51 / 69
50.性格が運転にモロ表れるタイプ。
しおりを挟む
「……ったく、本当によかったよな。迎えに来たのが光希じゃなくて俺で」
「すみません……」
電話をしてきた湊は、電話を切って30分後には店に到着していた。
店を出た燈を見つけた湊は一度だけ舌打ちをしてから車に乗り込むと、すぐに光希に「このブスちょっと借りるぞ」と電話していた。
そして今、何故か湊の運転であてもなく走っている。
「……葉月が、まさかな。そんな拗らせてたとは……いやあいつそもそも腹黒いしな」
湊の圧に勝てるわけもなく、燈はすべて話していた。そもそも、彼はきっと光希にこのことは言わないとも踏んでいた。光希が荒れることを、きっと彼自身が誰よりも恐れている。
「光希さんは……」
「凛の店の締め作業が思ったより難航してるんだと。多分今日帰らないって」
一安心したのと同時に、内心のざわめきがまた始まる。
光希に、葉月のことを言うべきか。しかしそんなことをすれば、一体彼はどう思うのか。
軽蔑するかもしれない。それ以上に不安なのは……光希と葉月の関係が、悪くなることだ。あの二人の絆は、自分なんかが介入してはならないほど深いもののはずなのに。
「俺としては、光希に傷ついてほしくない。それがお前のせいなら尚更だ」
吐き捨てるような言葉に、胃の奥がぎゅっと締め付けられる。しかし湊は、こちらを見ることなく続けた。
「……でもどうせ、光希をなだめられるのもお前なんだろうよ」
「え」
「ムカつくけどな!めっちゃムカつくけどな!あームカつく!」
赤信号に差し掛かり、急ブレーキを踏まれる。そのせいで一気に、吐き気がのぼってくる。
「だから!お前がうまくやれよ!葉月のことなんか後でどうにか出来んだから」
「吐きそうです……」
「あぁ!?吐いたら殺す!」
どうにか出来るものなのだろうか。それでも、やるしかないのだろう。
……考えることは、まだ出来る。とにかく今は、光希にバレないように……傷つけないようにするしかないのだろう。
一度だけ、深呼吸する。腹をくくるしかない。
「頑張ります、私」
「おう、光希をちょっとでも不快にしてみろ。その時は俺がお前を殺す」
湊の言葉と同時に、湊のスマートフォンが鳴った。湊が「出ろ」と言うので、応対する。相手は日向だった。
「お疲れ様です」
『燈?今湊と一緒なのか』
「はい、あの……光希さんの代わりに、迎えにきてくれて」
その事実自体はそこまで重要ではなかったらしく、日向は『そうか』とだけ返した。
『なら、話が早い。湊にも聞こえるようにしてくれるか』
「大丈夫だ、聞こえてる。どうした」
『緊急事態だ、明日の正午に「四」で会議を行う。二人とも遅れないようにビルに来てくれ』
緊急事態、という言葉のせいか日向の声そのものがどこか緊迫しているように聞こえた。よくよく耳を澄ますと、奥で月夜が電話をしている声も聞こえる。
いくつか簡単なやり取りだけして、通話を切った。
「……何なんでしょう」
「知るか。おい、大丈夫かよお前」
湊の危惧は、分かっている。頷くしかない。
そんな燈を見て、「ヘマすんじゃねえぞ」と湊は呟いた。それはあの任務の時と同じような言い方だった。
いつかは、どうにかしないといけないのだろう。葉月があそこまでしてきた以上、今までのようにはいかない。また迫り上がってきた胸のざわめきを押さえ込むように、ため息を吐いた。
「すみません……」
電話をしてきた湊は、電話を切って30分後には店に到着していた。
店を出た燈を見つけた湊は一度だけ舌打ちをしてから車に乗り込むと、すぐに光希に「このブスちょっと借りるぞ」と電話していた。
そして今、何故か湊の運転であてもなく走っている。
「……葉月が、まさかな。そんな拗らせてたとは……いやあいつそもそも腹黒いしな」
湊の圧に勝てるわけもなく、燈はすべて話していた。そもそも、彼はきっと光希にこのことは言わないとも踏んでいた。光希が荒れることを、きっと彼自身が誰よりも恐れている。
「光希さんは……」
「凛の店の締め作業が思ったより難航してるんだと。多分今日帰らないって」
一安心したのと同時に、内心のざわめきがまた始まる。
光希に、葉月のことを言うべきか。しかしそんなことをすれば、一体彼はどう思うのか。
軽蔑するかもしれない。それ以上に不安なのは……光希と葉月の関係が、悪くなることだ。あの二人の絆は、自分なんかが介入してはならないほど深いもののはずなのに。
「俺としては、光希に傷ついてほしくない。それがお前のせいなら尚更だ」
吐き捨てるような言葉に、胃の奥がぎゅっと締め付けられる。しかし湊は、こちらを見ることなく続けた。
「……でもどうせ、光希をなだめられるのもお前なんだろうよ」
「え」
「ムカつくけどな!めっちゃムカつくけどな!あームカつく!」
赤信号に差し掛かり、急ブレーキを踏まれる。そのせいで一気に、吐き気がのぼってくる。
「だから!お前がうまくやれよ!葉月のことなんか後でどうにか出来んだから」
「吐きそうです……」
「あぁ!?吐いたら殺す!」
どうにか出来るものなのだろうか。それでも、やるしかないのだろう。
……考えることは、まだ出来る。とにかく今は、光希にバレないように……傷つけないようにするしかないのだろう。
一度だけ、深呼吸する。腹をくくるしかない。
「頑張ります、私」
「おう、光希をちょっとでも不快にしてみろ。その時は俺がお前を殺す」
湊の言葉と同時に、湊のスマートフォンが鳴った。湊が「出ろ」と言うので、応対する。相手は日向だった。
「お疲れ様です」
『燈?今湊と一緒なのか』
「はい、あの……光希さんの代わりに、迎えにきてくれて」
その事実自体はそこまで重要ではなかったらしく、日向は『そうか』とだけ返した。
『なら、話が早い。湊にも聞こえるようにしてくれるか』
「大丈夫だ、聞こえてる。どうした」
『緊急事態だ、明日の正午に「四」で会議を行う。二人とも遅れないようにビルに来てくれ』
緊急事態、という言葉のせいか日向の声そのものがどこか緊迫しているように聞こえた。よくよく耳を澄ますと、奥で月夜が電話をしている声も聞こえる。
いくつか簡単なやり取りだけして、通話を切った。
「……何なんでしょう」
「知るか。おい、大丈夫かよお前」
湊の危惧は、分かっている。頷くしかない。
そんな燈を見て、「ヘマすんじゃねえぞ」と湊は呟いた。それはあの任務の時と同じような言い方だった。
いつかは、どうにかしないといけないのだろう。葉月があそこまでしてきた以上、今までのようにはいかない。また迫り上がってきた胸のざわめきを押さえ込むように、ため息を吐いた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる