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59.俺その日激アツ姫の誕生日だから欠席です。
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「あーあ、殺っちまった」
音だけで察した湊のつぶやきに「だって家族ネタの詐欺は地雷なんだもー」と月夜はおどけながらレコーダーを停止させた。
「とまあ、こんな感じだ。つまりこの中華マフィア……『角』は自分とこがうちの先代親父に提供した資金の余り額を回収しにきたってところらしい」
「ちなみに葉月を刺した理由は女の方から聞いたけど、『S』を一人殺せば組織ぐるみで動くからうちの様相をより確認できるようになるだろうってことだったらしいよ。自分とこの情報が古いのは自覚してるみたい」
「そんな理由でかぁ……」
刺された当人である葉月はまたげんなりした様子で呟いた。そんな彼の背を「ドンマイ」と言いながら凛が撫でさする。しかし彼が一番犯人に敵意を向けていた、というのはすでに光希から聞いていた。
「で、俺はこの情報をもとに上と色々推測を立てた。まず結果から言うとこいつらの読みは大当たりだ、先代は支援額を全部銀行の金庫にぶっ込んでる」
「え、そもそも支援なんて必要なかったってこと?ワルいね」
「まあ先代マジで性格悪かったしな、俺たちですらちょっとしか知らないけど」
日向は資料を差し替えた。再び全員が注視する。
「で、親父と相談した結果その金を丸ごと返すことにした」
「え!?もったいな!」
「これが一番丸く収まるし、今凛が言ってたとおりあくまで貯蓄のためだけの不要な金なんだよ。それなら返した方が早い」
「でもその金で力強めたら厄介なことにならない?」
光希の言葉に「それは問題ない」と日向は口にした。
「この10日の間で親父が『角』とコンタクトを取った。金を返すかわりに完全な不可侵条約を結ぶってな。相手もそれで了承した」
「で、来月の2日なんだけど。『角』の人間に金の引き渡しをするから『四』から来れる奴全員来いってさ」
月夜の言葉に、まず湊が「はぁ?」と口にした。
「どうせ銀行って中央銀行だろ、それなら本部や『九』が近いんじゃねえの」
「親父そのまま行かせるのは危険だからだろ、それに『角』と実際接触したのはうちだけだ」
日向の言葉に湊は納得したのか、それからは何も言わなかった。
そしてメンバーを調整したところ……日向、光希、葉月、燈に決まった。
「俺また留守番かよ!」
「ピンポイントで講習なんでしょ、それはちゃんと出ないと怪しまれるって」
光希の言葉に湊は悔しそうに歯噛みした。そして燈を睨みつけてくる。
「おいブス!光希に何かあったらシバき回すからな、絶対守れよな!」
「大丈夫です、私が守ります」
「はぁ!?お前如きが何できんだっつーの!」
「燈、もう何言ってもこのやきもちマンキレるから無視していいよ」
呆れたように言う月夜に対して「うるせえ!」と怒鳴りつけて湊はそっぽを向いた。内心呆れながらも、燈は息を呑む。
光希との任務は、実質初めてだ。気を引き締めなければ。
改めて光希を見ると、彼は目元だけ微笑んで返してきた。そんな二人を見て、葉月は面白くなさそうに笑みを引っ込めたのだった。
音だけで察した湊のつぶやきに「だって家族ネタの詐欺は地雷なんだもー」と月夜はおどけながらレコーダーを停止させた。
「とまあ、こんな感じだ。つまりこの中華マフィア……『角』は自分とこがうちの先代親父に提供した資金の余り額を回収しにきたってところらしい」
「ちなみに葉月を刺した理由は女の方から聞いたけど、『S』を一人殺せば組織ぐるみで動くからうちの様相をより確認できるようになるだろうってことだったらしいよ。自分とこの情報が古いのは自覚してるみたい」
「そんな理由でかぁ……」
刺された当人である葉月はまたげんなりした様子で呟いた。そんな彼の背を「ドンマイ」と言いながら凛が撫でさする。しかし彼が一番犯人に敵意を向けていた、というのはすでに光希から聞いていた。
「で、俺はこの情報をもとに上と色々推測を立てた。まず結果から言うとこいつらの読みは大当たりだ、先代は支援額を全部銀行の金庫にぶっ込んでる」
「え、そもそも支援なんて必要なかったってこと?ワルいね」
「まあ先代マジで性格悪かったしな、俺たちですらちょっとしか知らないけど」
日向は資料を差し替えた。再び全員が注視する。
「で、親父と相談した結果その金を丸ごと返すことにした」
「え!?もったいな!」
「これが一番丸く収まるし、今凛が言ってたとおりあくまで貯蓄のためだけの不要な金なんだよ。それなら返した方が早い」
「でもその金で力強めたら厄介なことにならない?」
光希の言葉に「それは問題ない」と日向は口にした。
「この10日の間で親父が『角』とコンタクトを取った。金を返すかわりに完全な不可侵条約を結ぶってな。相手もそれで了承した」
「で、来月の2日なんだけど。『角』の人間に金の引き渡しをするから『四』から来れる奴全員来いってさ」
月夜の言葉に、まず湊が「はぁ?」と口にした。
「どうせ銀行って中央銀行だろ、それなら本部や『九』が近いんじゃねえの」
「親父そのまま行かせるのは危険だからだろ、それに『角』と実際接触したのはうちだけだ」
日向の言葉に湊は納得したのか、それからは何も言わなかった。
そしてメンバーを調整したところ……日向、光希、葉月、燈に決まった。
「俺また留守番かよ!」
「ピンポイントで講習なんでしょ、それはちゃんと出ないと怪しまれるって」
光希の言葉に湊は悔しそうに歯噛みした。そして燈を睨みつけてくる。
「おいブス!光希に何かあったらシバき回すからな、絶対守れよな!」
「大丈夫です、私が守ります」
「はぁ!?お前如きが何できんだっつーの!」
「燈、もう何言ってもこのやきもちマンキレるから無視していいよ」
呆れたように言う月夜に対して「うるせえ!」と怒鳴りつけて湊はそっぽを向いた。内心呆れながらも、燈は息を呑む。
光希との任務は、実質初めてだ。気を引き締めなければ。
改めて光希を見ると、彼は目元だけ微笑んで返してきた。そんな二人を見て、葉月は面白くなさそうに笑みを引っ込めたのだった。
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