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38.すっごい、肩5キロ分くらい軽くなった。

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 翌日、晴天。痛いほどの日差しだった。

「どうでしょうか凛様……」
「うむ、苦しゅうない。次は脚」
「何でこんなことに……」

 合流した凛や葉月と共に、総出で浜辺に出ていた。
 何故か月夜はシートを敷いて寝そべる凛のマッサージをさせられていた。何でも、朝一番で「頑張ってラスソン取った凛に奉仕して、一日」と光希に冷たく命令されたとのことだった。ちなみに昨夜の行為についてはしっかり日向にバレていて、起きて早々正座で説教を受けていたらしい。

「燈ちゃん、水着可愛い」

 そんな凛と月夜の隣に座っていると、葉月が嬉しそうに近づいてきた。彼は確か、日向に頼まれて全員分の水分を購入しにいっていたはずだ。

「ありがとうございます、光希さんが選んでくれて」
「ふーん、そうなんだ。あ、光希いたよ」

 光希と日向は、二人で海の中に入っていた。そして、サーフィンに興じている。
 波が荒いから、という理由で燈は教えてもらうことを断念させられていた。しかし、浜辺から光希を眺めることになってそれはそれでよかったかもしれない。
 昨日のキスが、どうしても忘れられないのだ。

「はい、炭酸大丈夫だったよね」
「ありがとうございます」
「葉月くん、俺カルピスって言ったっけ」
「うん、買ってきたよ。はい、月夜もお疲れ様」
「葉月だけだよ優しいの……」

 飲み物を配り終えると、葉月は燈の隣に座った。そして、ささやく。

「光希と何かあったでしょ」

 光希を見つめているタイミングだったのもあってか、さすがにドキッとした。しかしそれが、肯定だと伝えるに等しかったらしい。
 葉月は「ケンカ?」と聞いてきたが、首を振るしかできなかった。正直に言うのは、さすがに気恥ずかしい。

「あの……葉月さん」
「うん?」
「葉月さんこそ、光希さんと何かあったんじゃないですか」

 それを聞き、葉月は微笑んだ。そして「なんで?」と問うてきたが、その声は……何故か少しだけ、重く感じた。

「勘違いかもしれないんですけど、なんだかよそよそしそうに感じて」

 そうとしか、言えなかった。しかし本意は奥にある。そんな燈に対して、葉月は笑みを深くした。

「ねえ、これは答えにくかったらいいんだけどさ。燈ちゃん……朝光希と俺のことで何か話してたでしょ」
「え?」
「聞こえちゃったんだ、朝ご飯食べたあと。部屋に戻る前、二人でこそこそ話してたでしょ」

 心臓が、どくり、どくり、と脈打つ。
 遡ること、2時間前。まさしく葉月の言う時間に、光希に呼び出された。

『葉月とは二人きりにならないでね。燈はあいつにとっては店においての購入品、あいつは店においての客だ』
『それは分かってますけど、なんで改めて……』
『店以外で、店でやることは一切しないこと。性行為も、お金をもらうことも。いいね』

 なぜ、そんなことを改めて念押しされたかは分からない。しかしどう考えても、葉月との間に何かあったとしか思えなかった。
 葉月は何かを考えるそぶりを見せながらも、そっと手を燈の頭に伸ばしてきた。そして、優しく撫でる。

「大丈夫だよ、燈ちゃんが光希に大事にされてるってことでしょ。それ自体は俺も嬉しいんだよ」
「俺もともちゃん大事にしてるよ」
「俺も俺も」

 さりげなく混ざってくる月夜や凛にも「ありがとうございます」と返しながらも、燈はぼんやりと波に乗る光希を眺めるしかしなかった。
 そんな燈を、葉月は微笑みながらも……光の宿っていない目で、見つめていた。
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