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53.あーもう、何から何まで急展開過ぎるんだけど!
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帰宅してから光希の作った夕飯を食べ終え、光希はすぐさま「残りの仕事がある」と自室にこもった。そのことに、燈はほんの少しだけ安心した。やはり、心が痛む。
それから2時間ほどしてからだろうか。光希が、部屋から飛び出してきた。しかも、外出の用意をして。
「燈ごめん、ちょっとお留守番頼んでいい?」
「はい、大丈夫です」
何かあったのか、と聞くより先に光希は家を飛び出していった。同時に、燈のスマートフォンが鳴る。出どころは、『四』のグループメッセージだった。
なんとなく只事ではない予感がして、急いで手に取る。送信者は、日向だった。
『葉月が重傷、月夜が回収。予断を許さない状況』
「……え?」
ぞっ、と一気に背筋が冷える。
最後に会ってから、まだ数時間と経っていないのに。あの、悲しい目を見てから。
「……っ!」
反射のように、燈は電話を掛けていた。応答したのは、湊だった。
『んだよブス!』
「葉月さん何があったんですか!?」
湊の苛立ち混じりの怒鳴り声に匹敵するほどの大きな声が、勝手に出た。さすがに驚いたのか、湊は一瞬口をつぐむ。しかし一度だけ舌打ちして、声を発しだした。
『あいつ、あの会議の後単独の任務入ってたんだよ。そしたらどっかから情報が漏れてて返り討ちにあったらしい』
「そんな……」
会議の後自分と光希と月夜は先にビルを出ていた。あの後に任務が言い渡されていたということか。
『光希と凛が今情報を漏らしたらしい裏切り者をとっ捕まえに行ってるはずだ』
「裏切り者?」
『月夜が猛ダッシュで突き止めたんだよ。今あいつ、葉月についてるけど』
頭が、ぐるぐる回っている。その状況で絞り出した声は。
「……どこの病院にいるんですか、葉月さん」
このまま何もせずには、いられない。何もできないのは分かっていても。
湊は舌打ちだけして、電話を切った。彼の沸点は未だに分からない。もしかすると……これを、光希への裏切りと取ったのか。
「葉月さん……」
あんなことをされたのに。光希のことを考えると、彼にもうこれ以上近付いてはならないのに。
それでも……胸が、痛い。
彼の優しさも、笑顔も、嘘では決してなかったからか。彼が、もし死んでしまったらと考えると勝手に涙がこぼれてくる。
しかし再び、スマートフォンが振動した。慌てて涙を拭い拾い上げると、それは湊からの電話の着信だった。
『下りろ』
「え」
『あ!?お前さては何も用意してないとか言わねえだろうな!?』
察した。慌てて「すぐ行きます」と返すと、そのまま家を出る。
慌ててエレベーターを待ちもせず階段を駆け下りると、湊の車が停まっていた。慌てて助手席を開けると、不機嫌そうな湊が運転席に居た。
「お前はたまたま……コンビニかどっか行こうとしてて、俺が葉月の見舞いに行こうとしたらたまたまここを通りかかった。それで行くぞ」
「はい。ありがとうございます」
「あーくそっ、全部葉月のせいだ……あいつ目覚したらマジで覚えてろよ!」
そう毒づきながらも、湊は車を発進させた。
それから2時間ほどしてからだろうか。光希が、部屋から飛び出してきた。しかも、外出の用意をして。
「燈ごめん、ちょっとお留守番頼んでいい?」
「はい、大丈夫です」
何かあったのか、と聞くより先に光希は家を飛び出していった。同時に、燈のスマートフォンが鳴る。出どころは、『四』のグループメッセージだった。
なんとなく只事ではない予感がして、急いで手に取る。送信者は、日向だった。
『葉月が重傷、月夜が回収。予断を許さない状況』
「……え?」
ぞっ、と一気に背筋が冷える。
最後に会ってから、まだ数時間と経っていないのに。あの、悲しい目を見てから。
「……っ!」
反射のように、燈は電話を掛けていた。応答したのは、湊だった。
『んだよブス!』
「葉月さん何があったんですか!?」
湊の苛立ち混じりの怒鳴り声に匹敵するほどの大きな声が、勝手に出た。さすがに驚いたのか、湊は一瞬口をつぐむ。しかし一度だけ舌打ちして、声を発しだした。
『あいつ、あの会議の後単独の任務入ってたんだよ。そしたらどっかから情報が漏れてて返り討ちにあったらしい』
「そんな……」
会議の後自分と光希と月夜は先にビルを出ていた。あの後に任務が言い渡されていたということか。
『光希と凛が今情報を漏らしたらしい裏切り者をとっ捕まえに行ってるはずだ』
「裏切り者?」
『月夜が猛ダッシュで突き止めたんだよ。今あいつ、葉月についてるけど』
頭が、ぐるぐる回っている。その状況で絞り出した声は。
「……どこの病院にいるんですか、葉月さん」
このまま何もせずには、いられない。何もできないのは分かっていても。
湊は舌打ちだけして、電話を切った。彼の沸点は未だに分からない。もしかすると……これを、光希への裏切りと取ったのか。
「葉月さん……」
あんなことをされたのに。光希のことを考えると、彼にもうこれ以上近付いてはならないのに。
それでも……胸が、痛い。
彼の優しさも、笑顔も、嘘では決してなかったからか。彼が、もし死んでしまったらと考えると勝手に涙がこぼれてくる。
しかし再び、スマートフォンが振動した。慌てて涙を拭い拾い上げると、それは湊からの電話の着信だった。
『下りろ』
「え」
『あ!?お前さては何も用意してないとか言わねえだろうな!?』
察した。慌てて「すぐ行きます」と返すと、そのまま家を出る。
慌ててエレベーターを待ちもせず階段を駆け下りると、湊の車が停まっていた。慌てて助手席を開けると、不機嫌そうな湊が運転席に居た。
「お前はたまたま……コンビニかどっか行こうとしてて、俺が葉月の見舞いに行こうとしたらたまたまここを通りかかった。それで行くぞ」
「はい。ありがとうございます」
「あーくそっ、全部葉月のせいだ……あいつ目覚したらマジで覚えてろよ!」
そう毒づきながらも、湊は車を発進させた。
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