してしまったかのような感覚だった。
 エリオードは泣きそうな顔をして、ジェリアの頬にそっと右手を添えた。そして「腰、浮かせて」と囁くと何……再び、猛りなおしていた肉棒を突き刺す。

「ひぐっ」

 悲鳴のような声を上げるジェリアのもう片方の頬を舐めながら、エリオードはジェリアを執拗に突き上げる。ジェリアの嬌声はもはや嗚咽と化していた。決して、痛くなどないのに。
 ジェリアをかたく抱き締めながら、エリオードはその細い首にかぶりついた。

「嬉しい、嬉しいっ……また、戻れた……っ」
「あぅ、うっ、う」
「俺のジェリア、ジェリアっ……好きだっ……」

 ぐりゅ、と子宮の入り口を捻られるかのような感触。またジェリアは絶頂した。声を上げる間も無かったがエリオードにはしっかり伝わったらしい。

「っあ、きつっ……」

 嬉しそうに呟くと、彼の腰は動きを早めた。絶頂したての内部が削られるかのように擦りあげられ、もはやジェリアの意識は朦朧としていた。

「はは、またイッたろ? 可愛いよ、ジェリア」
「う、うう、あぅ」

 抱き締める力が強まる。ジェリアの柔らかな胸元に顔を埋めながら、エリオードは尚もジェリアの子宮口を苛み続けた。その度に、ジェリアの脳髄がちりちりと炙られる。
 こんなにも愛した男に、散々犯されて。それで悦べない程、ジェリアの体は鈍くなかった。

「身も、心もっ……俺のもの、だもんなっ?」
「あう、う、ううっ」
「はは、嬉しいよ。俺もだ」

 返事にすらなっていないのに。エリオードは勝手に解釈するのが、本当に上手だった。
 笑ってはいるが、もう余裕を失っていそうだった。腰の動きが、早い。そして。

「っ、ごめ、ジェリア」

 ジェリアの体を自分から引き剥がすと、エリオードは瞬時に射精した。再び地面に白濁が降りかかる。二度目なのに、その量は決して少なくなかった。
 ジェリアはすでに、目の焦点が合っていなかった。そんなジェリアを再び抱き締めると、口づける。唇を何度も食むように動かしながら、エリオードは視線を下へとずらし込む。

「……ちゃんと手筈整えたら、絶対にここに出してあげるから」

 指で皮膚越しに子宮をなぞられ、それだけでもびくりと体が脈打つ。そんなジェリアを心底愛おしげに眺めながら、エリオードはジェリアの服を整えた。そして、優しく囁く。

「大丈夫?」
「もう、無理……」

 エリオードは嬉しそうに「だよな」と囁いてくる。実際、あれだけ犯されて無事でいられるわけはなかった。

「ごめん、本当は馬車を牧場に停めてるって嘘。二人きりになりたかっただけ」

 もう、彼が嘘をついた事に対して嫌悪感を抱く程の余裕すらなかった。気温の暑さのせいで、火照りが冷めるのすら遅い。
 エリオードはジェリアに手を伸ばした。

「本当は教会。さ、行こう」

 もうその手を取る事を拒めなかった。ジェリアはエリオードに引っ張られる形で立ち上がるが、未だ足が震える。そんなジェリアを大切そうに支えながら、エリオードは歩き出した。
 やはり、この林には人気が無い。あの行為も、きっと誰にもバレていないだろう。

「ジェリア」
「……なに?」

 少しずつ、意識がはっきりしだした。呂律も回り始めている。
 エリオードは嬉しそうにジェリアを見た。

「もう、離さないから」

 何も、言えなかった。
 頭が少しずつ覚醒しだして、よりクリアになっていっているのを感じる。そして、とんでもないことをしでかしたのだとようやく自覚する。顔色にまでそれが表れだしたジェリアに、エリオードが「俺が悪い」と呟いた。

「俺が結婚さえしてなければ、本当は全部うまくいってたんだ」
「もう、いいのよ」
「ジェリア」

 ジェリアはエリオードから離れようと彼の胸に手を当てるが、彼はその手首を掴んだ。目を反らすジェリアに、囁く。

「近い内、絶対に迎えに行く。だから身勝手だけど……信じて、待っててほしい」
「エリオード」
「勿論諦めようとした時もあったんだ。でも、やっぱり駄目だった」
「私こそ、諦めようと思ったのよ」

 呟いてしまっていた。そんなジェリアに、エリオードはそっと微笑みかける。

「そんなところまで同じだったとか、嬉しい」

 ……的外れではあるが、それすらもどうやら嬉しいらしい。
 ジェリアも結局、諦める事が出来ていなかった。もしくは彼と再会する事なく、他の男と出会っていれば変わったかもしれない。ふと、気になった。

「もし私がもう、他の男と結婚していたらどうするつもりだったの」

 その言葉に、エリオードは露骨に顔を歪めた。

「想像もしたくない。俺が言える事でもないけど」
「本当ね」

 皮肉めいた返答に、エリオードはため息を吐いた。
 のろのろと歩きながら、ようやく教会の裏側に到着した。確かにそこには、一台のこぢんまりした馬車が置かれていた。エリオードはそっとジェリアを解放した。

「もう歩けるか」
「平気」

 エリオードは少し寂しそうな顔をしたものの、何も言わなかった。
 奥から気配がした。はっとしてそちらへ目線を向けると、教会の陰からクロイアがやってくるところだった。彼は目をまん丸に広げると、ぱたぱたとこちらへ駆け寄ってきた。

「父さん、ジェリアさん! えっ、もう出られたのかと思ってました」
「すまん、俺が勘違いしてたんだ。でももう出るよ」

 クロイアの頭をぽん、と撫でる。それを嬉しそうに見上げながら、クロイアは「お気をつけて」と微笑んだ。

「次はいついらっしゃるんですか」
「来月には来れると思う」

 来月。となると、きっとまた……ジェリアとの逢瀬も重ねてくるのか。そんな予測を見透かしているのか、エリオードは嬉しそうにジェリアを見る。
 馬車の御者台に乗り込むと、エリオードは支度を始めた。エヴァイアンでは、自身で馬車を繰る者も少なくない。実際彼の馬車は一人用だった。

「じゃあな。クロイア、頑張れよ」
「はいっ」
「ジェリア」

 エリオードを見る。彼は一瞬だけ、あの熱っぽくとろけた瞳を見せてきた。

「またな」

 そうとだけ言って、彼は馬車を走らせた。
 馬車の影が消えてなくなった頃、クロイアはジェリアを見た。その視線に、何故かどきりとしてしまう。

「お昼はもう食べられましたか?」
「あ、えっと……食べてないけれど、大丈夫よ。クロイアこそお疲れさま」
「ありがとうございます。実はひっとう様が、おわびにってお小遣いをくださったんです。ジェリアさんがまだ食べてないなら、行きませんか。おせわになってるお礼、させてください」

 小さな巾着を見せびらかしながらクロイアは微笑んだ。ジェリアは一瞬考え込んだものの、実際先程あんなに体力を使って、空腹でないわけがなかった。せっかくの申し出を断るのも何なので、「じゃあそうしようかしら」と言ってみる。勿論彼に金は出させないつもりだが。
 クロイアは嬉しそうに顔を輝かせた。

「いきましょういきましょう。おみせは、ジェリアさんの好きなところにいきたいです」
「そう? だったら、少し奥地になるけれどいいお店があるから行きましょうか」
「はいっ」

 ジェリアは道を思い返しながら、歩き出した。その後ろを、クロイアはちょこちょことついてくる。
 ジェリアの視線は、まっすぐ前を向いていた。それに隠れるようにしながら、クロイアはエリオードの手の感触の残っている頭部を改めて自身の手でなぞる。

「……汚いなあ」

 ぼそりと吐き出された言葉に、前を進むジェリアは気付かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

処理中です...